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#月次レポート研究所 のポッドキャスト 2022年11月 第1回 ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド(愛称:ポジティブ・チェンジ)前編 テキスト版

上記のポッドキャストのテキスト版です。


renny:月次レポート研究所のポッドキャストの2022年11月は、「ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド(愛称:ポジティブ・チェンジ)」の四半期レポートを読んでいきます。その前に先日、ベイリー・ギフォードが「個人投資家向けフォーラム2022」というイベントをウェビナー形式で実施されまして、こちらは吉田さんもご参加されたんですよね。

吉田:はい。

renny:僕はながら見でしたが、今回のセミナーのサブタイトルが「Philosophy & Beliefs」。投資哲学と信念についての説明が趣旨でしたが、吉田さんはウェビナーに参加されてざっくりといいますか、どんな印象をお持ちになりましたか。

吉田:学術機関との関係が投資に役に立つんだよって、ハッキリ言ってる運用会社ってめずらしい。一緒に研究した結果もセミナーの中で紹介していて、自分たちの投資の裏付けとなる研究も示されましたね。

renny:研究機関で得られた発見や示唆を投資アイデアに織り込んでいることが説明されていたのが印象的でしたね。同時に、彼らのやろうとしている投資は基本的には非常に長い時間軸、投資判断をしていく上において、研究機関も長い時間軸で新しい知見であるとか社会とか地球とか、人類の健康とかそういうなものに対して、長期で取り組んでいるから共通しているというのは、言われてみれば当たり前なんですけれども。さっき吉田さんがおっしゃった通り、そういうことを強調する投資会社はあまり聞かないですし、実際その投資会社のみなさんが研究機関とこういう交流をしてますよ、とおっしゃってるようなことを聞くことはあんまないですよね。

吉田:ほとんどないですよね。一つ他ので聞いたことあるのは、鎌倉投信が「日本でいちばん大切にしたい会社」って本を書いた坂本教授の研究室となにかやってる、みたいなのをチラッと聞いたことがあるぐらい。

renny:そうですね。ただ鎌倉投信はどちらかというと、投資のパフォーマンスとかそのアウトプットとして出たものをどうやって評価するか、みたいなところだったと思いますし。あとは農林中金バリューインベストメントさんも京都大学で寄附講座を持たれて、経営者を呼ばれて学生の皆さんに経営者の生の声を聞いてもらう、みたいな機会を作られていますが。要は研究機関の研究内容とか、そこで得られた知見を投資に活かしますっていうのになると、ほぼ聞かない。

吉田:そうですね。ベイリー・ギフォードの場合、特徴的なのは研究機関といっても、経済や投資、金融の分野の研究ではなかったですよね。

renny:自然科学や生命科学とかでしたね。そういうのはどっちかというと、上場株投資会社というより、むしろそのベンチャーキャピタルであるとか、そういうそのスタートアップに投資するところが、研究機関との提携・協力関係を投資の特徴としてアピールすることはあると思います。でも上場株をメインに投資しているところが研究機関とていうのは、なかなか新鮮だなと思いましたね。他に何か気になったことはありましたか?

吉田:今の話と同じパートで話してたことだと思いますが、セルサイドのアナリスト予想とかレポートは役に立ちません。ノイズにすぎないみたいなことをハッキリいっているのは珍しいなと思いました。(※補足:セルサイドとは証券会社のことなので、投信の販売窓口となる会社の業務をバッサリ、というのは言わないのがお約束なのかなと)

renny:そうですね。そういう面ではバフェットさんのコメントにも近しいというか。そういうところから離れた方が余計なものを聞かずに、自分の投資判断に時間を割り当てられるっていうことなんでしょうね。

吉田:そうですね。

renny:ベイリー・ギフォードがスコットランドに本拠があって、日本人の方はいらっしゃるんだろうな、と思ったんですが、今回のセミナーで数人働いている方がいらっしゃることが分かって、みなさんスコットランドにいらっしゃるのか分からないですが、女性の方は間違いなくスコットランドそうでしたよね。そういうことが分かったのもよかったです。どれぐらいの方が参加されたのか分からないですが、できれば定期的にやってもらいたいですね。

吉田:そうですね。

renny:あとはQ&Aを見ていて、パフォーマンスというか基準価格の騰落でいくと、ちょっと厳しい状況、上下動がかなり激しくて、そういうことに対してどうなんだ?という質問が寄せられてたのかもしれないですが、取り上げられなかっただけなんでしょうか?

