#月次レポート研究所 のポッドキャスト 2022年9月 第2回 ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド(愛称:ロイヤル・マイル)後編 テキスト版
このポッドキャストを文字起こししたものです。ファンドのウェブサイトを再確認しながら作業を進めていたら、ベイリーギフォードの個人投資家向けオンラインイベント(11月11日開催)が告知されていました。
renny:月次レポート研究所のポッドキャスト2022年9月の2回目をお届けします。1回目に引き続き、ベイリー・ギフォード「世界長期成長株ファンド(愛称ロイヤル・マイル)」の2022年4月から6月の四半期報告書「エディンバラからの便り」を吉田さんと読み進めているところです。
renny:このレポートの10ページ目のところに、ベイリー・ギフォードの投資方針の哲学が示されています。LTGG(Long Term Global Growth)戦略において、どういう会社に投資するかのチェックポイントが示されています。産業の魅力度や企業の競争力などの五つの項目に分けて、10個の質問を満たせるかチェックポイントが書かれています。吉田さん、こちらご覧になっていかがですか?
吉田:もっと細かく知りたいところではありますよね。投資先の上位10社ぐらいは、それぞれこのチェックポイントにあてはめて語って欲しいなと思います。
renny:そうですよね。何か特徴的なものがあるとすれば、これは過去のレポートか何かに書いてあったんですが、五つ目のチェックポイント「なぜ顧客がその企業好むのか?」は数年前からあったのですが、ここ1、2年でその次の行の「その企業の長期的な成長にとって最も重要な社会的要素は何か?」を加えたという説明があったような記憶があります。いわゆるESG投資みたいなものを意識してるっていうことだと思います。実際にその投資先でどうなのか?ということが後ほど出てきますので、またそこでお話したいと思います。
renny:このチェックポイントの下に「デビルズ・アドボケイト(悪魔の提唱)」というものが出てきます。この言葉初めて聞いたんですが、吉田さんはご存知でしたか?
吉田:いや全然知らなかったです。
renny:吉田さんは投資信託というよりもむしろご自身で投資判断して個別の会社に投資されていますが、要はその継続保有すべきなのかどうなのか、ということを折に触れご判断されてると思いますが、どんなことを意識されていますか?
吉田:手放す時で一番多いのは、投資する時にここの会社のこういうところが気に入った、っていうような部分がなくなっちゃった時点で手放すことが多いですね。
renny:これってチームで判断しているからこそできるようなことなのかなと。議論を深めるためにあえて反対の意見を言うことっていうようなことだと思うんで。なかなかね、1人で投資判断する場合なかなか難しいですよね。
吉田:ピーター・リンチの本だったかな、自分が就職したいぐらい気に入った会社に投資しろ、みたいなことが書いてあって、そこまで気に入ると悪いニュースが頭に入ってこなくなったりするんで。そういうことがないように、常に中立の目線で見れるようにしとておくことはすごく大事なことなので、このレポートのデビルズ・アドボケイトも同じ考えだと思います。これがないと、たぶん投資はうまくいかないだろうな。
renny:そうですよね。だから、そういうことをやった上で、38社の投資先に選別されているということなんだろうなと思います。次の11ページには、この戦略・投資方針を実践されている運用チームが考える世界の変化ということで、個別のテーマに関して説明をされています。最初に出てくるのは呼吸器疾患、マラリア、がんの解決。そして対象となる投資先の会社にどういう会社があるのか。これはなかなか骨太な内容で、また先ほどのチェックポイントでの「社会」というようなことも意識されてるようなところがあると思います。こういうことをしっかりと書かれてるのは非常に重要だと思いますが、その一方で、翻訳はなかなか大変そうですよね。
吉田:そうですね。
renny:このファンド自体は三菱UFJ国際投信さんが設定されて、日本で販売されていますが、三菱UFJ国際投信さん自身でも海外の会社への投資の投資信託を設定されていたりしますが、そういうのに比べると段違いでベイリー・ギフォードの方が内容が濃いです。その辺って吉田さんどう思われますか。
吉田:差が大きいですね。なんかもう日本の運用会社は日本株の投信だけやった方がいいんじゃないかな、と思っちゃうぐらいですね。
renny:いや事前のお話ではね。吉田さんからも日本の運用会社の外国株のアクティブファンドの役割ってもう、翻訳業者になるんじゃないか、っていうことを言われてます。そういう面は否めないのかなと僕も思うんですよね。
renny:こういう形で投資先の技術の裏づけ含めて、レポートに示されてるのは、20年後30年後をイメージされて投資されているんだな、というのを感じますね。これだけでも十分中身が濃いのに、次の12ページにもう一つテーマを載せられてまして、今度は「自動車の既存バリューチェーンが崩壊し、置き換えられる」ということで、いわゆる電池自動車の方に置き変わっていくのではないかという話が書かれています。それに関連する投資先が出てきますが、まさに日本にとっては本当に社会・経済にもかなりインパクトがあるような話ですが、一方でここに出てくる会社に日本の会社出てこない。このファンドは日本の会社にも投資することは可能ですが、残念ながら38社の中に日本の会社が全く含まれていない。そういうことを考えると、日本を置いていかれてるのかもしれないな、と思ったりしたんですが、この解説をご覧になって、吉田さんはどんなことを思われましたか?
