蛹
夏。道端の木に繋がれた蛹。
どうやら死んでいるようだ。
外に飛び立つこともなく、空を知らずに天に舞う。
きっと、大人になりたかっただろうな。
冬。布団にくるまり震える僕。
暖房が効いてくるのを待つ。
でもすぐに、外に出ていかなければならない。
自由とは程遠いところへ。
時計と睨み合い、ギリギリになって殻を破る。
ああ、大人になんかなりたくない。
あの日、落ちていた枝で弾き飛ばした蛹のように、社会から弾き飛ばされれば。ずっと暖かく生きていられるの?いや、世界を知らずに死ぬだけだろう。陽が出ていて、風が吹いて、雨が降ったら虹が出る。ひとりぼっちでも、楽しくなくても。
大人になってしまった。