みんながどういうこと考えて成長や研究を決めてるの教えてほしい noteとかで(全36回完全版・40スキル環境-ゲーム終了まで編)
■はじめに
全4章のうちの4章目、前回
のつづき。
今回の見出しカードイラストはワイルドインスティンクト「蘖」。これで「ひこばえ」と読むそうだ。
最終盤に離脱前爆弾としての森を強化するため自分の元に戻ってくるまでばら撒き続け、最終的には目論見通り自分の手元へやってきた。
■30:00:自然40・解析40・変化40・響鳴40・武術11
武術-14、解析+6、変化+9、響鳴+5。
まず手の届くものを習得してボーナスFPを得られるだけ得る。
習得計画表では武術40も一瞬検討したようだが、この百薬待ち状態を崩すデメリットはやはり大きかったらしく没になっている。
ここでまず注目されたのはディエスイレ。
ヒット数に由来する類似スキル最大の短縮幅と響鳴40単系という習得しやすさから、スペシャルタイムや超過適応など強力な%強化対策として大きな期待が寄せられた。
このスキルが注目されたもう一つの大きな要因は同じ40複合新出スキルにあったが、詳しくはスキル研究欄で。
40複合スキルはこれまでにないほど生産関係のスキルも多く、ほぼ全ての異能に生産関係のスキルが存在していた。習得リストの下の方に並ぶ四字熟語はすべてそれだ。
ここで30複合初習得以来の生産異能の方向転換も決意。
メイン防具・サブ合成から、メイン合成・サブ料理へ大きく振り直すことを決めた。
イバラシティの合成は、1更新経って合成Lvが5上がる度にこれまでできなかった合成が可能になってきた。
その合成Lvが99でカンストしてしばらく、それよりも上の合成が判明したのが28:00。新たに現れたアイテムの数々は非常に強力で、しかもこれが5~6点同時に判明したため騒然となった。
だがその時点では材料に足るアイテムが慢性的に不足しており、一般化し始めたのはもう少し後。その間にも新たな合成アイテムは発見され続け、合成という生産技能自体の需要が急激に高まっていた。
これまで合成をサブにしてきたのは、Lv99でなくても需要があったから。
だがこの当時求められていたアイテムの合成要件はいずれもLv99。メインにしなければこの数値は達成できない。
ではLv99でなくても、更に言えば現在+次回の残りCP=Lv77で需要が見込める生産技能は? 武器・防具・装飾の装備作製3技能はLv99で当たり前、付加も軒並みLv95を要求する時代だ。
消去法により料理一択。
健食作製・喉飴作製と、丁度新たな料理を作るスキルもあることだし。
唯一のネックはこのタイミングで習得することでついてくるLv20料理スキル、技巧料理。
アイテムとしての料理の「強さ」の数値を上げるスキルなのだが、たまに料理を失敗して付加効果をすべて消してしまう。
イバラシティの料理は99%付加目当てで食べるもので、このスキルは当時のプレイヤーの大半には「料理付加がたまに吹き飛ぶスキル」として記憶されていたのではないだろうか。
だが健食・喉飴の2つの料理種別は強さを参照して独自効果を発揮するもので、Lv40でようやく技巧料理に救済があったと噂された。
この2つを売りにするなら、強さが上がる技巧料理も売りになるはずだ。
たまに強さだけが残った消し炭が生まれるとしても。
それに森の取る生産技能として、たまに失敗する料理というのは似合っているように思えた。森、ひいては植物は食料生産元ではあれ、調理という文化には縁遠く、料理が上手いとは思えない。
元々その点から料理技能はなるべく上げたくないという思いさえあったほどだ。
健食・喉飴のようなスキルは他に存在せず、技巧料理がどちらかと言えばデメリットスキルだという評価がこの2つだけで覆ったとは思わない。
