ロストバゲージで沢山の方に感謝した話
ブリュッセルで荷物を預ける
ブリュッセル(ベルギー)から、エチオピア航空でアディスアベバ(エチオピア)での17時間乗り継ぎを経由して仁川(韓国)に向かった時の話。
お金の都合でエチオピア航空がとても安かったのに加えて、韓国発券だと更に安かったので、新千歳-仁川はANAマイレージの特典航空券で移動しようとしたものの、帰路は仁川-新千歳が取れなかったので関空まで、関空からは更に別予約というカオスな別切り。どっかで遅延が発生しても耐えられるように乗り継ぎ時間は長めに取っていた。
BRU - ADD / ADD - ICN (エチオピア航空)
ICN - KIX (アシアナ航空)
KIX - CTS (ANA)
ブリュッセル空港のカウンターでは、係員の方が「わたし韓国行ったことないんだよね、行ってみたい」とか言いながらキャリーケースを預かってくれた。ブリュッセルから仁川までスルーの扱いである。仁川での乗り継ぎが一晩あることもあり、仁川で一旦荷物は受け取るつもりでいた。
アディスアベバ
エチオピア航空はアディスアベバでの乗り継ぎが8時間以上24時間以内の乗継便の場合、トランジットホテルを無料で用意してくれる。ビザは不要で、トランジットホテルのバウチャーが入国時のビザのように扱われていた(この場合パスポートへのスタンプの押印は入国・出国時共にない)。
往路の日程では、ちょうどアディスアベバで Irrechaa というお祭りが開催されていて、街に出ると沢山の人がいろいろな民族衣装を着て歩いていた。現地の方に伺ったり帰国して調べたところでは、Irrechaaはエチオピアで最も大きい人口グループのオロモ族のお祭りで、オロモ族はさらに沢山のサブグループがあるらしく、民族衣装のバリエーションはそのグループの数だけあるようだった。
中でも多くの人が黒と赤と白の旗を持っており、このOromo Gadaaの旗は、オロモの人々が何世紀にもわたって民主的な方法で自分たちを統治してきたシステム、彼らの誇りのようだった。
ただ帰国してから知ったのだが、この Irrechaa では過去に衝突で死傷者が発生したことがあるらしく、外務省では2024年度は「外出の際は、普段以上の防犯対策」の注意喚起を、2021年の現地大使館は「祭りの開催期間中は会場周辺地区への不要不急の外出はおやめください」の注意喚起を出していた。
https://www.et.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00762.html
幸い危険な目に合うことは全くなく、自分を見つけた沢山の人が「俺と私と一緒に写真撮ってくれ」と優しかった。たぶん100人以上のエチオピアの人が私との自撮りを撮られていたのではなかろうか。アイドルってこんな気持ちなのかな、と思った。
そんな中、「そこにいたらずーーーっと写真撮ってって言われて帰られへんよ」と英語で声をかけてくれた現地の人と、コーヒーを飲んだり(お店にいた別のエチオピアの方がご馳走してくれた)、とてもおいしいインジュラを食べたり、あちこち案内してくれて楽しい時間を過ごすことができた。
小さい子はハロー、と英語であいさつしてくれたり、どこから来たんだ、日本?そうかこの町で走ってる車のほとんどは日本車だぜと笑ってくれたり、アフリカで信頼を築いてきた沢山の日本人の方々のおかげで、皆とても優しく好意的なように感じた。
初見だとだいたい中国人?と笑顔で話しかけてくるのだけれど、私だってエチオピア人とソマリア人とケニア人の見分けはつかないので、うんそうだいたい中国の方から来ました日本って言うんですけど、な感じで過ごした。
ありがとうございました。
帰りの日程では、トランジットホテルの方に出るならホテルが手配するガイドの同行がなきゃだめだよ、と止められ、疲れていたこともあり飛行機の出発までホテルでそのまま休んでいた。
仁川空港で荷物が出てこない
仁川空港に到着し、入国審査を通過して手荷物受取台でブリュッセルで預けた荷物が出てくるのを待っていたが、一向に出てこない。そのうちターンテーブルが止まってしまい、何かで引き取りが遅れている誰かの荷物が3つぐらい残っているだけとなった。念のためグルっと一周してそれぞれ確認してみるが、もちろん自分の荷物ではない。困った。
そういえば安いトラッカーを荷物に入れていたな、と思い出してiPhoneの「探す」を起動したところ、タイミング悪くブリュッセルでの搭乗前にボタン電池が切れてしまっていた。あちゃー。
