愚痴
自分は傷ついてたんだって気づいてしまったらそのあとしばらくずっと苦しいって話
母はよくキツめの冗談を言う人で、でもまあそれなりに妥当な評価としての悪口とか、実際にある程度納得のいくラインのブラックジョークを言う。
その中で、私に対して「禁治産者」とよく冗談で呼称する。以下のような例で使う。
「いくらちょっと振り込んできてもらうだけとはいえ、あんたに大きなお金持たせるの不安だねぇ、あんたなんて禁治産者みたいなもんなんだから」「世が世ながらあんた禁治産者として座敷牢だよ、今の時代でよかったね」
禁治産者とは平成12年に使われなくなった民法の言葉である。今は「成年後見人制度」に取って代わられた。
「財産を治めることを禁じられた者」と書くとおり、精神障害や知的障害、認知症などによって、自らの財産を扱う権利そのものを禁じられた者を指す。認知症の老人が勝手に買った高額物品って、契約解除できるでしょ? あれは認知症老人が常に心神喪失の状況にあると解されるからなんですね。裁判所に申し立てて後見人を立てて、そうすると被成年後見人として扱われます。そういう手続きです。
要は母の言いたいことは「あんたはお金を管理する能力の無い障害者」というジョークなのだ。実際に母の金を行かない大学の学費に溶かした身としては、まあそれなりに耳が痛いし妥当だなと思ってきた。金銭管理能力、無いし。あと、語感がなんかいいから、私もなんとなく気に入っている言い回しだった。
けど、まあ実質は「知的障害者」って言われてるのと同義でもあるんだよな。というか、そう解釈するほうが普通だよな。なんかふと、気づいてしまったんだよな、その言葉の、無邪気な悪意のキツさに。
しばらく「思い出し傷つき」してた。なんも考えない瞬間にふと「傷ついたこと」そのものを思い出して反芻しちゃう。涙と苛立ちが体の中に充満して逃げ場が無くなる。思い出さなきゃいいのに。でも何度も思い返してしまう。記憶は反芻し続けると、だんだん味のしないガムになるから。新鮮に傷付かなくなるまでは「思い出し傷つき」をし続けるしか方法はない。
信頼できる人にそのはなしをして、少し心が軽くなって、反芻するタイミングがずっと減った。医師にも話して、次回からカウンセリングを受けることになった。明日が初回だ。
と、ここまではよかった。
だが、だんだん自分の感情が暴走を起こしている。
母に嫌悪感が湧いて制御が効かなくなって、避けるように動いてる。でも妹が頑張って仲を取り持とうとしてくれてて、でもそれもめちゃくちゃウザく感じてしまう。そういう時、感情が全て制御できなくて、頭の中がいっぱいになって、怒鳴りそうになったり嫌味や悪口や攻撃をたくさん口走りたくなる。でもそんなことはしたくない。自室に自主隔離して、「今近寄らないで、放っておいて」って宣言する。なのに、母が心配して「どうしたんでちゅか、機嫌悪いの〜? ケーキあるよほら〜」って話しかけてくるのがイライラする。怒鳴り散らしたくなる。怒鳴り散らす自分は嫌いだからやりたくない。頭の中はぐるぐると罵倒と自己嫌悪が回って、こんなに苛立つ自分の頭のキチガイさに愕然とする。
この文章は私が書いてるからまるで母が極悪人みたいな文章だけど、実際は私がただ癇癪を起こしてるだけ。ただ意味もなく怒りを頭の中に渦巻かせて、それで心身の体調を崩してるだけ。
母はよく「あんたは体だけは丈夫に産んだんだから。五体満足で大病もしない、丈夫な体に」と言う。そこは感謝だ(その後に「なのになんでこうなっちゃったかねぇ」は余計だが)。だが、最近ストレスで胃が痛くなったりする。どれだけストレスがかかっても身体に影響は出づらかったのに。
文章の〆を特に思いつかないのでここで終わる。