だが森が使うと考えれば、私にとって技巧料理は好ましいものだった。
以降行った料理の99%が請負だったため、人の料理を消し炭にする恐怖が常につきまといはしたが。
■スキル研究:30:00
新出40複合をその場で3研究。
書いてあることが、そうせざるを得ないほどの脅威だったからだ。
いきなり何を言い出すんだ。
これで贖罪山羊によるかばうダメージが全て0になる世界が訪れた。
3Tと指定がある以上これも「ターン効果」の一環。ディエスイレで対策できると思われたが、スキル研究で対策可能なディエスイレ1つしか策がないのはあまりに恐ろしすぎる。
思い切って出てくる前に3研究。
なおこの後、3研究と1研究でターン短縮幅が変わらないことが判明する。
いつもの悠長さを忘れたのが裏目に出た事例である。
この回にユートゥルナでも研究しておけば少しは安心したかもしれないが、殴り回復ついでに味方からATを奪うあのスキルはこの段階ではまだその牙を潜めていた。
■30:00余談:ゲームの終わりとインフレの果て
「どうやらこのゲームは、本当に当初予告通り36更新で終わるらしい」
そう思ったのが40スキル登場のこの回から効果量が判明する次回にかけてだったことを、なんとなく覚えている。
既に28:00から、見つかった合成アイテムたちはいずれ世界を壊すと言われていた。
MHP強化やMSP強化の活力・体力。それに加えDFやAGまでも伸びる護持や煙霞、これまでも環境の一角を占めてきた強撃や離脱前爆弾のパーツ・道連といった攻撃系付加、そして異常強化の災に狂。
ただでさえ強い付加が、いずれもこれまでで最高峰の強さで登場していたからだ。
適切な材料と知識さえあれば、誰でもそれが使える世界がいずれ来る。
それに加え、公開された40複合スキルには絶対領域に代表される強力無比なスキルが他にも存在していた。
もはやスキルがルールを破壊しに来ている結束、スペシャルタイムやソウルミュージックを擁する響鳴複合のすべてを加速させる歌舞優楽、一度だけならどんな致命傷からでも救命できるレスレクシオン。
結束は公開当初必要EPの記載がなかったため更に騒然となったが、当然過去最高のEP消費を言い渡された。
ゲームには、インフレするから面白いという側面が確実に存在すると思っている。それを使って何をするか以前に、より強い技を、より強い装備を手にすること自体がゲームそのものの一つの目的で楽しみだと。
その強さの果てへ、どうもさしかかっているらしい。新合成アイテムと40スキルは、そう思わせるに十分な存在だった。
■31:00:自然40・解析31・変化35・響鳴35・百薬35
武術-11、解析-9、変化・響鳴-5、百薬+35。
40スキル出現も見届け、ようやく百薬に手を伸ばす。
ワイルドインスティンクトでの離脱前爆弾の強化、エネルジコでの堅実なMHP・MSP増などこれまでの戦術を強化するスキルの他、
パワフルヒール以来の強力な純回復ミリキアレギアによる耐久、
コンテイジョン+肉体変調特性による異常撒布、
アシッドで自分へつけた変調をアンチドート・ソウルミュージックで変換してのAT増強、
ハデスポムグラネイトでの全能力強化と戦術の幅が一気に広がった。
正直もっと早く取っておけば楽になったスキルだらけ。
この頃のボスは推定ステータスが非常に高くなっており、特に高い回避率による戦術崩壊が問題となっていたため、回避低下効果のある盲目を付与できるコンテイジョンはとりわけ活用されていた。
先達ソロ突破者の戦術がすべてコンテイジョンか使役・召喚NPCというボス相手に、どちらも持たない森は完全新規で戦術を考えねばならなかったことを覚えている。
40複合スキル開放により登場した新装備のうちキャンプを離れれば確保が難しくなりそうなものを用意し、百薬複合の習得で以降の突破を目論むボスへの対抗手段を入手し、これですべての準備が整った。
