目覚まし
おはようとつぶやいてみても、時計の針しか返事をしない、そんな部屋。もう一つ寝息が聞こえていたのはもうずっと昔のように感じる。夢の中であいつが言った、“いつまでそこにいるの”という言葉。喉に手を突っ込まれたような不快感。次の瞬間、まとわりつく嫌な汗が僕を現実に戻してくれる。そのまま夢の中にいたら、きっと叫んでいたと思う。今だって、ぽろぽろと涙が頬を伝う。肌に張り付いた衣服を脱ぎ捨てて、枕に縋りつくしかなかった。目覚ましは、もう長いことかけていない。音を聞くだけで寒気がする。あの頃は、夜が明けてしまったことを伝えるその音が本当に嫌いだった。
カーテンを開ける。どこか綺麗な景色が広がっていれば、まだ救われただろうに、コンクリート。いつもと変わらないコンクリートを見ると、自分の目から色が無くなっているんじゃないかと錯覚する。窓の外の表情は変わらないが、窓に映る僕の表情は少しずつ、けれど確実に、変わってしまっている。いつから深く空気を吸うことを辞めたのだろう。浅い呼吸でも生きられてしまう、静かすぎる日々。
一言も喋らないまま一日が終わるかもしれない。そんなの寂しすぎるから、朝起きたらおはようとつぶやく。もう返事が返ってくることはないけれど、今はそれが目覚ましの代わりだから。
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