2023年7月23日の記事
※noteを2個作っていたため一つにまとめました
そのため過去の記事をUPしました
私たちの国立西洋美術館
~奇跡のコレクションの舞台裏~
渋谷イメージフォーラムにて上映中
ものすごくカッコイイ映画館だった
渋谷から表参道方面に徒歩10分くらい
渋谷とは思えない静かな場所
https://www.imageforum.co.jp/theatre/
監督の大墻 敦(おおがきあつし)さん他舞台挨拶があるとのことで行ってきました。
美術館好きな人是非観てほしいです!
美術館を愛する人は観なくてはならない映画であると思います。
絵を観る
多大な幸せと興奮を与えてくれる裏側にこれだけの事実が隠れていたことを知らずに生きてきたことを美術館好きとして反省しています。
美術館に携わる皆様に心からの尊敬と感謝をもって、そしてこれからはもっとたくさん美術館に足を運びたいと思います。
そして国はもっと予算をだそう!予算はこの十数年で半減しているそうで、関わる人数も世界的に異常な少なさ。
一人一人の担う責任が大きすぎると感じました。
国立でありながら独立行政法人化されていることも知らなかったのですが、ビッグな展示会にはすべて新聞社や放送局が主催となっている成り立ちも日本ならではのことだそうです。
宣伝も大きくしてお金もたくさん出す分収入もたくさん取るので、結局美術館・博物館側に入るのは少ない状況。
新聞社や放送局も経営が厳しくなっている今、このままのやり方では芸術文化が危ういのではと不安になってしまいました。
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映画について
上野の国立西洋美術館は松方幸次郎氏が造船で得た多大な利益を美術品の収集にあてました。その理由は自らの趣味や欲ではなく、自分の手で日本に美術館を作り若い画家たちに本物の西洋美術を見せるためだったそうです。この作品がフランス政府から日本に返還された時に作られた美術館が国立西洋美術館です。
重要文化財であり世界遺産に登録されている国立西洋美術館は、近大建築家の巨匠ル・コルビュジエによるもの。
2020年10月から約一年半にわたり、ル・コルビュジエが構想した創建時の姿に近づけるための整備改修のため、閉館した美術館の様子をカメラが追っています。
6000点もの国の財産でもある美術品を一時的に別の場所に移動保管するだけでも大変な作業。
絵の大きさを考えてできるだけ効率よくコンパクトに収納し、大切に運ばれる様子はこちらも息を止めてしまいそうになります。
ロダンの石像などが緩衝材でぐるぐる巻きにされて運ばれていく様子は少しおかしくも有り。
こういう大がかりな作業には大手運送会社の皆様が関わっていることも知ることができました。
日本通運方々が写っていましたが、美術品専門のご担当がいるのでしょうか。
ボルトを外す行為一つも石像にひびが入る懸念がありますので、それはそれは丁寧に作業されています。
運ぶときも数人がかりでゆっくりゆっくり運びますが、周りにも同じくらいの人数がついて回ります。
行く手に何かないか注意に注意を重ね、何かあったときにこれだけの人数がいないと受け止められないだろうな・・・相当なストレスのかかる仕事だと思います。
最後に新しくできた美術館に絵を戻すときはヤマト運輸の方々が写っていましたが、ミリ単位で絵を飾る位置を移動する様子はただただすごいとしか思えませんでした。
美術館が休館中にロンドンや日本の他県の美術館に絵を貸し出す様子も見ることができます。
そ~っと絵を運び、どの場所に緩衝材を付けるか、美術館の方々と細かい打ち合わせをしながら、頑丈な木箱に入れられて運ばれます。
日本の財産でもある美術品を大切に扱う様子は見ていてハラハラドキドキするほどでした。
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この映画の良いところは、回収作業中の美術館の様子だけでなく、働く学芸員(研究員)の皆様の普段のお仕事・舞台裏の様子がとても良く分かります。
定期的に絵画からほこりを取る作業、絵画の状態を丁寧に丁寧に観察し修復する作業、閉館中にドイツの美術館に絵を送るための梱包作業、リニューアル後の美術館にどのようにどの絵を飾るかの話し合いの様子、そして国の予算で国立西洋美術館が美術品を購入する作業の一端も。
こんな貴重な映画はなかなかありません。
それぞれがスペシャリストの学芸員の皆様による細やかなお仕事によって進められていることを知ることができます。
もし学芸員になりたいと思う人がいたら絶対観た方が良い!
この仕事は職人芸でもあると思います。次の世代へつながらなくてはならない仕事です。
一つ一つはとても大変な仕事であるのですが、失礼を承知で書かせていただくと、結構マニアックな方々ばかりで一人一人がものすごく絵画を好きである、この仕事に誇りを持っていると言うことが伝わってくるのです。
絵のチェックを徹底的に行う様子は、懐中電灯で絵をくまなく何度も何度も何度も照らし小さな何か(絶対普通の人には見えない何か)を見逃さないようにする様子。
丁寧を超える丁寧さ、繊細を超える繊細な作業が続く様子は観ている私の方がくたくたになるほどです。
数年前に発見された松方コレクションの一つであるモネの睡蓮の一つが上部が剥がれてボロボロの状態で日本に戻りました。
映画の中で学芸員のお一人が、普段は絶対にできないところまで見ることができる貴重な資料になったと興奮して話しておられました。
青い絵の具の奥に全く違う色が入っていたり何層にも絵の具が塗られている層を見ることができたと話す様子は、ワクワク感がこちらにも伝わってきてどれだけ絵が好きなんだこの人たちは!とちょっと笑ってしまうくらいでした。
他の美術館に絵を貸し出す時、その美術館にある作品と国立西洋美術館にある作品との面白いコラボレーションも学芸員の方の考えによるもの。
同じ作家の作品でも構図がとても似ている絵が有り、それを並べて展示すること。
日本の彫刻家の作品とロダンの作品を並べて置くこと。
こういうことも学芸員の皆様による美術館の未来への模索の一つだそうです。
この映画を観て私はやっぱり美術館が好きと再確認しました。
これからは少し時間ができるので、他県の美術館にも足を運ぼうと思います。