この回、森は9更新ぶりにベースキャンプ外に降り立ち、ゲーム終了まで戻ることはなかった。
■スキル研究:31:00
40複合新規、フォレストオファリング級の効果を持つMHP増スキル。
フォレストオファリングを3研究したように、このスキルも3研究しなければ類似スキル以下の効果にはならない。
このスキルは習得可能になる前からNPCが使用しており、その時から既に効果の大きさには注目されていた。
40複合スキル効果の判明まで、明らかに強いと分かっているスキルを研究した形だ。
■32:00:自然40・解析31・変化35・百薬35・制約40
響鳴-35、制約+40。
登場時から魅力的だった大山鳴動とともに、イディオータやクワシールなどこれまで注目してきたスキルも習得。
体感効果量の高さで知られていた25複合、AT・DX増のドリンカー、4連粗雑撃で攻撃力と弾数を兼ね備えたスキル・ワロップと、同時に取れるものも優秀だ。
大量のトラップの中にも期待したものはあったのだが、やはり実用の機会は訪れなかった。
■スキル研究:32:00
ついに業を煮やしたらしい。
中~終盤にかけては各陣営上位ソロのカラーがはっきり出来ており、対人戦の相手であるイバラシティ陣営側は召喚使い・高速回避型が多かったと記憶している。
ここまでも何度も召喚型ソロと対人戦を行っており、毎回
贖罪山羊回数を消費しきるだけの攻撃回数
ある程度を防がれた上で召喚主を倒しきれるだけの火力増強手段
スキルキャンセルの回避
の3点をいかにして満たすかで頭を悩ませていた。
ここでの贖罪山羊研究はこれを少しでも楽にするためだろう。
また前回で40スキルの効果量が判明し、危険なスキルが研究では対処不能なほど多いと明らかになったのも大きい。
その危険性の質を考えた上で、研究しなくても対処できるもの、研究すれば対処可能になりそうなもの、研究しても使われた段階で大きく不利に傾くものに分類し、研究枠を何に使うか考えなくてはならない。
その時真っ先に対処不要と考えたのは、単純な高火力スキルや圧縮火力の叩き込みを可能にする連続増スキル。
離脱前爆弾としての準備を終えている森なら、それらの高火力を振られた瞬間に爆発して圧倒的高火力を押し付けた上で蘇生できる。
正面からの戦いに強い相手に正面から戦う気でいる必要はない。
この考えで多くのスキルが候補から外れ、もちろん後で泣きを見た。
こうしたスキルは長期戦で撃っても強い。
結局これだけ多数のスキルを覚えても根本的対処が難しかったのが贖罪山羊つきの召喚型で、その難しさがヒーローの段でも語った「召喚される前に倒す」「召喚やビーフを使わせない」以外の手段がほぼないことに起因する状況は全く変わっていなかった。
召喚主を狙う短期決戦にしても爆発するにしても大きな問題は戦闘設定枠や蘇生効果数の関係で弾数が限られることで、伏魔殿で召喚数の制限を解除すればいくらでも壁となるNPCを呼び出せる召喚型とは非常に相性が悪い。
贖罪山羊の研究は、その中で取れる数少ない手段だった。
■33:00:自然40・解析26・変化40・百薬40・制約40
解析-5、変化・百薬+5。
習得数は少ないがいずれも40スキルで、非常に強力なものが揃っている。
どんな方向に強力かといえば、
どんな致命傷でも一度なら救える。
もちろん森にとっては救うものは自分しかおらず、すなわち離脱前爆弾としての残機が増えた。
40複合初出時に私が大喜びしたのは当初予定の百薬経由で大山鳴動を取ればこの2つがついてくるという巡り合わせで、私はそれを離脱前爆弾への呼び声と受け取っていた。
その更新回で心を決め、離脱前爆弾用装備の素材を取引している記録が残っている。
