見出し画像

目覚まし

おはようとつぶやいてみても、時計の針しか返事をしない、そんな部屋。もう一つ寝息が聞こえていたのはもうずっと昔のように感じる。夢の中であいつが言った、“いつまでそこにいるの”という言葉。喉に手を突っ込まれたような不快感。次の瞬間、まとわりつく嫌な汗が僕を現実に戻してくれる。そのまま夢の中にいたら、きっと叫んでいたと思う。今だって、ぽろぽろと涙が頬を伝う。肌に張り付いた衣服を脱ぎ捨てて、枕に縋りつくしかなかった。目覚ましは、もう長いことかけていない。音を聞くだけで寒気がする。あの頃は、夜が明けてしまったことを伝えるその音が本当に嫌いだった。



カーテンを開ける。どこか綺麗な景色が広がっていれば、まだ救われただろうに、コンクリート。いつもと変わらないコンクリートを見ると、自分の目から色が無くなっているんじゃないかと錯覚する。窓の外の表情は変わらないが、窓に映る僕の表情は少しずつ、けれど確実に、変わってしまっている。いつから深く空気を吸うことを辞めたのだろう。浅い呼吸でも生きられてしまう、静かすぎる日々。
一言も喋らないまま一日が終わるかもしれない。そんなの寂しすぎるから、朝起きたらおはようとつぶやく。もう返事が返ってくることはないけれど、今はそれが目覚ましの代わりだから。



#ピロリ日記 #日記 #エッセイ #コラム #雑記 #毎日更新 #毎日投稿 #毎日note #生き方 #生きづらさ #ライフスタイル #ひとりごと #ポエム #夜 #朝 #目覚まし #おはよう #夢 #悪夢 #自分 #表情

いいなと思ったら応援しよう!