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コムジェスト・アセットマネジメントの四半期レポートを読んでみた 月次レポート研究所のポッドキャスト 2023年10月 テキスト版

こちらのポッドキャストのテキスト版です。


renny:月次レポート研究所のポッドキャスト2023年10月号の2本目です。2本目は四半期ごとにレポートを発信されてる投資会社さんのお話をしたいと思います。過去に取り上げた中では、ベイリーギフォードのファンドの四半期レポートをご紹介しました。

吉田:あれはおもしろかったですね。

renny:細かいデータのところが、これどうやって計算してんだろう?という話はありましたが、少なくとも定性的なところに関しては、非常に読み応えがあるなと話しましたよね。今回ご紹介するのは、フランスの運用会社、コムジェストさんの四半期レポートを取り上げてみたいと思います。コムジェストさんのWebサイトに行くと、四半期レポートの過去のバックナンバーがあるページがありまして、今最新で出てるものが2023年4月から6月期の運用状況のアップデートという資料が閲覧することができます。

renny:まずはコムジェストの投資哲学・投資方針というようなところから始まって、日本で関わっているファンドには、ヨーロッパ、新興国、日本、世界株式って四つの運用戦略のファンドがあります。ヨーロッパのファンドだけはそれに特化した公募の投信は現状ありません。新興国のものはニッセイアセットマネジメントさん、日本株式と世界株式に関しては、SBIアセットマネジメントさんのファンドとして提供されています。先に言っちゃいますが、今お話したニッセイアセットマネジメントさんとかSBIアセットマネジメントさんのファンドは、月次レポートも手出されていますが、このポッドキャストで取り上げるレベルにはないです。どうにかしてもらいたいなと思うんですよね。先ほど今月の1本目のポッドキャストでお話した、飲食店というかレストランの話に置き換えると、ちょっとここのお店には入れないな、入るのをためらうな、っていうレベルのレポートなんです。これからお話するコムジェストさんの四半期のレポートは内容が濃くて、一度お店に入ってみたいなと思わせるような内容になっています。このレポートで示されたコムジェストさんの投資先の基準の中には、持続性、サステナビリティについて詳しく書かれていますが、まずはビジネスモデル、財務基準、内部成長、参入障壁、持続性、経営と6つの基準が挙げられていて、それぞれの要素が書かれてますが、吉田さん、何かお感じになることありますか。

吉田:うーん。当然のものが入ってるかなぐらいの感想ですかね。

renny:そうですね、ビジネスモデルところには、透明性や価格決定力など、ある意味当然のことが書かれていて、持続性・サステナビリティのところでは、優秀な人材・企業文化、環境への配慮、社会的効用、政治規制からの影響の受けにくさ、ということが持続性として挙げられています。また持続性についての細かく説明がされていて、フリーキャッシュフローを現在価値に戻せば株主価値が算定できるという話が誤解だと述べられています。

「創造される企業価値は、企業活動が生み出す利益から投資額を差し引いた額に等しい。というシンプルなものである。」という誤解です。このような誤解のもとに企業の価値を測ってしまうと、株主価値は本来、長期的な価値の創出に根ざしたものであるはずなのですが、実際には短期的な利益の追求に終始してしまうケースもあり、この場合、将来価値を生み出すための企業の投資が削減され、長期的に見れば株主価値の毀損という結果につながりかねません。

2023年4-6月期_運用状況アップデートレポート

renny:次のページでは「人的・自然・社会資本など、金銭以外の必要不可欠で重要な資本」について書かれていて、お金だけではなく、環境や社会との関わりがあって、企業価値っていうのは作られることを認識しなきゃいけないな、と思いました。中でも自然資本はおそらく環境のことですが、リターンや価値の増大も求められないという意味で特殊な例ということで、環境の重要性が強調されてるのかなと思います。続いてどういうふうに投資先のサステナビリティを見ているか具体例があげられていて、オランダの半導体製造装置メーカーのASML、インドの最大の住宅ローン金融会社HOUSING DEVELOPMENT FINANCEが挙げられています。これらの会社には優秀な人材や事業文化があるところを評価して投資していると書かれています。結構具体的に説明されていますが、レストランのメニューの紹介や試食会に通じるような部分がこういうところなのかなと思いますがいかがですか。