ここから新たなスキルを取得しようとしてもLv15複合に留まるほどしかFPは残っていなかった。
森の戦闘データは、ほぼこの段階で完成したと言っていいだろう。
召喚系スキルなど、取得しても活かせなかったものもたくさんある。
だがそれを補って余りあるほど豊かな戦術が手の内にあった。
序盤を彷彿とさせる回復力とMHP・守護に、ディープフォレストやスペシャルタイム+コンシアンスなど強力な強化を合わせて勝機を作る中長期戦。
中盤からの主力としてきた、先制に追風付加を組み合わせて挑む1T3行動の短期決戦。
そして終盤にスキルと装備を整えたことで可能になった、幾度も蘇っての離脱前爆弾。
森が最終的に可能にしたそれぞれ全く別軸の三戦法は、そのままここまでの歩みを映すようだった。
■スキル研究:33:00
32:00に続き35以下複合のスキルの研究。
29:00にアンチドートによる敗北を喫していることを考えればここでの研究はかなり遅いのだが、このスキルの使い手は多くが回避高速型だった。
命中率というマスクデータに挑むことになる高速回避型はゲームを通して対人戦の脅威で、終盤に至りその強さが極まってきていたため、根本的対処が難しい型としてここでせめてもの研究を入れたものと考えられる。
■34:00:自然40・解析26・変化40・百薬40・制約30・呪術15
制約-10、呪術+15。
データがおおむねの完成を見た以上、ここからの成長はあるかもしれない万一の事態に備えるか、完全に趣味に走るかの二択となる。
どちらに向かったかから言うと前者だ。
開幕から完全な趣味に走った結果初回成長は自然20だったが、あの時とは状況が全く違う。
世界のルールはおおむね解き明かされていて、あとは走り切るだけ。その中なら一つでも有効な手段を拾っておきたい。
ここで趣味に走ったせいで負けたら耐えられない。
ということで選んだ異能は呪術。
同じ蘇生付加の所持者に出会った時の対策となるブロッサムグレイブ、
ATを上げられるより先に撃てれば増加量を落とせるウィザー、
世界に増えていた活力50を離脱時の追い打ちダメージに変換できるデスグラスプと、低Lvから特定状況で使いそうなスキルが揃っていた。
これは「できなかったことができるようになるスキル」の寄り道回収だと言っていい。
その最大の目的は次回にあるので、話はその時に。
何度か出た通り自然を99……までは行かずとも上げられるだけ上げるルートも存在はしたが、そちらは結局私自身の気質と合わなかったため没になっている。
更新の度どんどんスキルを覚え、どんどん新しいことができるようになりたい。
1~5回までを取り扱った記事で触れた傾向は、ここに至っても変わることはなかった。
なお完全に趣味に走った場合に向かうのは幻術、光属性の予定だった。
自然との40複合ベヒルは非常に高い属性攻撃力増効果があり、記念に覚えようと思ったがFPが足りない。それでも覚えようとして手を伸ばした形跡くらいは残しておこうという魂胆だ。
それに、
他の属性を取得していなかった森のスキル欄には、この4つが並ぶことになっただろう。
水と空気、土に光。すなわち植物の成長4要素。
森という植物存在のスキル欄にこれが並ぶのは楽しそうだ。私しか分からなそうな迂遠さだが、自己満足としては十分。
だがすべては実利の前に消えた。
自然幻術複合は30複合でようやく実用性の見えてきた、趣味に走りがちなツリーだったのだ。
記載内容の期待値の低さから30複合が出る頃になっても使用結果がなかった25複合が存在した程度には。
■スキル研究:34:00
グシオンはLv40複合、ハデスポムグラネイトと同じ全能力増加スキルだが「各ステータスについているターン強化が長いほど効果が上昇する」という独特の効果を持つ。
