2021年F1アブダビGP
2021年のF1シーズンが終わった。
今はレースが終わって1時間半ほど経過。
自分の感情の起伏が少し落ち着いてきたので、今感じていることを将来の自分のために書き残しておく。
今年のシーズンは現行規格のマシンでチャンピオンを取り続けるメルセデスに乗るルイス・ハミルトンと、進化し続けるホンダエンジンを搭載したレッドブル・ホンダに乗るマックス・フェルスタッペンのワールドチャンピオン争いになると考えられていた。
で、シーズンインから書き始めると、それこそ大きな物語になってしまうので、簡潔に最終戦を迎えた段階のポイントはマックス369.5、ハミルトン369.5と様々な経緯があり同点。72回を誇る選手権の歴史で2度目の同点で最終戦を迎える事になった。
チャンピオン候補が何人もいる最終戦も超接近の最終戦も、今まで見てきたことがあったが同点というのは自分史では初。
勝利数はマックスが1勝上回っているので、両者無得点ならマックスがチャンピオンとなるが、基本的に「上位でゴールしたドライバーがチャンピオンになる」という状況。
そして、マックスが乗るレッドブルにエンジン供給を行うホンダは今年限りでのF1撤退が決定しているので最後のレース。今回は「F1を辞めます」という発表。過去の「F1活動休止」とは異なる本当のラストラン。
正直ここ数年はずっと「メルセデスが速くてつまらない」というF1を見せられてきていたので、今年は当然マックス、レッドブル・ホンダ推しでレースを見て来ていた。そんな最終戦・・・。
正直、何を書き残したいのか自分でもよくわからないし、チャンピオン争いの話だけでなく日本人ドライバー角田裕毅に関しても書き残したいことはたくさんあるのだが、チャンピオン争いに焦点を絞って書き残す。
FP1、FP2、FP3と全てのセッションを見ての感覚。「メルセデスもレッドブルも手の内は隠している感じ。でも予選はメルセデスが速そう。決勝は若干レッドブルが速い気もするけど希望的観測かも・・・。」
そして予選。やっぱりメルセデスが速い。ボッタスも速いからマックスは最低でも確保すべき2位スタートすら危ない状況。
で、Q1,は普通に終わったが、Q2が普通に終わらなかった。Q2で10位以内に入るとQ3進出できるが、Q3進出ドライバーはQ2で最速タイムを出したタイヤで決勝レースをスタートする必要がある。そのため、速いトップチームはQ2をミディアムで突破し、決勝での戦略の幅を広げておくことが多い。
メルセデス勢もレッドブル勢もミディアムで1アタックを行い、レッドブルのペレス以外は基本的にQ3進出と思えるタイムが出ていた。その中で、マックスが1コーナーでタイヤロック。フラットスポットを造ってしまう。フラットスポットのあるタイヤでは車にバイブレーションも出るし次に同じタイヤをロックさせるとフラットスポットが酷くなりどんどん乗りにくく遅い車になってしまう。
この時点でマックスにミディアムタイヤが残っていればよかったがNewミディアムがない状況。Usedミディアムで出ても先ほどのタイムを上回れなければ、フラットスポットのあるタイヤでの決勝スタートになる。そのような中でレッドブルの判断はソフト。ソフトは柔らかいので当然タイムは出やすいが決勝でのレース戦略の選択肢が無くなる。
まぁでもどう考えてもあの場面、フラットスポットのあるミディアムスタートを避けるにはソフトしかなかったよね。
ソフトで出てタイムを更新しQ3進出。この時点でマックスはソフトタイヤスタート、ハミルトンミディアムスタートが決定。
そしてQ3.ここでレッドブルは見事なチームプレイを見せる。マックスより先にタイムアタックに入っていたチームメイトのペレス。
彼のトゥ(スリップストリーム)を使いストレートで加速したマックスは誰よりも早いタイムでコースを駆け抜けた。
