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BioMarin $BMRN に何が起こっているのか?
こんにちは、ぴたごららです。さて、今回はお試しバイオ銘柄として先日購入したBioMarin $BMRN について考察してみました。
Disclaimer:
本内容は非専門家である私がニュース記事等をまとめたもので、内容の正確性や、専門用語が正しく使われているかなどは保証できません。正確な内容に関しては原文をあたってください。本内容、またそれに基づいた投資判断につき、私はいかなる責任も取れません。
また、本記事は特定の医薬品の使用を推奨するものでもありません。
TL;DR
企業の価値に対して現状売られすぎなのでは?
BioMarinの会社概要
以下、wikipediaからの抜粋・意訳です。
BioMarin Pharmaceutical Inc.(BioMarin)は、カリフォルニア州に本社を置くアメリカのバイオテックです。BioMarinの中核事業は酵素補充療法で、ムコ多糖症I型の治療薬(ALDURAZYME)を開発した最初の企業です。
彼らのフォーカスとしては希少疾患の治療薬が多くを占めていて、現在開発中で有望視かつ大型化が期待されているのは血友病Aに対する治療薬valoctocogene roxaparvovec、通称Valroxです。この薬剤はモダリティ(治療手段)で言うと遺伝子治療というカテゴリにあり、承認されている薬剤としては比較的新しいモダリティになります。技術としての先行品としてはZOLGENSMA (Novartis)などがそれにあたるでしょうか。
血友病の病態や治療法などはタケダが提供している以下のサイトに詳しく、遺伝子治療についても言及されています。まだ承認される前から「完全な治癒ではありません」などと後ろ向きにコメントしているのは、そもそもタケダが買収したShireの主力製品が血友病治療薬群であり、そのシェアを取られたくないという気持ちが前面に出過ぎているような気がしますが…
あと、タケダに関しては「武田薬品の将来を考える会」という株主OBがサイトを立ち上げており、とくにShire買収に関して激おこです。血友病に関してもHEMLIBRA(Roche)が承認されたけどどうするんじゃ、というランボー怒りの声明文を出していますし、その中で遺伝子治療の将来性についても少し触れられています。以下抜粋。
ヘムライブラは自己注射が可能な皮下注射製剤で、FDAは1週間に1回、2週間に1回、さらに4週間に1回の治療を承認しました。
患者さんにとって1週間に3回から4回通院して静脈注射を受けなければならないシャイアー製品との差別化は明白です。ヘムライブラの販売が米国市場で本格化すれば、シャイアーが多大な損失を被ることは確実です。
詳しくは触れませんが、Valroxに関しては”once and done”、すなわち1回での治療完遂(これを完全な治癒と言うかはわかりません)をコンセプトとしていて、上述の「考える会」のロジックに則ればShire社製品だけでなくHEMLIBRAとも差別化ができる、という理屈にはなります。
株価下落の理由
BioMarinの直近1年のチャートは以下です。2020年7月半ばに最高値の130ドルを記録しましたが、同年8月中旬に一気に70ドル付近まで下落しています。
要因としては承認申請中だったValroxに対し、アメリカ食品医薬品局(FDA:厚生労働省のアメリカ版のような機関)が承認できないと通知したからです。
プレスリリースの中で個人的に気になるポイントを以下意訳込みで抜き出します。
・FDAが急に2年間にわたる治験の追跡データがないと承認できないと言ってきた。
・これまでのやり取りの中でそのような話はなく、寝耳に水。
・BioMarinとしては諦めない。FDAが要求しているデータは2021年11月に集まる。
下落幅は妥当か
上記のネガティブ・サプライズを受け、BioMarinは時価総額にして75億ドル相当がふっ飛んだわけですが、果たしてこの市場評価は適切なのでしょうか。以下のレポートではValroxの売り上げ予測をどれだけ高く見積もっても製品としての価値は75億ドルに届かず、すなわち売られすぎでは、と言う考察がなされています。
バイオテック自体が夢で夢を買っているようなものなので、株価に妥当な理由をつけるのも難しいと思いますが、少なくとも市場がValroxを完全に見限ったと解釈しないとこの下げ幅は説明がつかなさそうです。
想定されるシナリオとリスク
では本当にValroxは死んだのでしょうか。ここからはさらに推測、邪推を含むので話半分で聞いていただければと思うのですが、個人的にはNoだと思っています。確かに今回の非承認通知はネガティブですが、BioMarinの言い分は理解できますし、その場合他社競合品に関しても等しく似たようなハードル(つまり治験における2年間の追跡)が課せられるのでは、というのが個人的な予想です。この仮説が正しいとするとValroxは死んでおらず、血友病に対する遺伝子治療の導入自体が全体として(Valrox以外の競合品も含めて)数年遅れるだけでは、という見立てです。当然遅れることにインパクトはあります。
ポジティブに考えている点としては、①たとえ有効性が多少落ちるとしても、現行の治療法に対する優位性は保たれている、②Adcom (advisory committee)が開かれていない、などです。順に説明していきます。
まず①ですが、今回のFDAの決定につながった議論はValroxの有効性が長期的にみると落ちるのでは、という懸念のようです。私は専門家ではないので数値の解釈などはできないのですが、確かに落ちているようにみえます。
一方で、仮に長期での有効性が保たれなかったにしても裏を返せば1年ぐらい、あるいはそれ以上"once and durable"だったわけで、現行のHEMLIBRAよりも利便性という観点では優位だと解釈できそうです。
競合として後を追うのはPfizer $PFE / Sangamo $SGMOの連合と、Spark Therapeuticsを買収したRoche $RHHBYとのことで、メガファーマに追われている状況は怖いですがPfizer/Sangamoに関しても長期では有効性が落ちるのでは、という指摘があるようです。どっこいどっこいなのでは?
次に②ですが、adcomに関しては以下の記事が詳しいです。
これが開催されていないということは、FDAとしても外部委員会を巻き込んでまでの議論は不要と判断した、つまり、それこそ安全性も含めてデータに対する疑義があまりなかったと受け取れます。とはいえ最終的に非承認に至ったわけですから、なんとも言えないところですが…
その他にもValroxはFDAから画期的治療薬指定(breakthrough therapy designation)を受けているとか、もしVarloxだけでなく血友病における遺伝子治療の導入自体が年単位で遅れるという話であればBioMarinにとっての製造・流通などの準備期間とも好意的に受け取れないか、などもいろいろ考えます。
良くないシナリオとしてはPfizer/Sangamoに追い抜かれるとか、FDAの非承認理由が他にもあったことが今後明らかになる、とかでしょうか。少し古いですが、企業のプレスリリースも鵜呑みにできないよ、というリサーチもあります。
あと、希少疾患に取り組んでいるわりにあまり会社として好感を持たれていないかもしれません。Wikipediaにも"controversies"という項目が立てられていて、言いがかりのようなものも含めていろいろ書かれています。面白いのでご一読をおすすめします。
さて、今後どうなっていくか気長に待ちたいと思います。Gileadみたいな太っ腹が会社ごと巨額買収してくれないかな…
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