備忘📝　ジャズライブを通して思ったバンドのメタファー

夢のように、
書き留めておかねば
実際に起きたことでも忘れていってしまう。

尻尾をつかんでおけるよう。
備忘のため
抽象度高めの随筆を書いてみる。

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昨年末のこと。


父の友人がお店を始めた、ときいていた。

いつかお邪魔したい、と言いながら、
1月の父の七回忌の連絡とともに
お店はどうですかと聞いてみると、
なんと年内で畳まれると。

急ぎ、お伺いする日を決めようと
やり取りしていたところ、
クリスマス前に、父にサックスを教えて
くれていた先生のライブがある、と
教えてもらった。

これ以上の日はない、と
その日の午後の仕事を調整した。

当日、迫り来る寒波で
懐手に肩を縮こまらせながら、
イルミネーションで光る
御堂筋を横断し、お店へと向かう。

少し腹を空かせながら、
地下にある店舗へと下る階段をおりた。
演者さんだろうか、ガラス窓の向こうで
パスタを食べるのが見え、
何か食べながら観たくなった。

店に入り、細長い通路をずっと奥に進むと、
開けたステージホールが現れる。

ステージの中央に、銀色に光るサックス。
綺麗だ。

お通夜とお葬式の間、檀の中央にずっと
父のサックスをオブジェのように
中心に置いていたことを思い出した。

ライブが始まる前に、
店のマスターである父の友人に挨拶と
手土産を渡し、ハイボールを1杯と枝豆を頼み、席に座る。

開演前、その夜の指揮者的立ち位置でもあり
コンサートマスターでもある
先生が現れる。
先生のお孫さんも来ておられるようで、
会場は和やかな空気に包まれる。


先生の容姿は、雰囲気でいうと、
ストーンズのキースみたいな感じ。

枝豆も程々につまみ、
ハイボールも半分くらいのところで
ライブが始まる。


1曲ずつリズム隊以外の
バンド編成が変わるジャズセッションで、
曲はサックスやボーカルが持ち込む形。

季節的なものもあり、
一晩で3回も『枯葉（原題：Les Feuilles mortes／英語題：Autumn Leaves）』を聴く夜となった。

シャンソンのフランス語が心地よい。

人気曲であるし、3回も演奏されるので
バンドの完成度も高く、グルーブ感もあがる。

クリスマス前なので
クリスマスナンバーを持ち込まれる方も。

熟練でパワフルな音を叩き出すドラム
お洒落に踊りまわるようなベース
ファンクなエレキギターが
ステージを支えながら
会場は熱を帯びていた。


そんな中、一味変わった楽曲も。

ライブも後半にさしかかった頃、
韓国の男性の演奏者がステージに現れた。
先生へのお礼の挨拶と感謝を延べ、
久々の日本での演奏ということで
バンドメンバーとも演奏前に声を掛け合う。


「韓国の曲なんですが…」
と曲名を聴いても、
メンバーは誰もわからず楽譜もない。
「コードは？」の質問に
「Gマイナーから」というところで
とりあえず始めてみましょう、と進行する。

いざ韓国人のサックス奏者が吹き始めると、
やはり、みんな聴き馴染みがない曲。
聴いた感じだとバラードのよう。

勝手に曲名をつけるならば、『郷愁』。


青いライトを浴びながら、
サックスでしっとり吹きあげられる『郷愁』。


ふと、バンドメンバーをみてみる。


ドラムはというと、
自信満々にシンバルなどで雰囲気を出す。
合っているかは、わからない。

そもそもサビがどこで来るかがわからず、
ここからテンポが変わるか、或いは変わらないのかもわからない。

曲の終わるタイミングもわからない。
しかし、粘り強く伴奏を続ける。

ギターはというと、
いい感じのジプシー感を演出している。

サックスを立てながらも
どこで盛り上がっても対応できそうな
ブルージーな音色。
かっこいい。


ベースはというと、

目をキョロキョロしながら指を弦に
つけるかつけぬかを繰り返している。

恐らく音は発している筈。
先ほど枯葉で聴こえたお洒落音は聴こえない。
否、微かに聴こえるような聴こえぬような。

ああ、

いまわたしはあなたと心を隣にしている…。



曲は、波が引くように終わっていった。


バンドのメタファーを思った。

・みんながそれぞれつくった音が正解。

・メンバーが変われば別のものが出来上がる。
或いは、どんな曲を演奏するかもでも
そのバンドのグルーブが変わる。

・一度始まったステージは全員で全力でいいものにするしかない、誰が良い悪いはない。

・ステージ上では迷ってはいけない。

生演奏が良いし、
ジャズセッションが良い。

その場にしか生まれないもの。

2023年9月の村上RADIOで紹介されていた
エリック・ドルフィーの言葉を思い出した。

村上RADIO - TOKYO FM 80.0MHz - 村上春樹

「音楽を聴いていてそれが終わったとき、その音楽は宙に消えてしまう、もう2度とそれを捕まえることはできない」

とても楽しいライブだった。

またジャズセッションを聴きにいきたいし
自分もいつかベースをバンドで弾きたいと思った。



最後に
ジャズバンドメタファーで、もう一つ。


リズム隊の報われなさ問題について。
(わたしもベーシストの卵として、そちら側での目線)

みんなサックスやボーカルのソロの後
盛大に拍手をするんですが、

リズム隊のソロの後も
拍手しようよ！
めっちゃかっこよかったじゃん！

いつだってそう。
音が大きく目立って、メロディアスで
共感されやすい方が
チヤホヤされるんだ。
…と、

ベース、ドラムとリズム隊に
シンパシーを感じつつ。

それでも、
俺が主役だぜ感をバシバシ出して叩く
ドラムがかっこよかったな、
と思った夜でした。
(完全なる主観の話。自分はベースばかりをみて、すごいなぁって思っていました。)

では、また。