吉田:どうなんだろう。でも事前に寄せられてたから、資料でファンダメンタルの三つの指標を見せたんじゃないかな。この後話す、エディンバラの便りにも掲載されているデータを。

renny:こういうイベントでは、どういう投資家がいて、どんな人が聞いてるのか、というところにすごく興味があるのですが、ウェビナーになると空気感が分かりにくい。要はそベイリー・ギフォードの哲学や信念は分かるのですが、聞いてる人たちがそれをどういうふうに受け取っているのかが感じられないな、というのはありましたね。

吉田:なるほど。私だったら前に話した株主総会でどんな質問が出るかで、質問のレベルが低いと売っちゃうみたいな。そういう判断の場としても使えるっていうのが、ファンドでもこういうセミナーで判断できるっていう感じですかね。

renny:ちょっと記憶が正確ではないですけど、Zoomのチャット欄がこのセミナーではオープンになってなかったような記憶があるんですよ。

吉田:たしか主催者にしか見えない設定でしたね。

renny:そうなんですよね。だからチャットをオープンにしてもらえると、もう少し空気がわかるというか、他のファンドでもチャットを見てると、これはちょっと…っていうふうな質問する人いるな、っていうようなことを感じたりすることもたまにあるので。次回は開放してもらえると嬉しいなと。それはまあ置いといて、いずれにせよ非常にいい機会だったと思うので、またやってほしいですよね。

吉田:そうですね。

renny:あとほかに、ここをこうしたらもっと良かったのにな、とかっていうようなことはありませんでしたか?

吉田:長さは1時間半ぐらいでしたっけ? あの長さで初回の内容としては十分じゃないかな。

renny:やっぱり回数を重ねて良くなっていくところもありますし、そういうのが続くためにもある程度のファンドの資産の規模が維持されないと、なかなかやってもらえないのかなと思うので、僕引き続きコツコツと買い足していきたいなとは思いました。

renny:ここからは「ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド」が出しているレポートを一緒に読んでいきたいと思います。一応、2022年10月末時点の月報も既に開示されてはいますが、基本的には三菱UFJ国際投信さんの出されている他のファンドと中身に大差はないのかなと。「BERKELEY LIGHTS INC」という会社を全売却しましたと簡単にコメントされていました。また、ベイリー・ギフォードのファンドの二つのファンドでは、四半期に一度、「エディンバラからの便り」というレポートが発信されています。三菱UFJ国際投信さんのファンドのページにありますので、お聞きになっている方はご覧になっていただければと思います。最初に書かれていることは、このファンドがコミットしている二つの目標について。

2022年7-9月「エディンバラからの便り(ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド)」P1

renny:この二つの目標に書かれてるファンドっていうのは、いわゆるESG投資ファンドみたいなものも同じようなことを言ってるようには感じたりしますが、吉田さんどんなふうに評価されてますか?

吉田:こういう話を書いているファンドは急に増えましたよね。たぶんこの2年ぐらいかな。でもESGを名乗っているだけで、中身が伴ってるものがあるのか?というとあんまりなくて。ただ名前にインパクト投資と付いている投信は、ちゃんとしたレポートを出す傾向があるように思います。もうESGの時代が終わって、次はインパクト投資を名乗って、これから情報開示をちゃんとやっていくような流れなのかな。

renny:インパクトの話に関してはさっき研究機関や大学等と投資会社の連携というか協業っていうようなことで、鎌倉投信さんの話が出ていたと思いますが、投資先の株価や利益が上がったとかの経済的パフォーマンスだけではなくて、どういうふうに社会にインパクトを与えてるか? 社会のどの部分の変化を事業活動で引き起こせたか?っていうのを定量化しようと考えられてたんじゃないかなと推測してるんです。推測というか、そういうふうに理解してるんですけど、このファンドはそういうことをしようとしてますよね。

吉田:そうですね

renny:もう今すでにESG投資で、名前だけじゃないか、ESGウォッシュか?と言われるような感じになってると思いますが、インパクト投資もどこにインパクトがあるのかを説明しないと、どこがインパクト投資なんですか?というふうに言われるようになってくるのでしょうね。

