クリエイティビティが加速する、PIVOTは“新しい装置”だ
「コンテンツの力で、経済と人を動かす」をビジョンに掲げ、サービスを開発中の新会社PIVOT。
ここに集まるメンバーには、どんな思いがあるのか。
これから何を生み出そうとしているのか。
映像チームのメンバーが現在地までの歩みと構想を語った。
スピーカーは、PIVOT代表取締役CEO・佐々木紀彦、映像部門を率いるCOOの木野下有市、PIVOT エグゼクティブ・プロデューサーで、ハイブリッドファクトリー代表取締役・古田清悟。聞き手は、PIVOT エグゼクティブ・ライターの宮本恵理子。鼎談は8月下旬にオンラインで実施。文中敬称略。
アメリカと日本での二度の再会から、事業立ち上げへ
―前回は古田さんの参加動機を中心に伺いました。COOとしてビジネス部門・映像部門の戦略を練る木野下さんは、電通を辞めてPIVOTへのジョインを決断しました。これまでの歩みを教えてください。
木野下 もともと佐々木さんとは大学時代からの友人で。僕は映像コンテンツに興味があって、実は新卒では三菱商事に入社したんです。三菱商事は当時、ジブリ作品への出資や「ベイブレード」海外展開の立役者として話題になっていました。
でも物流部門に配属され、半年で辞めて第二新卒として電通へ。それでも最初から映像の仕事はさせてもらえないので、アメリカの西海岸にあるAFI(American Film Institute)に2年間留学して映像プロデュースの勉強をしました。ここで、スタンフォード大に留学していた佐々木さんと再会したわけですが。
↑ 再会当時2009年、ナパバレーでワイナリー巡り
一度帰国した後、電通子会社のDentsu Entertainment USAのCEOとして現地に赴任して、日本発コンテンツのグローバル展開を5年ほどやっていました。ただ、対象にしていたのが「妖怪ウォッチ」や「ロックマン」といった子供向けアニメ作品がメインだったので、必ずしも自分自身を視聴者として作っているものではなかったんですよね。
その頃、佐々木さんは日本で「NewsPicks(以下NP)」を立ち上げていて、ビジネス系メディアとしては画期的な記事をバンバン生み出していて、僕はかなり初期からコアなファンだったんです。「経済コンテンツって面白いなぁ!」と布団の中でも寝不足になりながら読んでいたんですよね。
そろそろ駐在後何をやろうかを考え始め、一時帰国したときに、佐々木さんに会って焼き鳥を食べに行って……。
佐々木 そうだった。カウンターで焼き鳥食べましたね(笑)
木野下 「NPでも動画のコンテンツを増やしていきたいんだ」という構想を聞いて、「一緒にやりましょう!」と盛り上がって、2軒目はグランドハイアットのバーに移って「マジでやりましょう」と決意。電通の上司に通して、合弁事業としてスタートしたのが「NewsPicks Studios(以下NPS)」でした。
「WEEKLY OCHIAI」「THE UPDATE」「OFFRECO.」と、硬軟交えたいろんなフォーマットの番組制作を3年かけて一緒にやってきて、当初の計画よりも上回る成果を早く出すこともできた。
佐々木さんの新たなチャレンジとして「行動を生み出すコンテンツサービスをつくりたい」というビジョンを聞いて、僕も深く共感できたから今ここにいる。そんな経緯です。
NPSでやってきたこと、PIVOTでやろうとしていること
―佐々木さんにとって、木野下さんとNPSで築いた価値はなんでしたか?
佐々木 やはり、一つの“型”を生み出せたという実感はありますね。それまで経済がテーマの動画コンテンツでちゃんと課金収入を得られるものや広告パッケージとして売り出せるものは、ほとんど日本にありませんでしたから。この分野のゼロイチは生み出せたかなという自負はあります。
経営に関しても全メンバーの目覚ましい貢献によって黒字化を達成できましたし。企画と経営、両面でのゼロイチ実現の核にあったのは、木野下さん、古田さんとのコンビネーションだったと思うので、新しい挑戦を一緒にできることが心からうれしいです。
―NPSでやってきたことと、PIVOTでやろうとしていること、その違いはなんですか?