んーどうしたものか、と思っているとアニョハセヨ、とエチオピア航空の係員の方が声をかけてくれた。荷物が出てこん?うん出てこないんだよね、そうかこっちきて、ということで、荷物はブリュッセルで預けてアディスアベバ経由で仁川に到着しているはずであること、この先明日アシアナ航空で関空に向かうこと、さらに自宅は関空から国内線を乗り継いだ新千歳であること、搭乗券の裏に貼られていた預入荷物の控えを見せながらお伝えした。どんな荷物?と聞かれてそういえばブリュッセルで写真撮ってたな、と思い出して見せた。これ地味に役立った気がするので、ロストが不安な旅程では写真を撮っておくと役立つことがあるかもしれない。
荷物は見つかったらANAで新千歳まで送ることになると思う、とのことで、もらいたくない手荷物事故報告書(ちゃんと日本語のものが用意されていた)を作成いただいた。この時たぶん、エチオピア航空の方は「日本に到着したら係りの方に相談してね」とおっしゃっていたように思うが、しょんぼりして関空到着時にはすっかり頭から抜け落ちてしまっていた。
預入荷物には貴重品はもちろん入れていなかったが、仁川で着替えようと思っていた衣服と(手荷物の衣服はアディスアベバで着替えてしまっていた)、旅程中に購入したお土産類が入っている。衣服はまあいいとして、お土産に買ったベルギーやフランスのチョコレートや、蚤の市で買ったちょっとしたお宝がなくなってしまうのは悲しい。困った。
とりあえず服が汗でべとべとだけど、こんなときのために海外旅行保険になんかついていた気がするな、と証書を取り出して楽天モバイルのSIMで東京の保険会社さんの窓口に電話で尋ねてみると、
到着便の6時間経過後も預入荷物が受け取れなかった場合、身の回り品の購入費用として10万円まで保険が出る
6時間経過後以降、預入荷物が見つかったとしても保険金の支払いに問題はない(航空機寄託手荷物の遅延に対しての補償なので)
結果見つからなかった場合は別途携行品損害補償特約も適用され、そちらの支払いも受けられる
ことがわかった。
しかし心配だったのは、ブリュッセルから仁川までのエチオピア航空ではエコノミークラスで1個あたり7kgの手荷物機内持ち込み可能、となっているが実際アフリカ系の方がどデカい荷物をバンバン機内持ち込みされておられたこともあり、手荷物のリュック以外にそこそこ大きめの荷物を持っていたことだった。仁川から関西までは、空席の関係もあって特典航空券をビジネスクラスで発券しており、この便の規定では10kg以内の荷物が2個まで持ち込み可能なので問題なかった。しかしその先のANA国内線では、お土産なども含めて10kgまでの手荷物1個と身の回り品1個までとなっており、このままではここで着替えを新たに買ったとしても新千歳まで戻るのに少し無理があった。
そのあたりを保険会社さんに相談してみたところ、「購入した衣類などの身の回り品を入れるカバンなども、やむを得なければ保険の対象になりますよ」とのことだった。ありがたい。
少し気を取り直して電話を切って気づいた。到着便は定刻で16時だったので、6時間経過後ということは22時である。新たにカバンを買うにしても初めての広い仁川空港、そんな遅い時間に買い物できそうな場所が見つからない。
とりあえずは関空までは戻れるし、関空で調達するかと思い直してシャワーを浴び、翌朝のアシアナ航空便で関西に帰国した。
関西空港でやらかす
2024年10月現在の日本人の日本への入国審査は、税関で申告するものがなければ事前に税関申告用の項目をサイトのフォームに入力しQRコードを作成しておき、パスポート読み取りの自動化ゲートを通過し、税関を通る前にQRコードとパスポートを端末に読み取らせて税関の自動化ゲートを通るだけである。
荷物が無事に見つかるかなあ、という心配で頭をいっぱいにしつつ、いつも通りQRコードを作成して税関を通った。何も申告するようなものはありません、別送品もありません。
入国して、次は新千歳かと思いつつ、関空対岸のGUとりんくうプレミアムアウトレットモールで、着替えとキャリーケース等を購入して関空に戻り、搭乗の準備を整えて国内線出発ロビーに向かった。新千歳までたどり着ければターミナルに温泉があるのでさっぱりして着替えられる。
、、、ん?
出発ロビーに着いて思う。荷物が見つかったとしてあれはどうやって税関を通るのか?
