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【ネタバレ注意】『蜻ェ繧上█縺溷サ█搗』を勝手に小説化してみた 2/2

※柄シャツ男さんの"オダ君は最強"写真集『蜻ェ繧上█縺溷サ█搗』に対し、かなり独自の解釈をし、捏造しています※
※まだ写真集を見ていない方はネタバレにご注意ください※

柄シャツ男リターンズ作品
"オダ君は最強"写真集
『蜻ェ繧上█縺溷サ█搗』
通常版発売中
BASE



恐る恐る神社の敷地を歩くオダ。
「ったくふざけんなよ、ここどこなんだよ…」
心細さから漏れ出る自身のひとり言でハッとする。場所は先ほどトクガワと一緒にいたところに変わりはないはずなのに、一瞬ここがどこなのかわからなくなっていたことに気づいた。なんだ?この違和感。暑い。それにしても暑い。暑い?さっきまで山道を歩いていて身体が火照っていたが今は空気のムワッとした蒸し暑さが身体にまとわりついているように感じる。あ、山の上だからか?いやっ11月の山なんてむしろ寒いだろ。だからジャケット着てんだろ。
ミ″―――――――――ン″ン″ン″
「ウワッッッ」
バタバタバタッと顔近くに何かが飛んでいったのに驚きつつ目で追う。蝉だった。はあ?さすがに死滅してるはずだろ、たぶん。なんなんだよ、ていうか今日何日?今何時?ふとそう思いスマホの画面をつける。充電切れ。はい、異空間決定~~~!!!!!!!

オダ君、そろそろ自分の状況に気づいたかな、と思いながら探索を進めているがそこは想像以上に荒廃した土地だった。骨組みしか残っていない廃墟の中を覗き手掛かりを探す。一体いつからこの状態なんだろうか・・・土埃にまみれた見たことのないジュースの空き缶や液晶ガラスが割れたブラウン管テレビなどが転がっている中、バラバラになった雑誌の1ページを見つけた。簡素なイラストとともにコラムが書かれているが残念ながらいつの時代のものかがわかるような一文はなかった。そこで彼は広告に目をつけた。「患者の70%が仂けるようになる!」というキャッチコピーに「働」という漢字の略体として「仂」が使われている。これを読める日本人は今ほとんどいないだろう。それくらい古い雑誌のものなのだとわかるが、一応広告の品をググってみる。すると「副腎皮質ホルモン剤の剤形と種類」という論文が引っかかった。1965年に書かれたものだ。なるほどその時点ですでに普及していたものと推測できる。約60年前の雑誌が今こうして見つけられるということは、相当な年数ここに人が立ち入っていないことになるだろう。さっきの霊がこの地で生きていたのはその頃なのだろうか…?つまり、今オダ君がいるのはもしかしたら……

一方その頃オダも見慣れないものを発見していた。
「なんだこれ……はあ??ピン札の五百円札とかそのへんにあるか普通???」
五百円札とかいつの時代だよ?としっとりと濡れてはいるが真新しいそれをつまみ上げてしげしげと見てみる。
いつ頃使われてたのかわからんくらい昔のやつだってことはわかるけどな…はあ。スマホが動けばそれも調べられるのに……クソっこのおっさん誰だよ!?!まじで知らねえ!!!しっかしピン札なのがおかしいだろ、現代にあるわけねえし。そう思った瞬間ゾっとする。もしかして…現代にあるわけがないってことは、このお札が現役の時代に今俺がいるってことか?!!いやだから何時代だよ!!!!

オダ君、そろそろ自分がタイムスリップしてることに気づいたかな。
すでに廃墟探索と化しているトクガワは完全に倒壊している家屋の上に立っている。長く家を支えていたであろう木の柱がすべてぺしゃんこに折り重なって倒れており、その上にかつては人を雨風から守っていたであろう屋根が見る影もなく崩れ何十にも重なった枯葉とともに今にも地面と同化しようとしている。トクガワはその屋根の上に座りゆっくりと思案する。おそらくタイムスリップしているオダと通ずるにはどうしたらよいのか。きっと何かあるはずだ。

「ああああまじでどーーーーすんっだよ!!!」
タイムスリップしたことを何となく察したオダが頭を抱えて叫ぶ。とりあえずトクガワを探してもしょうがないことはわかった。あいつは今現代にいるからだ。チクショーなんで連れてこられた俺がタイムスリップしてんだよ、あいつがすべきだろオカ研なんだから。俺がきてもなんもできないっつーの。ハタ、と彼は気づく。もしトクガワがここにきていたらどうするか?「まず全体を見渡すのは基本ですね」とか言うだろうな…なんかどっか高いとこねえかな。