佐々木 NPSで開拓したのは、経済テーマやビジネスリーダーを主役にしたトークコンテンツでした。PIVOTではもっと表現方法を広げて、リアリティショーやドキュメンタリー、ゆくゆくはドラマにも挑戦していきます。手間もお金もかかりますが、当たったときのインパクトは大きく、クリエイティビティもより厳しく求められる。より広い世界に向けてジャンプするような、でっかい勝負がしたいと思ったのが起業の理由です。
これは別に絵空事ではなく、ご期待を寄せていただけるVCや投資家の方々からすでに資金も集まってきています。外部マネーを生かしながら、自分たちで責任を負ってクリエイティビティを発展させていく。新しいビジネスモデルをつくりたいと思っています。
木野下 PIVOTという会社は、いわばまったく新しい“装置”なんです。コンテンツを生み出すにはお金が要ります。でもそのお金を集める手法というのが、「製作委員会」のような限られたプレーヤーの資金に頼る形が長くとられてきました。
でも、世の中を広く見渡せば、いい投資先を探しているベンチャーキャピタルはたくさんあるわけですよね。「こういう番組を作るのでお金を出してください」と個別に回るのでは限界がありますが、PIVOTという装置に対してお金を出していただく形なら可能性が広がります。新しい生態系をつくる役割を担っていきたいですね。
―佐々木さんは、なぜまた木野下さんと一緒に組みたいと思ったのですか?
佐々木 最近、いろんな本を読んで勉強をしているのですが、つくづく経営とは「具体」と「抽象」の行き来だなと思っていまして。
私はずっとコンテンツをつくってきた人間なので、どちらかというと「具体」に寄せて企画を練る時間が多い。木野下さんは抽象化のセンスが秀逸で、数時間ディスカッションするだけでどんどん戦略が練り上げられる。具体のアイディアがあり、抽象化してパッケージに変えて、売り物にして広げていく。その流れを通貫できるパートナーとして、木野下さんと組みたいと思いました。
木野下 金儲けのことばかり考えているわけじゃないですからね(笑)
佐々木 分かってます(笑)。ちなみにPIVOTという社名を考えてくれたのも木野下さんで、コピーライティングのセンスが秀逸なんです。
―木野下さんがPIVOTで成し遂げたいことは?
木野下 単純に、僕自身が夢中になれるコンテンツをつくりたいです。電車の中でも布団の中でも、何度でも触れたくなるコンテンツを、それも経済を面白くするコンテンツをどんどん生み出したいですね。
佐々木さんの壮大なビジョンの実行役として、僕が出せる力は全部発揮して頑張っていけるといいなと思っています。
木野下有市/PIVOT COO
三菱商事を経て電通入社。映像コンテンツの企画・事業開発を専門とし、Dentsu Entertainment USA社CEOとして日本原作のハリウッド映像化や、電通とニューズピックスの合弁事業「NewsPicks Studios」COOとして番組プロデュースおよび収益化を牽引。American Film Institute(AFI)にて芸術学修士を取得。休日は都内近郊、休暇は日本各地のサウナ巡りで汗を流している。
―大企業からスタートアップ創業へ。ご自身も「PIVOT」する決断をしたんですよね。
木野下 そうですね。電通ではすごくいい経験をさせてもらいましたし、僕はもともとそんなに勇気のあるタイプではないんです。佐々木さんとずっと番組づくりをする中で、番組で出してきたメッセージに僕自身が影響されちゃった感じはありますね(笑)
自分自身の決断に半分驚きつつ、やっぱりコンテンツには個人の人生を変えるパワーがあるんだなと実感しています。個人の行動を促して、挑戦を応援するコンテンツをこれからも生み出したいですね。
古田さんもおっしゃったとおり、業界の構造そのものを変えたいという思いもあります。映像の業界に少し足を踏み入れて見渡してみると、素晴らしい才能があるのに閉塞感を抱えている人たちが40代以下にはたくさんいて。従来の常識では不可能だった新しい仕組みを僕たちが整えて、その中で思い切りクリエイティビティを発揮してもらう。
まずはアプリから開発していきますが、様々な枠組みで、新しいコンテンツを生み出していきます。一度決めたルールにとらわれず、柔軟に何度でも軌道修正できるのも独自開発の強みです。ぜひ意欲あるクリエイターの皆さんに仲間になってほしいと思います。
―どんな映像コンテンツを準備中なのか、チラッと教えてもらえませんか。
木野下 佐々木さんも言ったように、リアリティショーには力を入れていきたいと思っています。アメリカで計7年ほど生活する中で感じたのは、経済番組の豊富さだったんです。
例えば、経営コンサルタントが潰れかけたバーを立て直すレスキュー番組だったり、ランチトラック事業に挑みたいビギナー5組に資金を渡してアメリカ大陸を横断させるサバイバルチャレンジ番組だったり。エンターテインメントとして面白いだけじゃなく、アントレプレナーシップを促進させるメッセージ性が魅力的だなと思ったんですよね。
NPSでやってきたトークショーも面白かったんですが、リアリティショーなら“決断を生む設定”がつくれる。1時間の番組の中で起業家や投資家のアクションが決まり、現実の世の中の風景を変える経済の流れにつながっていく。そんなパワーのあるコンテンツの作り手に僕たちはなろうとしているし、毎日ワクワクしながら構想しています。
佐々木 楽しみですね! 私たち自身の挑戦がPIVOTであり、試行錯誤を楽しめることが今のフェーズでの最大の醍醐味。ご興味ある方はぜひPIVOTのサイトからご連絡ください。
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