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「洞窟の奥はお子様ランチ…」 「はい?」 被害者の机を調べていた紗英さんが発した不可解な言葉に聞き返す。 紗英さんと僕は殺人事件の調査のため二人目の被害者、豊中康介氏の自宅を捜索している。 一月ほど前に最初の被害者である冒険家、桃山敬之氏が何者かに毒殺された。 その犯人の目星もつかない中、同じく冒険家の豊中氏が毒に侵されて倒れた。 幸い豊中氏は発見が早かったため一命をとりとめたものの、いつ意識が戻るかが分からない状態。 有名冒険家2名が相次いで毒に倒れるというセンセー
『フハハハ、貴様ら全員生ける屍になるがよいわ!』 2月14日、バレンタインデーの18時を過ぎた頃。 恋人たちが愛の言葉を交わすその裏側で、恐るべき呪いがばらまかれた。 ある悪魔が生み出したその呪いは各地に潜む悪魔崇拝者たちのもとへと届き、彼らを甘い香りで惑わせる。 虜になってしまった崇拝者たちは理性を奪われ、本能のままに動く生ける屍へと変わってしまった。 そうして生まれた数万におよぶ呪われた崇拝者たちは、バレンタインの賑わいに導かれるように街へと歩き始める。 「えー、
『接続エラー発生』 気がつくとユミは道端に座り込んでおり、手に持ったスマホにはエラーメッセージが表示されていた。 「イゴーロ」との接続が不安定になり、その影響で座り込んでしまったらしい。 『至急再接続してください』 繰り返しメッセージが表示されるが、やり方も分からない。 ふらつきながらどうにか立ち上がり、近くのベンチに腰掛けた。 身体を自分で動かすのも随分ひさしぶりだ。 イゴーロを装着して以来、これまで意識して身体を操作する必要がなかった。 イゴーロは数年前に各通
もしあの時引き返していたら…いや、結果は同じだっただろうな。 「鬼には神通力があったとか、心を読む力があったとか。 ただ暴れるだけではない話もたくさん残っているのよ」 助手席のユミがスマホをいじりながら語る。 ユミは民俗学研究会に所属しているだけあって各地の伝承に詳しい。 いつもよりテンションが高いように見えるのは、めったに見られないという鬼の遺物とやらを楽しみにしているからだろうか。 それともひさしぶりに俺と過ごす週末を楽しみにしてくれているからだろうか。 ユミとは