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ニューヨーク・タイムズのサクセスストーリーに潜むLLM(大規模言語モデル)の脅威
インターネットは媒体ビジネスの形を大きく変えた。記事の編集から公開までの流れ、鮮度、配信方法、収益方法などなど。急速に進化するインターネットの世界で、各媒体社が様々な方法で対応していく中、ニューヨーク・タイムズは媒体社のなかで際立つ存在となっている。
ニューヨーク・タイムズ(NTY)紙が最大の有料ウェブサイトになるまでの道のり、同社の収益方法、コンテンツに学習させた大規模言語モデル(LLM)の出現によって直面する課題について掘り下げてみる。
※本記事はChatGPTを一部活用しております
ニューヨーク・タイムズの台頭
NYTは、広範な有料ニュースサイトとしてデジタルメディア界を席巻し、競合他社を大きく上回る購読者数で業界の巨人となっている。それはなぜだろう?
【戦略転換】
NYTの躍進は、広告から購読への戦略的ピボット(2011年)と、その後、魅力的なデジタルコンテンツの創出や買収に起因している。デジタル・マーケティングやデータ分析を駆使して読者とのエンゲージメントを極めたNYTは、デジタル時代に移行するメディアの新たな基準を打ち立てた。
【量より質】
2011年にデジタルメディアのサブスクリプションを導入したことは、当初は大胆な行動であった。
サブスク導入により、NYTの質の高い編集記事に投資することで読者の信頼とお金を獲得した。
NYTのアプローチは、他社のクリックベイト傾向とは対照的である。その代わりに、徹底的に信頼できる報道に投資することで、ジャーナリズムの誠実さを維持した。
【プロダクト・ダイバーシティ戦略】
NYTimes.com:記事、レポート、社説など、NYTのジャーナリスティックなコンテンツへのデジタルアクセス。
The Athletic:地元や全国的な視点から、詳細なスポーツ報道とストーリーテリング。2022年に5億5000万ドルで買収したデジタル スポーツ専門紙。買収時点でThe Athleticの購読者が120万人だったが、翌年には2倍以上に増加。
NYTクッキング:レシピ検索、料理家のガイド、食事プラニングツールなどを提供。
ゲーム:人気のデイリークロスワードなど、様々なインタラクティブパズル。2022年、NYTはWordleを100万ドル以上で買収。
Wirecutter:数多くの消費者カテゴリにわたる製品レビューと推奨。
【圧倒的なサブスク数と成長の維持】
NYTの急成長するデジタル購読者ベースは、現在の市場支配力の証であり、将来の成長への足がかりでもある。2023年11月時点でNYTの購読者数は1000万人(デジタル941万人、紙 60万人)を超え、最も近いライバルであるウォール・ストリート・ジャーナル紙は350万人と差を浮き彫りにしている。NYTのデジタル版購読者は2022年と比較し約10%増加した。
多様なプロダクト:アップセルやクロスセルが可能になり、NYTはユーザーは一人当たりのLTVとARPU($9.28)を向上、また新規ユーザー獲得にも大きく貢献。
ネットワーク効果:購読者が増えれば増えるほど、コンテンツへの投資が可能になり、より多くの購読者を惹きつけ、好循環の成長サイクルが生まれる。
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【NYTの2023年第3四半期の気になった数値をピックアップ】
総加入者数1,000万人以上!
デジタルのみの契約者数:940万人(前年同期比10%増、前期比2%増)
デジタル専用の1ユーザー当たり平均収入(ARPU):9.28ドル(前年同期比5%増)
70万人の紙媒体購読者。案外いる!
収入の内訳
サブスクリプション:売上全体の70%
デジタル:47%
紙媒体:23%(徐々に減少)
広告:全収入の~20%(ほぼ横ばい)
その他:収益全体の10% はライセンス、Wirecutterアフィリエイト、商業印刷、不動産リース、ライブイベントなど。
マージン:
過去3年間の粗利益率は50%前後
営業利益率は過去10年間ほとんど10%前後
【NYTの成長をどう読み解くか?】
デジタル成長:NYTのデジタル成長の軌跡は、消費者のメディア消費パターンの変化をとらえ、広告ベースモデルから購読ベースのジャーナリズムへのピボット成功の裏付けとなっている。
紙媒体の持続性:デジタル版NYT躍進にもかかわらず、紙媒体の売上への貢献は大きい(全売上の23%)。インターネットの情報消費が習慣化することはあっても、一夜にして消滅することはない。
ポートフォリオの多様化:ニュース以外の様々なデジタルサービスへ投資することで、プロダクトを多様化し、進化するデジタル時代に生き残る戦略を示している。
成長への投資:プロダクトやサービス開発とテクノロジーへの継続的な投資は、ユーザー体験の向上と長期的な成長を促進する、というNYTのコミットメントと実行力!
