備忘📝　葬送のフリーレンを通して感じた、時代の転換期をしなやかに生きる方法

『薬屋のひとりごと』とあわせて
#あわ研 のちあきさんから
薦めていただいていた
アニメ『葬送のフリーレン』

少しずつ観ていたが、
ひと段落してしまった為
感想或いは連想を綴ってみる。


※以降、概要レベルのネタバレ含む。

アニメ『葬送のフリーレン』公式サイト

これまでの冒険モノと違い、
叫び声や、デュクシ！などの効果音は少なく
終始トーンは低め。

且つ、主人公は勇者でなく、
エルフの魔法使いである。

更にいうと、

1000年生きるフリーレンなので
1話1話で強くなったり、魔法を覚えたりする急成長のストーリーがみられる
というよりも

人間の魔法使いの弟子である
フェルンの成長

それも、
コミュニケーションの中での
パーティの関係性の変化を
生暖かく見守る様子の
記録という色が強い。

フリーレンを通して、わたし達は
時代の転換期を柔軟に
且つ自らの意思を持って生きる姿勢について
観察することが出来る。

いくつかの視点から述べてみる。

⬛︎縦の旅、脱成長の旅

横の旅でなく、縦の旅。
コロナ禍によく出てきたワードだ。

場所を移動する横の旅だけでなく、
同じ場所を共に生きる人間を知る
縦の旅の豊かさ。

これに近いものが
フリーレンでもベースとなっている。

そもそもの物語のスタートが、
魔王を倒した後の展開というところ。


魔王を倒した勇者一行の
旅の間の楽しい思い出やゆるい対話シーンも
多く散りばめられている。


また、
魔王を倒して平和になったはずの世界で
フリーレンが新たに始める旅も、

クリティカルな問題解決ではなく、それぞれの内省、自分で設定したテーマの旅なのである。

他者から与えられた命題でなく、
自分がどうなりたいか？を探すのは
現代的ともいえる。

物語の中で
一級魔法使いの試験を描くシーンがある。

そこで、試験官であるゼンゼが用意した
難攻不落のダンジョンの試験があり、

そのダンジョンを進んで行こうとすると
それぞれの複製体が敵として立ちはだかる。

ようは自分のコピーと戦わねばならないのだ。

まるでそれは、
「成長」というテーマについて
我々に問うようだ。


昨今、
「脱成長」が引用される機会が増えている。


「他人と比べる」の後、さらに
「昨日の自分を超える」の後の世界。

昨日の自分を超え続けることへの限界
についてのアンサーとして、

周りの人と力を合わせて
弱みを補えばいいのでは

という考え方である。

ゼンゼのダンジョンで現れる、
複製体の自分を倒すのは
成長した自分ではなく

自分の弱みを分かち合った仲間と
徒党を組んで練り込まれた作戦なのだ。

個人の成長ストーリーの先にある課題は
他者とどう生きるか、なのかもしれない。

⬛︎アンチ権威主義と生涯学習

魔法使いにも歴史がある。

フリーレンよりも長く生きる伝説の魔法使い
ゼーリエは強さ優位、特権優位で生きている。

「魔王を倒す」ことの威力、
謂わばブランド価値を手に入れるために
貪欲になるべきだ、とも。

魔法は選ばれしエリートのみが持つものであり
そうなるために強さを磨き続けるべきと。

他人となのか、過去の自分となのか
勝つことで前に進む成長主義でもある。


そんなゼーリエの弟子であり
フリーレンの師匠である、フランメは
時代を変えていく価値観を自らの中に
醸成していた。
それも短い一生の中で。


フランメの欲した魔法は、人々の心に
平和をもたらす、お花畑をつくる魔法。

そんな師匠の信念で育ったフリーレンにとって
魔法は平和な世の中を実現するための道具
にすぎない。

或いは、人生において学び続ける楽しみ、
趣味の存在でもある。

そんなフリーレンだからこそ、
勇者一行とのコミュニケーションをとりながら
自分の強さのためでなく、
みんなの平和のために魔王を倒せた。

これは、現代社会で例えると、
権威主義へのアンチテーゼでもあり、
脱成長とも繋がり、
生涯学習や仲間との学びの物語でもある。

「魔法が誰にでも使える時代へ」

という台詞もでてくるが、
メタファーとしての魔法は
デジタル技術や科学技術のようでもあるし
教育、アートともとれる。

フリーレンの師匠の魔法、
「花畑をつくる魔法」は示唆深いものがある。
(個人的には、花大好き民で毎週買って生けているくらいなので、1番欲しい魔法である)

⬛︎言語化してコミュニケーションをとることの重要性

戦闘シーンにおいての
主人公フリーレンと弟子フェルンの姿勢も
興味深い。


特徴として、

•耐久力(スタミナ)
•シンプル
•ロジカル

現代社会でいうと、
いろんな言い回しは知っているけれど

難しい言葉を極力避ける話者のような
辛抱強く対話を重ねる対話のような

そんなスタイルの魔法使いである。

ただし、
自分達の暮らしを豊かにする
知的好奇心を満たすために
魔法書は常に探している。

(現代社会でいうと、
新たな知識、概念、ワード等)


新たに得た魔法は
戦闘で使われることはほとんどない。

ただ、
シンプルな反復練習を重ねて
強くなっていく
みたいなスタミナ勝負には
昭和の時代の筋肉体質を若干感じる。

そして、

戦闘シーンで喋りや心理解説が多いのは
日本のお家芸なのかもしれない。
(某人型ロボットアニメから、某人気鬼系アニメ、某国民的スポーツ漫画しかり。)

⬛︎孤独との向き合い方

1000年生きるフリーレンは孤独である。

自分を育ててくれた師匠、
一緒に旅をした仲間はいずれ、
人間なので100年も生きることなく
自分をおいて先に逝ってしまう。

孤独であるが、
思い出があれば生きていける。


勇者ヒンメル達との旅の思い出は
フリーレンにとって短い一瞬の出来事では
あったけれど、

確かに存在する思い出である。

会えなくても思う人がいることで
前を向いて生きていける。

思い出をつくるために
生きているのかもしれない、

フリーレンをみていると
孤独やさみしさとの向き合い方も
ヒントになるのかもしれない。

⬛︎いまそこにないものを生み出すために必要なもの

最後に、
"切る"能力に長けた、魔法使いのユーベルが
何度も語った

「切れると思えば、なんでも魔法で切ることができる」
「イメージ出来ないものは実現できない」

という台詞も自分は好きだ。

感覚で生きる彼女の強さには
共感できるところがある。
(自分も妄想から何かをつくりだしたい
とパワーを得て動くタイプであるから)

昭和と令和でタイムスリップする
『不適切にも程がある』のドラマで
昭和の人間が令和をみつめたときに

「なんじゃこりゃ」というツールが
一気に増えたのは
クリエイター達のイメージの実現が
あったからではないのか。

さらに、
ユーベルは
「人の魔法も、イメージできれば模倣して
修得できる」
という能力がある。

そして、
「その魔法には、その人らしさや、その人のルーツが込められている。魔法を通して、その人を知りたい」
という。

これはもうアート視点での語り口である。
("WHERE"の問いで、ルーツを知っていくことの取り組み方にも、共感できる)

アマプラで観てきた、
『葬送のフリーレン』だが、

観る人によって、

どのキャラのどんな部分が好きか？
共感できるか？
聴けたら楽しそうだな、と思った。

ネタバレ含むと書きながらも
読んでくださった未視聴の方も
既にご覧になっている方も
ぜひお聞かせいただけたら、嬉しい。