ハミルトンを抑えポールポジション。スタートがソフト、ミディアムとタイヤが異なる2台のマシンがフロントローに並ぶことになった。
マックスはポールでしかもタイヤが蹴り出しのいいソフト。頭の中でのシミュレーションは1周目からハミルトンを抑え走るマックス、最初はソフトのマックスが離すもしくはタイヤのマネジメントをしながらハミルトンを抑えるが、徐々に厳しくなるマックスにミディアムタイヤのハミルトンが襲い掛かるというパターン。その場合、先にピットに入るマックスをオーバーカットするためにハミルトンがペースを上げる展開で、タイヤ交換を終えたマックスはハードタイヤで攻めてハミルトンがタイヤ交換をした時点で位置関係がどうなるか、それが基本のレースパターンと想定。後は望まないがスタートで2台が絡む形。
そして迎えた日曜日。
もうね、今まで数百戦見てきたと思うけど、最高に楽しみで最高に怖くて一番寂しく感じるに日曜日だった。
そして日曜日のホンダの新聞1面広告。
ありがとうフェラーリ
ありがとうロータス
ありがとうブラバム
ありがとうマクラーレン
ありがとうウィリアムズ
ありがとうルノー
ありがとうメルセデス
ありがとうトヨタ
初めてF1に挑戦した
1964年のあの日から今日までの、
すべてのライバルに感謝します。
すべての応援してくれた人、
すべてのドライバー、
厳しい戦いをともにくぐり抜けてきた、
レッドブル、アルファタウリ、
すべての仲間に感謝します。
じゃ、最後、行ってきます。
泣くしかないよね。そこには「ホンダF1」という生き物がいた。俺がF1に触れた時から時々いなくなるんだけど、常にチャレンジしている「ホンダF1」という魂があった。リアウイングを見せて「いってきます」なんて言われて擬人化しない筈がない。
いよいよ決勝の時間。
タイヤメーカーピレリから「ソフトとミディアムで意外とタイヤ持ちは変わらない」とポジティブな話が出てきたが、個人的には「ソフトが持つならラッキーだけど、いずれにせよ激しい戦いになるし、レースパターンの想定は変わらない」と思っていた。
アブダビGPの行われるヤスマリーナサーキットは1コーナーまでの距離も短いし、前にいるマックスがソフトタイヤなんだから、1コーナーを制すのはマックス。
俺の中で疑いは全くなかった。
レース前にはハミルトン、マックス両者を応援するセレブ達の映像。グリッド上にはウサイン・ボルトの姿。
世界の注目が集まる中、フォーメーションラップを終えグリッドに付く全ドライバー。世界が注目する中、スタートシグナルのレッドランプが灯り・・・ブラックアウト。
マックスの加速は驚くほど鈍かった。
あっという間にイン側のラインからハミルトンが1コーナーに向けて有利なポジショニングをとり、1コーナーはハミルトン先頭。
これは正直想定になかったし、マックスを推す中で最悪のパターン。ミディアムタイヤで遅いハミルトンに蓋をされたのでは全く意味がない。
当然のようにハミルトンに襲い掛かるマックスはターン6でハミルトンの内側に飛び込んだ。
「いけ!!!」
マックスが前に出てブレーキング。マックスはターン6できれいに止まりきれずアウト側に。外のハミルトンは行き場をなくしコース外へ。
ターン6、7はシケイン状になっているので。コースに飛び出したハミルトンはそのまま真っすぐコースに先頭で戻る。
「コース外を走ってアドバンテージを得た場合順位を戻す必要がある。」前戦のサウジアラビアではその規定で色々あったので、普通にハミルトンは譲り、マックスが前に出ると思っていた・・・
が、レースインシデントと判定されそのままに。
そして徐々に離れるハミルトンとマックスの距離。ソフトタイヤの方が速い筈なのに離されるという最悪のパターン。