ニューヨーク・タイムズ ~ OpenAI訴訟
2023年12月、NYTがOpenAIとマイクロソフトを提訴したことは、AIと著作権法の今後の関係において重要な意味を持つと思う。単純に著作物の使用についてだけではなく、コンテンツの創造と流通の未来にも関わってくる。
【訴訟のポイント】
大規模言語モデル(Large Language Models、LLM)の学習に著作権保護された素材を無断で使用。
これらのLLMが、オリジナルの著作物を忠実に模倣した出力を生成する能力。(NYTが書くトンマナ記事をAIが書く)
【NYTの主張】
インプット&アウトプット:NYTの法的主張は、AIモデルが著作権で保護されたコンテンツ(インプット)から学習し、同一またはそれに近いコンテンツ(アウトプット)を生成することが問題だと訴える。これにより、NYTが提供するコンテンツやサービスと競合することを問題ししている。
AI幻覚の問題: AIが「幻覚」し、事実に基づかない情報をNYT調に生成し、NYTの評判を損なう可能性がある。
【AIとジャーナリズムへの影響】
テストケース:この訴訟は、AI企業がLLMを学習させるるために著作権で保護されたコンテンツをどのように使用するかという先例となり、今後AIとハイテク業界全体に影響を与える可能性がある。
責任の所在:AIが侵害コンテンツをアウトプットした場合、誰が責任を負うのかを判断するのは非常に複雑。AI企業なのか、AIをホストするプラットフォームなのか、それともアウトプットを促したユーザーなのか。
イノベーションと保護のバランス:この結果は、AIとコンテンツ制作者が、イノベーションの必要性と知的財産保護のバランスをどのようにとるかに影響を与える可能性がある。
【今後の注目点】
裁判所の解釈:裁判所がこの文脈で公正な利用の原則をどのように解釈するかが重要となる。裁判所は、AIの使用目的、著作物の性質、市場への影響といった要素を考慮するであろう。
前例となる判決:どのような判決であっても、今後のAIと著作権に関わる裁判の基準となる事間違いなし。
【OpenAIのスタンス】
新たな機械創出:OpenAIは良き媒体社のパートナーとして健全なニュースのエコシステムをサポートし、相互に有益な機会を創出することを追求してきた。
公正な利用:OpenAIは、LLM学習のためのニュースコンテンツの利用は公正な利用であると主張しているが、同時に媒体のオプトアウトも提供している。
稀なバグ:OpenAIは、時折 学習に使ったコンテンツをそのままアウトプットしてしまうことを認めているが、これは稀なバグであり、常に修正している。
サプライズ!:2023年12月に行われたNYTとOpenAIの話し合いでは、ChatGPTでNYTのコンテンツを適切なアトリビューション付きで表示することに焦点を当て、話が
【生成AIの法的迷宮】
NYTだけの問題ではない:「ゲーム・オブ・スローンズ」の作家など複数のコンテンツクリエイターがAIが生成したコンテンツに対して著作権を主張。
画像生成の課題:Getty ImagesやStability AIといった企業は、法廷で同様の問題で揉めている。
マイクロソフト、GitHub、OpenAIは、コーディングのトレーニング方法をめぐる訴訟に巻き込まれている。
【今後どうなる?】
この訴訟は、新たなテクノロジーと確立された法的枠組みにおける課題を浮き彫りにしている。その結果は、メディア、テクノロジー、そして法律の各分野に波及し、AIを駆使したコンテンツ制作の時代における公正な利用とは何かを再定義する可能性がある。
これらの訴訟は、AIが既存のコンテンツをどのように利用するかを再定義し、AIの進化や発展を大きく左右する事になるであろう。
うめ
イベント開催 (2024年3月19日)
日時: 2024/3/19(火) 17:30〜21:30
会場:東京カルチャーカルチャー (渋谷)
募集人員:80名程度
対象者:パブリッシャーマネタイズに関わる方々
参加費無料