吉田:電気自動車の時代が本当に来るのか、ちょっと分かんないな、っていうところもあるんですけどね。
renny:そうですよね。確かにこれが本当になるのかっていうようなところは正直ありますし。まあね、本当にガソリンで走る自動車が全くなくなるのか、っていうとそうでもないだろうし、どんなふうになるのかっていうのは、何とも言えないのかなとは思います。とはいえ5歳児になったと思って考えているベイリー・ギフォードのみなさんは、電気自動車が社会を変えるんだろうっていうふうなことを強く意識されていることが、こういう解説から読み取ることができるのかなと思います。ちょっとだからこの辺はね、まだもうしばらく時間がかかるというか、どういうふうに変わるのかが想像つかないですよね。オセロでバタバタってひっくり返るように変わるのか、じわじわ変わっていって、気がついたら変わってた、っていうふうになるのか、そこら辺は何とも言えないですよね。
吉田:そうですね。たぶん長距離を走るトラックとかが電気自動車に早く置き換わるんじゃないかなって思うんですけど、自家用車にそこまで必要なのかという疑問はちょっとあったりはしますね。
renny:そうですね。物流を支えるところからまず変わっていくのかもしれないですね。そしてレポートの13ページでは、中国のアリババがアメリカのSECに上場廃止警告リストに追加されたことに関して、運用チームの見解が示されています。2022年7月29日にそういうストに追加されたというようなことがあって、この時点ではまだ特に不安視しておりませんと、ということで売却はしていないようなんです。ここら辺に対しての前回の収録で、吉田さんは中国への投資にはやや否定的なことをおっしゃってましたが、どんなふうに思われましたか?
吉田:やっぱりこういうことになっちゃうよね。
renny:さもありなんってことですか。
吉田:うん。世界に投資できる会社がたくさんあって、他にも選びようがあるので、あえて中国行かなくても、と個人的には思います。
renny:そうですね。レポートの14ページ以降はどのファンドにも書いてるようなことですね。これだけしっかりと四半期まとめて報告されるファンドはなかなかないのかなと。しかもこの資料は三菱UFJ国際投信さんのWebサイトにアクセスすれば、このファンドは持っていなくても読むことができます。ここまでのものってなかなかないのかなとは思っています。このレポート全体を通じて、何をここに載せるべきか、っていうようなことに関して、吉田さんがさっきおっしゃってたのは、10ページのチェックポイントに照らし合わせて、個別の投資先の会社をどういうふうにジャッジしたかっていうのを具体的に書いて欲しいな、というようなことをおっしゃってますね。このほかに付け加えるものはありますか?