吉田:そうですね。あとこの書き方がいいなって思うのは、最近、SDGsにTCFDやTNFDなどなど、なんか利権争いでもしてるかのように、いろんな基準がゴチャゴチャと出てきて、本当にウンザリしているんですが、それに触れず自社の基準だけで語っているところがすごいなと。

renny:なるほどそうですね。物差しを他から探してるんじゃなくて自分ところで物差しを作って、それに当てはめてどうかっていう評価をしてるってことですね。会社を紹介する時にESGとかっていう言葉が、枕詞のようについてくることが多いですが、コムジェストさんのレポートの場合は出てこないですね。ESGはもうちょっと手垢が付き始めてるかな。

renny:次のページからは、ヨーロッパから順番に上位の組み入れ上位の会社と、個々の戦略で運用状況について書かれています。主な投資行動や投資先のパフォーマンスが説明されていて、主な投資行動ということで、新規投資をした会社と、全部売却した会社について紹介されています。これは僕が普段からnote等で強調しているポイントなので、もしかしたら読んでくださってるのかもしれないですが。これをきっかけにイギリスのレッグスという会社を初めて知りました。また質の高いポートフォリオの構築に努めてます、とにかく会社をしっかり調べてますと説明されているなと感じました。このあたりのページをご覧になっていかがですか?

吉田:「過去3年のパフォーマンス寄与企業」のところで、全部売却して、どれくらい損しちゃったか、ちゃんと明らかにしているのは、他でも見たことがなかったのですごいなと。悪い情報はちゃんと見せるっていうのは大事なことだと思うので。

renny:エマージング市場株式戦略のところでは、3年間でマイナス56.15%、半分以下になってるっていうアリババグループを継続保有と書いてるんですよね。自分たちの見立てはまだ間違ってない、って示してるっていうのが、その先々ですね当たるか外れるか分からないですが、ちゃんと示してくれてるっていうのは大きいなと思うんですよね。

renny:コムジェストさんのウェブサイトには、他にも「責任投資に関する年次レポート」が掲載されていて、こちらは英語なのでじっくり紹介はできないですが、ESG投資ではなく責任投資っていう言葉を使われるところが僕は好きです。今のESG投資ですごく特徴的だと思うのは、投資先の会社に対してESGの要素でスコアをつけて高いところは、より割引率を低くする、要はより高いバリエーションでも投資できるというような仕掛けをされてるのが多い印象ですが、その中身をはっきり示してる運用会社さんって本当少ないですよね。コムジェストさんはESGという言葉が出てくるかなり以前から取り組まれてたっていう印象がありますが、そのあたりの評価はいかがですか?

吉田:コムジェストさんっていわゆる独立系ですよね。大手の金融グループの運用会社じゃないのが大きいのかな。

renny:組織というか人の面で、いわゆる大手と違って、人が入れ替わりしない。数年で担当者が異動されることがこの業界で日常茶飯事のような印象がありますが、コムジェストさんって長く働かれてる方が多いので、そこらへんもたぶん影響してるんじゃないかな、とは僕は思ってはいるんですけどね。

renny:実は先日、コムジェストさんのIFA(Independent:Financial:Advisor)向けセミナーにお誘いいただいて参加してみたました。そこでたまたま知り合ったアドバイザーの方に少しお話をお聞きすることがあってですね、どういう商品を売ってるんですか?ってお聞きしたら、驚いたことに自分のお客さんには、ベイリーギフォードとコムジェストのファンドしか紹介しません、とおっしゃってて、そんな人いるんだと驚きました。どんなファンドでも紹介するアドバイザーじゃなくて、超厳選のファンドで金融仲介をやられてるアドバイザーさんがもしかしたら増えてくるのかなと思ったんですよね。というのは、今は新NISAに絡んで新設のファンドがどんどん出てきて、それを販売する証券会社の人もそれを1個1個説明してる暇がない、というか、もはややるつもりもない。ネット証券でも保有するファンドで情報が更新されましたよ、知らされることもないじゃないですか。だから自分のお客さんにプッシュ型で伝えていくのがアドバイザーの人の役割になっていって、それが一つの販売の形態になっていくんじゃないかなと思ったんですよね。レストランに置き換えると、ちゃんと料理に真摯に向き合ってるレストランほど、それを理解できる人に紹介してもらう必要が出てくるように。

