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潮時

言葉の通り。
そろそろ潮時なのかなあ、なんて考えていた。
いろいろな事に関して。

回らない頭
進まない筆
つっかえる言葉
募る義務感
焦る気持ち
空回りしてばかりである。

自分は飽きっぽい性格だと思う。
好奇心はそれほど強くはないのだが、何事もそれなりに手を付けては頃合いを見て辞めてきた。中にはずっと続いてるものもあるけれど、いつも辞めるタイミングを探している気がする。

“飽きっぽい?ホントに?”

ふとそう思ったのは、Twitterのタイムラインを眺めていた時だった。
僕はnoteというプラットフォームで文章を2年ほどつらつらと並べてきた。
そのおかげか、書いたら宣伝しようと始めたTwitterのnoteアカウントの方ではたくさんクリエイターの方々のフォローをしたしフォローをしていただいている。
タイムラインには日々、様々な人がnoteを共有し、僕はそれを辿って文章を読みに行くことが多い。

とある文章を読んだ
とっても良い文章
海馬に文章の残り香まで絡みついてくるようで
やっぱこの人は才能あるなぁ
ジャンルを問わない才能
いいねえ

なんて思いながら、ホームボタンを2回タップし、画面を上にスワイプした。

スキを付けなかった。

僕はいいなと思った文章にはかかさず付けている。
けどその時は、どうしてもスキだと伝える気持ちになれなくて、気がつけば下唇を噛んで目頭を熱くしていた。

その時だ、頭の中に“潮時”という言葉が浮かんだのは。

“この人にゃあやっぱ勝たれへん
他の人にも
俺もぼちぼちやってきたけど、最近書くのしんどいしそろそろかなぁ”

今の今までどこに押し込んでいたのかもわからない言葉達が、急に胸の奥で重さを持ち出す。

“最近あんまり手付けれてないしなぁ
ぶっちゃけそこまでガチでやってたわけでもないし
暇つぶしならYouTubeがあるし
考え話すならツイキャスあるしなぁ”

言葉達が暴れ出す。

あーあもうなんにもやりたくない

トドメの一言。
そこからはしばらく無。

・・・

たぶん、飽きっぽいわけじゃない。

別に誰と戦ってるわけでもないはずなんだけど、“負けた”って思った。そうしたら、熱が冷める。
今までもそうだったかもしれない。

たぶん僕は、“極度の負けず嫌い”だ。小さい魂の中をエベレスト級のプライドが陣取っている。

負けず嫌いと聞くと、勝つまで諦めないとか、勝てるようになるまで努力を重ねるとか、すげぇ努力家みたいに聞こえてきそう。
でも、僕の場合は違う。
生来のマイペースさとダウナー気質が負けず嫌いに融合すると、
“負けたくない。でも頑張りたくない。”
というバカみたいな思考に平々凡々な20半ばの男は陥ってしまったのだ。

負けたくないから、勝てる勝負、もしくは勝つか負けるか自分が主導権を持てる勝負しかしない。
負けた時に自分を正当化するために、自分は本気で取り組んでいたわけではないと言う。
負けたことを認めたくないから、“飽きた”とか“潮時”とかいう言葉で身を引こうとする。

どんなに些細なことでも、“負けた”と感じると、すぐに崩れ落ちそうになってしまう。
そんな自分をかろうじて繋ぎ止めるために、様々な免罪符を常にポケットに忍ばせている。

何事にも真正面から向き合うことが苦手な僕らしい、なんとも幼稚でみすぼらしい感覚だろう。

・・・

今はいい時代になった。
なんでもできる。なんにでもなれる。
やりたいという気持ちと、全ての責任を負う覚悟さえあれば。
そんな時代の中で、僕は1番持ってはいけないものを持っているのかもしれない。
あるいは、1番必要なものが欠落してしまっているのかもしれない。

なんでもできる。なんにでもなれる。
これがとても重い。とてつもなく重い。
なんにもしていない人は愚か
何者にもなれていない人は雑魚
そんな風に指を刺されている気がしてならない。
そうして、自分も何かしなきゃ何かしなきゃでも何をしたらいいのどうしたらいいの好きなことって何って
思考の渦が巻き起こる。回線がショートする。脳味噌がねじ切れるよう。

そんな状況がずっと続いている中で、それでも始めたこと・ものというのは、とても尊いものだと思うのだ。
誰でも、どんなことでも。

辞めるというのは、案外簡単なものだ。触らなくなればいいだけだから。
始めるというのは、とても大変。まず、それを見つけ出さないといけない。歩く道中に他のものに目移りするかもしれない。そもそも違う道を歩いてしまうかもしれない。
そうしてフラフラと歩き続ける中で見つけて拾い上げたものは、大事にしてあげないといけないと思う。
隣の人の方が輝くものを持っているかもしれない。後ろにいた人の方が気づいたら前にいるかもしれない。
それでも、その人達が持っていないものを、自分は今手の中に持っているのだ。
革靴と同じ。次第に馴染むし、磨けば光る。
磨いてから、バッグにしまうかその場に置いていくかは決めればいい。

これは自分への戒め。
投げ出すのはもったいないということを理解しよう。もう少し磨いてみよう。

“潮時”
まだ、潮は満ちちゃいない。

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