そうして彼は少しでも見晴らしのいいところへと倒壊した家屋の上に登った。それは奇しくも現代のトクガワが座って思考を巡らせている場所だった。オダがやれやれと辺りを見渡そうとしたそのとき、オダとトクガワのいる位置が数十年越しに完全にぴたりと一致した。瞬間、フワ‥と白いワンピースの残像がある家の中へ入っていくのが見えた。
「うわあああ!さっきのあいつじゃん!!」
ばっちり目撃してしまったオダは恐怖でその場でへたりこんでしまう。が、現代に戻れる手がかりがまったくない今、その後を追うしか選択肢はなかった。
白いワンピースが入っていった家を覗くとそこに女の子の霊はおらず、くしゃくしゃになったチラシが1枚落ちていた。その内容を読んだオダはとにかくこれをどうにかしてトクガワに伝えなければいけないと、転がっていた適当な雑誌の1ページにでかでかと「この子探して!!オダ」と書き、そのチラシとともに置いた。もしオダの考えた仮説が正しければ……

さすがにラインも既読つかないか‥スマホを見ながら歩いているとふいにあるものに焦点が合う。被さっている枯葉をよけてみると古ぼけたチラシと雑誌があった。大きく「探しています」と書かれたチラシには白いワンピースを着た女の子の写真と行方不明になった経緯が書かれていた。
「1968年…だいたい読みは合っていたということか」
そして55年前の世界にいるオダが雑誌に書いた一文を読む。
「これを書いておけば現代まで残り僕に届くだろうと考えたのか…冴えてますね、オダ君」
チラシを持ちながら再び歩き出すトクガワ。どこまで行っても生気のないこの土地にも生きていた時代はあったのだろうか。青々とした苔ばかりが映えている光景を見て諸行無常とはこのことだな、などと考える。さて、とチラシに目を落とした瞬間、また視界の奥の方に焦点が合う。それは荒廃した場所に似合わないクマのぬいぐるみだった。崩れ落ち役目を終えたかに見えた屋根が最後に守っていたものなのか、クマは濡れもせず綺麗な状態でそこにいた。トクガワはクマの前にしゃがみ、チラシと照らし合わせる。写真のそれと相違ないようだった。
「かわいそうに」ぽつり、とトクガワがつぶやく。

「うわっ!ちょっと待っているじゃんか……!!!」
廃墟を一通りぐるっと見て回ったオダだがなすすべがなく、仕方なく鳥居まで戻ってきたところだった。建物の入り口にかかる階段に小さく体育座りをしている女の子の霊が見え、オダは恐怖におののく。
「おれこれまじで嫌だ、あああどうすんだよこれ~~~!!」
口を八の字に歪ませ鳥居にしがみつきながら叫びまくる。その声は虚しく響くばかりで誰の姿も見えず何の助言も聞こえてこない。ただここで逃げてしまえば現代に戻ることができなくなるかもしれない。そう思ったオダは覚悟を決め、ゆっくりと近づいていった。
「すいませんまじすいません本当にごめんなさい…」
へっぴり腰で拝みながらそろそろと歩みを進める。オダが目の前にきても女の子はぎゅっとクマのぬいぐるみを抱きながら身体を縮こませて座っている。その真っ白な足は裸足のままで、真っ黒な長い髪がだらりと顔を覆っていて表情を伺うことはできない。だがその姿は怯えているように見えた。
そこでオダはオカ研のサイトで読んだ「知的障害のある子どもを神の使いと崇めていた風習」とチラシの「軽度の自閉症のため、うまく会話ができません」という文を思い出しその因果関係を悟った。この子は巻き込まれただけにすぎないのだとしたら…

「つらかったな」

自然と手を伸ばし彼女の頭をそっと撫でた。その途端フッと彼女の姿が消え、クマのぬいぐるみだけが残った。思わずそれを拾い後ろを振り向くとそこには

「ああ、オダ君。お疲れ様です」

ひらり、と手を上げあっけらかんと言うトクガワがいた。

「おまえーーーーーー!!!!!!」


今日一番のオダの心から叫びが響き渡った。
「やっぱりオダ君は最強ですね」と言いながらすでに帰ろうとさっさと鳥居をくぐるトクガワ。
「ちょちょちょお前待てよ!」
泡食ってそれを追いかけるオダがぴたりと立ち止まりくるりと振り返る。

そして”彼女”は最後ににやりと怪しく笑った。

『な い ショ だ ヨ』

おわり


actor:柄シャツ男
photographer:ホンダアヤノ

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