吉田:金融庁や環境省から出ている資料を読んでいると、インパクトを名乗るなら、抜け道は許されない、ESGの二の舞にさせんぞ、みたいな雰囲気が出ていますね。(補足:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」環境省「インパクトファイナンスの基本的考え方について」が参考になります。)

renny:なるほど。最初の冒頭のところで書かれている、二つの目標と今回強調されているのは、ポジティブチェンジ戦略のポートフォリオ構成企業のファンダメンタルズは引き続き相対的に堅固と考えられている、ということに加えて、投資先の株価というのは、長期的には企業のファンダメンタルズに従うという考えを持っています、と示されています。投資先はコロコロ入れ替えずに、長期でしっかりと保有していく。逆に言うと、長期でしっかり保有するのがベースであるからこそ、かなりしっかりとした調査をするというようなその投資判断に当たっての調査を厳しくして、そうそう簡単には投資しない、というようなスタイルであると推測されますね。

renny:同じページの下の部分は基準価格の推移が設定日から出ていますが、足元結構しんどいところなのかなと。基準価格と純資産総額のグラフになっていて、実際にファンドの資金流出・流入がここでは分かりませんが、僕の計算だとこのファンドに関しては、残念ながら今、資金がファンドから出て行ってる、解約の方が増えてるような状況のようです。そういう意味でも、さっきのウェビナーが継続的に行われるためには、それがまた流入に転換していかなきゃいけない。ただ一方でこのグラフ見ていただいたら、基準価格が2020年から21年の秋口ぐらい年末にかけてですかね、ワーッと上がっていくところで、純資産総額もものすごいペースで上がっていったっていうところもありますんで…。要はこの基準価格の動きにつられて入ってきた投資家も相当数いらっしゃったんじゃないかなと想像されますね。3ページ以降には、基準価額にプラスに影響した投資先とマイナスに影響した投資先について紹介されています。ここら辺の具体的にあげられてる会社をご覧になって、気になった会社はありましたか?

吉田:知らない会社ばっかりで…

renny:そうなんですね。最初に出てきたのはメルカドリブレ。中南米最大級のECサイトを運営する南米の会社で、9月末時点ではファンドの組み入れの上位4番目に位置しています。吉田さんはあまりお聞きになったことがなかった会社ですか。

吉田:そうですね。中南米とか言われると、もうわからない。

renny:なるほど。このファンドのインパクトテーマは具体的に次の4つ。「平等な社会・教育の実現」「環境資源の保護」「医療生活の質向上」「貧困層の課題解決」。この中でこのメルカドリブレは「平等な社会・教育の実現」ということで取り上げてるということですね。メルカドリブレの事業が情報や教育へのアクセスに対する障壁を取り除いたりイノベーションを可能にする、というようなことだろうなというふうに読めますね。

2022年7-9月「エディンバラからの便り(ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド)」P3

renny:次にアルナイラム・ファーマシューティカルズ。アメリカの医薬品メーカーで「医療生活の質向上」がテーマだということでこちらはどちらかというと医薬品メーカーというより、バイオテックだと思います。その次に出てくるのがディア。アメリカの農業機械メーカーで、ディアはさすがにご存知の会社ですよね。

吉田:そうですね。でも投資しようと考えたことがない会社ですね。

renny:ディアについては、センサーデータ自動化の活用を行うその精密農業事業を評価されていて、農業機械というより情報をどう使うか、というところが社会課題の解決に繋がっていくという評価をされているとのことです。こういうふうに会社の事業内容に加えて、その事業活動がどのように社会にポジティブな貢献ができるのかをイメージできるのは、投資先への理解を深めるために非常に重要なことだと思います。

吉田:こうやって説明してくれないと分からない。名前も聞いたことない会社だったらまずそこが大事。

renny:投資先がファンドのパフォーマンスにこれぐらい貢献しました、という話も、もちろん大事ですが、そもそも事業があっての業績や株価なのですからね。レポートではこれに引き続き、、基準価格にマイナスに影響した銘柄の紹介ということで、台湾セミコンダクターTSMC)、オーステッドクリスチャン・ハンセン・ホールディングと3社出てきますが、オーステッド、クリスチャン・ハンセン・ホールディングはご存じですか?

吉田:オーステッドは聞いたことあったかな。デンマークは風力発電の会社が有名なイメージがあります。オーステッド以外にもベスタスとか。

renny:オーステッドは洋上風力発電施設の開発建設等を行うデンマークの会社。全世界の洋上風力発電の落札容量の4分の1ぐらいを担っているということで、クリーンエネルギーにかなりコミットしているんですね。クリスチャン・ハンセンは加工食品メーカー。食品ロスや効率性改善に貢献している企業とのこと。食品セクターでデンマークの会社が入ってくることは少ないですね。

後編へつづく


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