吉田:それぐらいですかね。そのほかはここまで書いてくれれば、もう十分っていうのはありますね。
renny:だからあとはこういうレポートをしっかり作っていっても、買ってくれる人が増えなかったりしたらやってても意味ないなって思われるとですね、ここを3四半期連続でこういうレポート発信されていても、心が折れちゃったりして運用会社の人たちも辞めちゃったりするのは勿体ないなと思います。まずそういう意味では見せ方が大切ですね。僕はテキストの方が好きなんですが、こういうのを動画にするのもありなのかなと思うんですけれども。見せ方っていう部分に関しては、より洗練させられる余地があるのかな、って思ったんですけれども。
吉田:見せ方っていうより、まずウェブサイトの情報が更新されたら通知が来るようなメール登録とかさせて欲しい。
renny:そうですよね。そこはありません。ただ投信会社さんが直接販売されていると別なのかもしれないですが、あんまり個人情報を持ちたくない、というようなことがあったりするみたいなんで、そういう意味では吉田さんが今おっしゃった部分に関しては、販売会社の人がもっと頑張らなきゃいけないのかなと思います。要はこういう発信があったときには、実際に保有している受益者に情報がタイムリーに届くように工夫できる余地は絶対あると思うんで、そこは販売会社のみなさんなのかなというふうには思ってます。
吉田:でも三菱UFJ国際投信のウェブサイトを開くと、基準価格のメールのお知らせ通知登録みたいなのがあるんですよ。基準価格なんか毎日届いてもしょうがないので、それがあるんだったら。。。
renny:なるほどね。それは気づかなかったです。それがあるんだったら、こっちやるべきですよね。
renny:それで、ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド、ロイヤル・マイルの発信している月次レポート、四半期のエディンバラからの便り以外に、定期的に組入全銘柄のご紹介ということで別のレポートがPDFで発信されています。その中で投資行動、先ほどのエディンバラからの便りにも書かれていましたが、2ページには全部売却した会社の名前とその背景理由っていうのが示されています。
renny:3ページからは組入銘柄のご紹介ということで、投資先全てについて紹介されていて、投資先の国、組入比率、業種、事業の内容が書かれてて、その下に株価の推移がグラフで書かれています。個人的にいいなと思うのが、保有開始の時期が全ての会社について書かれているところです。例えばメイチュアンの場合は2018年9月にスタートしてます。3位のAmazonになると、2004年11月に投資開始してますということで、Amazonに関してはもう足かけ18年近くですかね保有を続けているというようなことを示されてまして、これを見ると、個々の投資先の保有期間がどれぐらいであるのか、っていうのがわかって非常に参考になるんですけれども。この資料をご覧になって、吉田さんはどう思われました?
吉田:いや、これ投資した時期とか見ると、もう参りました!って感じで。こういうのが大事だなって思います。私は投資信託に任せるより自分で買っちゃった方がいいじゃない、って思っちゃうんですけど、Amazonを2004年の11月に投資をはじめたと言われると、これはちょっと叶わないなって思わされます。
renny:そうですよね。前回の収録で吉田さんはAmazonとか、ASMLとかお持ちだっていうことだったんですけれども、やっぱりもう少し後になってから投資されている感じですか?
吉田: ASMLとNVIDIAは2,3年遅れで、Amazonは10年遅れかな。
renny:なるほど。これらはうまくいった例で、そういう投資先が残ってて、同じようなタイミングで投資しても早々に売却しちゃったような企業をたくさんあるかと思いますが。とはいえ、長期に投資を継続しているということは、ベイリー・ギフォードの投資判断がどういうものなのか、っていう示す非常に重要なデータかなと思いますよね。
吉田:そうですね。
renny:実はですね、ベイリー・ギフォードはスコットランドのエディンバラにある投資会社さんですが、スコットランドのエディンバラに僕も一度だけ行ったことがあります。当時、出張で行ったんですが、ベイリー・ギフォードなんていう存在があるとは知らなかったです。やたらとあの昼間が長いなっていう記憶しかないんですけど。同じエディンバラの投資会社でウォルター・スコットという会社があって、こちらのファンドを日本に持ち込んだのが大和アセットマネジメントさんで、「ウォルター・スコット優良成長企業ファンド」というのがあります。
renny:こちらのファンドでも、全組入銘柄について同じような資料を出しています。2022年5月31日時点の投資先が48社。こちらのファンドは成長株だけではないのかな、っていう印象もありますが、日本企業はキーエンス、信越化学、ファナック、SMCが含まれています。こちらも売却した会社が紹介されていて、投資行動として、売却時期や売却した理由が具体的に書かれています。加えて組入銘柄の紹介が分量的にはロイヤル・マイルに比べると少ないんですが掲載されています。こちらも投資を始めた時期が書かれてまして、このファンドも同じエディンバラ繋がりでこうしたのかはよくわかんないすが、資料を見る限り、何かロイヤル・マイルを意識してるのかな、っていうのを感じますね。
吉田:そうですね
renny:こういう形で紹介されているのは非常に良いと思います。やっぱり毎月ってわけにいかないのかもしれないですが、3ヶ月に一度、月次レポートとは別途発信されるっていうのはすごくいいことだと思います。こういうのが増えてほしいですよね。
吉田:そうですね、こういうのが増えて欲しいんですけどね。ロイヤル・マイルの方も、コロナ後の相場に、ちょうど投資戦略がガッチリはまって、資金がいっぱい集まってきたから翻訳作業も頑張ってくれてると思うんで、これが続いてくれるといいですね。
renny:そうですよね。だからそういう意味で、こういう機会で素晴らしい!とかって称賛を送るということは大事なことなのかなと思います。こういう発信こそが本来アクティブファンドがやるべきことなんじゃないかなと思うんで、こういうことをやっているファンドを積極的に紹介できればなと思っております。