吉田:そうですね。でもアクティブファンドだけを紹介するっていうのがちょっと…。私も今、新NISAを控えていろいろと相談をされるんですけど。最初はアクティブファンドを勧めてみて、何ヶ月か経った後に確認するんですよ。月次レポートを読んでますか? 最近開催されたイベントに参加しましたか?と。そういったものに一切触れていないというような反応だったら、インデックスファンドに変えましょうねって話をします。投資に対して興味がわかない人にはやっぱりインデックスがいいと思います。

renny:それはそうですね。おっしゃる通りのところはありますよね。レストランの話に戻りますけど、ファストフードが好きな人にもうすごく手の込んだ懐石料理を勧めてもミスマッチですよね。

吉田:やっぱり人に合う合わないはあるのでね。

renny:吉田さんおっしゃるように、月次レポートを読み続けるとか関心持てないようであれば、インデックスファンドの方が投資家本人にとっても、心地いいというか、違和感がないのかもしれないですよね。

吉田:あとはいろんな方にオススメする中で、年齢も関係あるかなと感じていて、アクティブファンドが響くのは30代までかなと。

renny:30代までというのは若い方の方がいい、っていう意味なんですよね。

吉田:はい。今まで投資をしてこなかった人が、ファンドを通じて、こんな会社があったんだと興味を持って、転職先を考えるとか、新しいものに触れて自分のものにしていく能力は、やっぱり年をとるとともに失われていくものなのかなと。40歳をすぎて50歳近くなってからだと、未知のものを受け入れるのは難しいのかもしれない。

renny:コムジェストさんの話からだいぶそれてきましたが、アクティブファンドのイベントとかに参加すると、年配の人の方が多いような印象もあって、若い人の姿が少ないなと感じたりします。でも、吉田さんの周りにいらっしゃる方だと、若い人でもインデックスファンドよりもアクティブファンドの方が面白いよね、って思ってくれる若い人はいらっしゃるってことなんですかね。

吉田:そもそも個別株の投資家に相談しようと考える人たちだから、っていうのもあるかもしれないですね。

renny:そういうところで、ふるいにかかってるところはあるのかもしれないですね。これからは若い人たちが徐々に預金じゃなくて、株式投資にお金を振り向けていくことも増えると思うので、これから5年、10年で着実に貯蓄から投資へってことが起こるんだと思うんですね。一方で、今の様子を見ていると、インデックスファンドを選ぶ人たちはすごく増えるけど、アクティブファンドを選ぶ人はなかなか増えないのかもしれないな、と思うんですけど、吉田さんの今のお話聞いてたらそうでもないのかなと思ったりもするし、その辺ってどうなるんでしょうね。

吉田:やっぱりインデックスに流れるでしょうね。あとは最初に出会う情報が何かにもよるんじゃないですかね。

renny:何と出会うかで全然変わってくるかもしれないですね。たとえ最初は違う道でも頭が固まらない段階で新しいものに触れることができれば、変わる余地もあるのかもしれないですけれども。実際僕なんかがそうだったので。

吉田:でも人間って楽な方に流れていっちゃうからなぁ。

renny:同じ「楽」でも楽しい方にも行くわけじゃないですか。だからどっちに行くかですよね。好奇心があって、新しいことを知ることに対して喜びというか面白さを感じるようであれば、楽しめるんじゃないかなと僕は思うんですけどね。

吉田:そういう人生の方が絶対楽しい!

renny:今日は少ししか触れることできなかったんですが、今回のコムジェストさんのレポートを読むことでも新しい発見があると思いますし、そういうような発見を提供してくれる投資信託が増えてほしいなと思います。

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