だがこのスキル、実使用により特に何も強化がなくても高い上昇幅を誇ることが明らかになった。
HP満タンまで回復すればおまけに守護・祝福がついてくる上、百薬単系40と条件が軽く比較的習得者の多いスレーン共々研究しておく。
31:00にベースキャンプ外へ出たことにより、対人戦マッチング相手は同時にキャンプを出た強者たちに限られた。
この辺りの研究は彼らの持つスキルを強く意識した記憶があるが、どれほど効果があったのだろうとも思う。
強者たちは大抵この終盤まで大量のFPを残しており、次々に新しいスキルを大量に習得して新戦術を可能にしていったからだ。
■34:00余談:ついにできるようにならなかったこと、あるいは地属性に欠けていたもの
この時点からは、残りCPでできることを増やすために可能な限り動いたつもりだ。だがそれでも、ついにできなかったこともある。
その一つが、スキル面からの回避型への対処。
何度か言った通り森は29:00、高速回避型の相手に敗北を喫している。
一撃必殺となるまで威力を高めることはできた。だがついに、回避力と紙一重を超えることができなかったのだ。
その敗北結果を精査して、一つ奇妙なことに気づいたのを覚えている。
「クリエイト:キャノンなど粗雑攻撃の命中率は極端に下がっているが、粗雑でない通常攻撃はそれなりに命中している」
ゲーム序盤、古くは5複合の頃から、このゲームの粗雑撃は粗雑と言われながらさほど命中率が低くはないことが体感的に知られていた。
それとともにこの結果から「粗雑撃とは回避されやすい攻撃というより、相手の回避率の影響を受けやすい攻撃なのでは?」という疑問を抱いた。
といっても、その時の戦闘を見てだけの話だ。
ただでさえ数値として現れない部分を小規模な試行結果で語るのはよくない。特にその戦闘では粗雑撃が主体で通常攻撃のサンプル数が少なかったため、この話は広めるまでもないと判断していた。
だが次に高速回避型とマッチングした際、最終的に頼ったのはその仮説。
すなわち粗雑ではないが、できるだけ威力のある攻撃ならば命中力と攻撃力を両立できるのではないか。
このゲームの属性特性には攻撃力だけではなく命中率増もあると知られていたため、持ち出すスキルは属性のついているものがいい。
森が最も長ける属性とは、もちろん地属性だ。
粗雑でない地属性で、なかなかの攻撃力があるスキル。粗雑でなければデメリットがついていてもいい。
ない。
火のスヴィニール、水のアルヒェ、風のダストデビル、闇のモルダー。いずれもデメリットとともに非粗雑の強力な攻撃を繰り出すスキルだ。
そういうものが地にはない。この属性の火力は命中率を犠牲にすることしか考えていない。少なくとも森の覚えていたスキルは全部そうだ。
単系に自己攻撃属性変化スキルがあるせいか全体的に攻撃が貧弱とは知られていたが、まさかここまでとは。
最終的に選ばれたスキルは、クリエイト:ジャイアントフィスト。
このスキルの威力はハードブレイク以下だった。
どうしてきみは命中以外を犠牲にしてくれなかったのか?
そう嘆きながら私は泣く泣く拳を握り、できる限りの戦術とともに振り抜いた。
あの時ほど、どれだけ取得計画を練ろうとスキルプールそのものによる限界があると思い知ったことはなかった。
■35:00:自然40・解析26・変化40・百薬40・制約25・呪術25
制約-5、呪術+10。
呪術へ進んだ最大の理由は、この回で習得できるキャリオンが最終回での使用に間に合うことだった。
条件つきではあるが、MHPを奪取して自分のものにできる。
31:00でボスステータスの大幅な上昇について話したが、それはマスクデータの他、表示されているMHP・MSPも例に漏れない。
終盤ではPT人数に合わせ出現数が増減するものでもMHP6桁が当たり前、出現数完全固定の単独ボスなら7桁に達した。