仁川のエチオピア航空係員の人は、関空で係りの人に相談するように、とおっしゃっていたのを思い出したがそもそもどの係りの人なのか。困った。
しかしこれはプロに聞かないとわからないので、たまたま誰も並んでいなかった関空の国内線ターミナル出発ロビーのANA国際線乗り継ぎカウンターの係の方に、すみませんこれこれこういう状況なのですが荷物を新千歳で受け取るために今関空でやっておくべきことはあるでしょうか、とご相談してみた。
ANAの係員の方は大変お優しく、わけのわからないカオスな帰路の旅程を聞かれたあとで、ご自身は国内線の担当なので詳しいものに確認して参ります、とおっしゃって、別の方に状況のご説明をしていただき、その方はさらに国際線の担当部署に確認して参りますのでお待ちいただけますか、とおっしゃって、次の搭乗便の保安検査場通過締め切り時刻はx時x分、と確認しつつ急ぎ向かっていかれた。
正直若干へこんでいたのだけれど、この関空のANAの皆さんのやさしさには本当に励まされた。それはどこそこに聞きに行きなさい、とかのご対応ではなく、さっきから自分はカウンター前からすぐそばのベンチに移動して座って待っているだけである。
しばらく経って急ぎ戻ってこられたその方は、今回私の荷物が見つかったら私本体の帰国便を運行したアシアナ航空が荷物も輸送して代理で通関させることとなる。そのアシアナ航空の担当者をここ(国内線ターミナルの出発ロビー)に呼んだので、このままここでしばらくお待ちいただけますか、とおっしゃるのである。マジか。国際線ターミナルでアシアナさんに聞けとかじゃないのか。お優しい。
お言葉に甘えてそのまま待っていると、今度はアシアナ航空の係員の方が来てくれて、もう一度状況を聞かせてください、とおっしゃるので説明したところ、手にもっていた何かのシステムから印字された紙を見つつどこかに電話で確認されたあと、本来は税関を出るまでに書かねばならない書類があったが、もう入国されているので税関には戻れない、次の便の出発時刻も迫っているので(ANAの係員さんは、私がアシアナ航空の方と話している間も搭乗便が少し遅延するので時間に余裕ができたことなどを伝えにきてくれた)必要な書類はメールのやり取りで作成しましょう、とおっしゃっていただき、メールアドレスなどの連絡先をお伝えして次の新千歳行きのANA便に搭乗した。
新千歳に到着し、買い忘れていた足りない着替えを新千歳のターミナル内にあるユニクロで購入して、ターミナル内にある温泉で汗を流して綺麗な着替えに着替えた。汗臭いまま快速エアポートに乗るご迷惑をおかけしないでよかったと思った。
エチオピア航空とアシアナ航空からの連絡
温泉を出ると、iPhoneにエチオピア航空からメールが届いていた。
うぉぉぉぉお見つかったよかったありがとうーーー!
前後して新千歳のアシアナ航空の方からもお電話があり、予定通り搭載されるかどうかまだはっきりしないので、搭載されたら改めて連絡しますね、とのことで改めてのご連絡を待った。このアシアナ航空の方も、自社便で事故があったわけでもないのにとてもお優しくうれしかった。
新千歳空港で荷物と再会
結果、預けていた荷物は何らかの事情で当初の予定の便にはエチオピア航空からの引き渡しがされず、1日遅れで新千歳空港に到着することとなったと新千歳のアシアナ航空の方からご連絡をいただいた。
パスポートと、荷物を開けての検査が税関であるので預入荷物のカギを持ってきてくださいね、と教えていただき、新千歳空港の国際線ターミナルにて連絡をいただいたアシアナ航空の方と合流して、税関にアシアナ航空の方が荷物を運んできてくれた。おかえりぃぃぃぃ!
税関の方もとても優しく、今回私が関空での入国時に「別送品申告」をしていないので、「願い書」というフォームで通関手続きをする旨を教えていただいた。なお、願い書のフォームはANAやJALのサイトに用意されており、ある程度私のようにやらかす人間がいるようだ。いずれも、帰国した際にxxxの理由で通関することができなかったので、改めて通関をお願いします、という内容になっている。
ANA
https://www.ana.co.jp/www2/ja/pdf/travel-informtion/application_ja.pdf
JAL
https://www.jal.co.jp/jp/ja/inter/baggage/accident/img_sites/request_200626.pdf
本来帰国時に一緒に通関する荷物には免税範囲があり、例えば紙巻たばこであれば200本までの持ち込みには税金がかかからない。
願い書にも書かれているが、ロストバゲージで後から受け取る可能性がある荷物に、免税範囲に含まれるものがある場合は、税関通過時に「別送品申告」をしておけば、今回のように後から荷物を通関させる場合もその適用が受けられる。ただ私は今回その申告をしていなかったため、預入荷物に入れていた紙巻たばこ4箱について、1200円の税金がかかる、とのことだった。
おそらくこのあたりの手続きの説明は、日本の空港に到着時にロストバゲージがわかった場合は日本の空港で係員の方がきちんと説明してくれるのではないかと思う。今回は外国で発生したこともあり、よくわかっていなかった。
荷物が無事に戻ってきた喜びに比べたら1200円もちろん喜んで払います、という気持ちであったが、これを読まれた方がもしいつか同じ状況になったら思い出して頂ければ幸いである。
感謝
今回荷物がブリュッセルで搭載されなかったのか、アディスアベバで搭載されなかったのかはわからないが、困ったことの何倍も沢山の方々に優しさをいただいたように思う。
困った顔の私に声をかけていただき荷物を見つけて仁川まで運んでいただいたエチオピア航空の皆様、とても優しくご対応いただいた関西空港のANAとアシアナ航空の皆様、私への電話やメールでのご連絡と新千歳空港まで荷物を運んで受け取っていただいたアシアナ航空の皆様、新千歳空港の税関で通関いただいた皆様、保険会社の皆様(航空機寄託手荷物の遅延の保険金は請求した全額が数日で口座に振り込まれた)、りんくうプレミアムアウトレットやGUやユニクロで買ったものをすぐ使えるようにタグを切ったりしていただいたお店の皆様、関わっていただいた全ての方に深く感謝しています。
本当にありがとうございました。
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