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サクッとかじれるショートショート

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自作のショートショート小説集。コメディ寄りです。
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2024年1月の記事一覧

アメリカ製保健室 | ショートショート

「タカシくん、ヒロアキくん、開けなさい!」 二人の男子小学生が学校の保健室に閉じこもった。 後ろでガシャンという音が聞こえて田口先生が振り向くと、自分について保健室を出るはずだった二人の姿が消え、分厚い扉が閉まっていた。 慌てて開こうとするが、びくともしない。 その扉は普通の小学校にあるようなドアではなかった。 アメリカの姉妹都市から招いた建築家が設計したこの小中一貫校は、外部からのあらゆる脅威に対応できるように必要以上の頑丈さで建てられた。 特に各部屋の扉は特別頑丈

ドローンの課長 | ショートショート

ブーン…。 両肩と腰をドローンにつながれ、床から30センチほど浮いた山田課長が目の前を横切っていく。 私がこの佐久主商事に転職してきて数ヶ月。 営業支援システムの開発職ということで気合を入れて入ってみたら、高齢でフラフラの先輩方をドローンで吊るして目的の営業先に飛ばす仕組みの開発が待っていた。 いや吊るされる皆さんは移動が楽になったと喜んでいるし、一応営業を支援しているわけなのだけど。 なんというか…思っていた開発職とちがう。 老人が吊るされて飛んでいく姿を見た時の罪

雪の妖精 | ショートショート

1年中雪に覆われる北の街。 その街の外れにある教会にソーニャという女の子が住んでいました。 赤ん坊のときにシスターに拾われたソーニャには両親の記憶がありません。 教会には同じような孤児が数人いましたが、ソーニャは誰ともあまり話さず、いつも一人で過ごしていました。 その日もシスターや他の子供たちが過ごしている部屋を抜け出したソーニャは、マフラーと手袋を身につけて教会の裏庭に出ました。 裏庭は遊ぶには少し狭いので、人があまり来ないのです。 誰もいないことを確認すると、ソーニ