キャリオンなどが奪うのはMHPのほんの数%だが、そんな環境下ならその数%が5~6桁になる。
ソロでの、特に出現数完全固定の単独ボス撃破においてはまずMHPを奪取して大幅な生存力向上を図るのが定石の一つとなっていた。
だがそうして倒すべきボスを、森はもう倒してしまっていた。
だからあくまでキャリオンは最終回に間に合えばよかった。
呪術へ進むことを決めたタイミングでは、最終回に何かストーリー上の新展開や大きな戦闘があるかもしれないと考えていたのだ。
対人戦では再戦となる対戦カードが時折発生しており、以前の勝敗による因縁や個人ストーリーの進行による変化を、傍から見ているだけでも心躍るような形で演出に取り入れたキャラクターは多かった。
それを見ているとどうしても考えざるを得なかったのだ。
例えばイバラシティ陣営とアンジニティ陣営が共通の敵を得て最終回限り肩を並べるような、そんな呉越同舟が発生しないだろうかと。
もちろんそれは2陣営による対抗戦という騒乱イバラシティの趣旨を根底から覆すものだが、王道にして熱い展開には違いない。
それにこれまでの同作者のゲームでは、最後に全参加者で挑むレイドボスが現れる展開も実際にあったと聞いていた。
呪術ひいてはキャリオンを取る。それは一抹の望みとその対策だった。
懸念材料は、通常のものを遥かに超える特殊なボスが中盤から既に現れていたこと。
マップの各地に点在する少女は8桁の圧倒的なMHPを始め、戦闘結果内のセリフからシステムメッセージまでがところどころ別の文字に置き換わるなどの戦闘演出に至るまですべてが別格かつ特殊な存在だった。
結論からすればこの懸念は当たっていて、レイドボスも共闘の機会もついに実現することはなかった。
ハザマの36時間は、イバラシティ陣営とアンジニティ陣営の戦いという構図を崩すことなく終わる。
この最終盤の森の呪術を上げる成長は、まだそこに夢を見られていた頃を残す証拠だ。
■スキル研究:35:00
これも34:00同様、近隣にいた高速回避型の強者への対策。
ここまで研究してこなかったのは、研究してどれほど効果があるのか全くわからなかったからの一言に尽きる。
たまに発動すること以外性質がほぼわからないので、使うには頼りないが相手にすると面倒この上ない。そんな印象が終始抜けないスキルだった。
まさにこの研究をした直後、最終回の対人戦予告がまさにその高速回避型の強者だったが、この研究がどれほど効いたのか今でもよく分かっていない。
■35:00余談:臆病者とロングゲーム
私の知る限りこのゲームでは高速回避型の相手に対して、一般的には短期決戦を仕掛けるべきだと言われていた。
1ターン内に使うスキル数や行動数に比例する必殺スキル強化幅で有利を作る高速型と他の型の差は、ターンを増すごとに開いていく。
だからこそ、相手が行動を重ね準備を終えるより前に倒してしまうことが肝要だと。
ある程度戦法を選べるようになった中盤以降、森が高速回避型と戦ったのは4回。
実用に足る回復スキルを持てなかった1回の他は、いずれもすべて潮流に逆らう中長期戦を挑んだ。
回復や中長期戦を可能にするスキルが研究されていなかった。あるいはうまく計画を立て、それらを習得できていた。それもある。
だがそれだけなら、それと同程度に短期決戦のためのスキルも揃っていたはずだった。
理由は単純。
短期決戦の弾数の少なさが、私はずっと怖かった。
森が速攻を挑んでいたのは高速回避型ではなく、召喚型。
MHP・MSPは伸ばしている場合が多いが、回避でダメージ総計がブレることはさほど気にしなくていい。
だがそれでもスキルキャンセルを通してしまえば計画が大きく狂い、相手を倒すなど到底見込めなくなる。
翻って回避型はどうだろう?
速攻を挑んでも基本の回避率が高いのは変わらず、キャンセルがなくても回避だけで計画を狂わせてくる可能性が常にある。
私はこの可能性に耐えられなかったし、その上で勝率を高める計算ができるようなプレイヤーでもなかった。
あれほど勇んで習得した大崩壊も、結局一度も実用していない。
複数回のチャンスに確率発動する加速付加よりも、たった一回ではあるが確実に発動する追風付加によって速攻戦を挑んだ。
一貫して私は、ランダム性を取り扱うのが非常に苦手だった。
ただでさえ回避に長ける相手にギリギリの弾数で挑む賭けと、20発のうち1発でも当てれば勝てる状況を作るためより強大になる相手を見逃すという賭け。
私にとって速攻と中長期戦の2択はそう見えていて、私に前者を選ぶ勇気はとてもなかった。
こうして振り返ってみて、私が欲しかったのはきっと余裕だったのだろうと思う。
どんな相手と戦うことになっても、どんな戦法がしたくなっても対応できるよう、本命のスキル習得を遅らせてでも寄り道するのも。
どれだけ回避されようとただ一発で勝負を決められる攻撃力を得るために、長期戦から過剰なまでに強化を積み上げるのも。
根底にあるものは共通していて、ただただ不安が強く臆病だというだけだ。
セオリーを無視する方がより分の悪い賭けに、それを幾度も持ち出す様子が蛮勇や豪胆に見えることもあったかもしれない。
だが一貫して、あの戦い方を選んだのは臆病さ故だったと私自身はずっと思っている。
■36:00:自然40・解析26・変化40・百薬40・制約20・呪術35
制約-5、呪術+10。
ペトリフィケーションは他に類を見ない石化付与スキルで、35スキル公開時の目玉として色めき立ったが、これだけで生かすには心もとなくここまで習得には至らなかったもの。
蘇生対策となるメメントモリ、強力な殴り回復インソウルと、万一37更新以降があっても無駄にならないよう計画を立てていた。
全く触れなかったツリーは魔術・幻術・使役の3つ、触れたものはすべてLv20以上。
最終スキル習得数は372。
有志の集計によればなかなか多い方だったようで、集計がされているとも思っていなかった私は、その集計結果上位に森の名前を見つけてなお驚いたことを覚えている。
この回、スキル研究は行っていない。
研究が効果を発揮する対人戦は、この回をもって終了した。
■おわりに
こんなに長大な怪文書を読んでくれてありがとう。
まず申し上げたいのはそれだ。
だが、お礼の相手はこの記事の読み手だけに留まらない。
この一回一回の異能習得と研究内容を最終的に決断したのは自分だが、そこに至るまでには様々な人が関わっている。
異能習得や移動ルート決定に際しアドバイスをくれた人、同行・取引などデータ的に関わってくれた人、ツールや情報、交流の場を広く提供してくれた人など、多くの人のお世話になって初めてこの決定のすべては成り立った。
結果で使用された技や戦法を参考にしたり、戦闘演出・イバラシティチャットなどを見て一方的に知っていた人まで含めれば、その数は到底数えきれないほどになる。
それに、その当時に誰かが記録してくれたWikiなどのデータがなければ後世からこのように振り返ることはできなかっただろう。
そうしたすべての人々にもまた、同じようにお礼を申し上げたい。
そしてその一人一人も同様に、騒乱イバラシティというゲームを通じて様々な人との関わりを持っていたことだろう。
そうした参加者の一人一人の繋がり、そしてその発生源となる運営の栗鼠さんが作っていた世界そのものにも、私は感謝の言葉をお伝えしたい。
私があのゲームの中で感じたすべては、それなくしてはなかったものだから。
36:00の更新をもってゲーム部分は終了し、同時にアンジニティ陣営の勝利によりワールドスワップが成就すること、その施行が120日後の年末となることが伝えられた。
だがイバラシティとハザマで姿や記憶に違いがあるキャラクターは果たしてどちらに統合されるのか。ワールドスワップ後、イバラシティはどのような経過をたどるのか。
そうした設定に関する多くの部分は明言されないまま、日記の更新のみが行われる37:00の存在だけが告知された。
悩んだものの、私はこれを解釈の自由と受け取った。
元々明言されていない部分は多くあり、その設定の隙間の解釈は各プレイヤーの手に委ねられる。
他のプレイヤーの解釈とは矛盾してしまうかもしれないが、それでも森の日記の中では私の解釈を通すことにした。
結果として、ワールドスワップによってイバラシティに現れた森はハザマで過ごした記憶を持っていない。だが、完全に忘れ去ったわけでもない。
あの36時間の戦いは見知らぬ記憶や感情の奇妙なフラッシュバックとして、森が生き続ける限りその目の前に現れるだろう。
森にとって、あの36時間とはそういうものだ。
しかし私にとってあの2年近い日々は、今なおこれほど多くを語れる豊かな思い出として胸に残り続けている。