ピレリが発表した「ソフトとミディアムで意外とタイヤの持ちは変わらない」というコメントは何だったんだ?としか思えない状況の中、当然のようにマックスのタイヤの性能劣化はハミルトンより早く発生していく。そしてマックスがピットイン。タイヤをハードに変える。
マックスのタイヤ交換に呼応するようにハミルトンがその次の周にピットイン。ハードタイヤに交換。
前後関係が逆であればハミルトンはステイアウトしてタイヤを使い切るまで猛ダッシュするオーバーカットに出たであろうが、「前にいる」という状況であれば逆に新しいタイヤのマックスに合わせるのが定石。つつがなくタイヤ交換を終えコースに戻る。
基本的にタイヤ交換は1回。このまま何事もなくレースが終わるのであれば二人はタイヤ交換を行う事はない。この後はトラック上での戦いが全てとなった。
コースに戻ったハミルトンの前にはソフトスタートでタイヤ交換を行っていないマックスのチームメイト、レッドブル・ホンダのペレス。
この展開ならペレスはハミルトンを抑え込むのが仕事。古いソフトで新しいハードを履き、レースペースでは圧倒しているハミルトンを抑え込むのは簡単ではない。
ペレスに追いつく前の19周目ハミルトンとマックスのタイム差は7.446秒、そこからペレスの歴史に残るガードが炸裂する。
そしてようやくハミルトンがペレスを交わした時、ハミルトンとマックスのタイム差は1.204秒。ペレスのガードはマックスに6.242秒のアドバンテージをもたらした。見ていた時は「ペレスのおかげで一気に詰まった!そのままなんとか食らいつけマックス!!」としか思っていなかったが、最終的にはこのペレスのガードこそが最終結果に大きな影響を与える事となる。
そしてこのガードはレッドブルにとっておそらくは想定内であったと思う。と、いうのはペレスは「ハミルトンを抑え込む」という大きな仕事をこなした後、タイヤ交換をしレースに復帰するが最終的に残り数周でリタイアをしている。チームから無線でピットに呼び戻され、リタイアする事を告げられた時、ペレスは無線で「Really?(本当に?)」と聞いている。乗っているペレスにとってマシンに不具合はなかった。
でもチームは不具合を知っていた。
もちろん電気的であったり機械的な不具合かもしれないが最終戦の残り数周。壊れない可能性に賭けてもいい場面。
俺の中では一つの答えにたどり着いていた。他の人が言っていて「ありえるなー」と思った作戦。
ペレスの車は最後まで走れるだけのガソリンを積んでいなかったのだと思う。燃料を軽くしてその分タイムを稼ぐ。
ハミルトンをブロックするシチュエーションになった場合、少しでも速く走れるようにガソリンを少なくして勝負をかけた。
真実はわからないが、そこまで考えて戦っているのがF1だと思う。
ただ事実としてペレスはこのレースで表彰台に立つことより大きな大きな仕事を成し遂げた。
ペレスのおかげで1.204秒差までハミルトンに近づいたマックス。
ここからはアクシデントがない限りコース上で差を詰め抜くしかない。
22周目 1.746秒
23周目 2.071秒
24周目 2.574秒
俺の想いを壊すようにハミルトンがマックスを引き離す。「なにかアクシデントがないと厳しい」そのような状況に追い込まれた。
しかし、神は気まぐれに悪戯を発動する。35周目アルファロメオのジョビナッツィがリタイヤ。マシンをコース外に出す作業のためにVSC(ヴァーチャルセーフティーカー)が出された。
VSCの間は各マシンは通常スピードの40%での走行にスピードを落とす必要があり、タイヤ交換のロスタイムがアブダビの場合通常の23秒から14秒に短縮される。
「マックス入れ!!」と思った。このままではジリ貧。速く走るためにニュータイヤで勝負をかけるしかないと思った。
ハミルトンはステイアウト。そしてマックスが・・・ピットに入った!もう一度ハードタイヤを装着しコースへ。
これでマックスはハミルトンの17.6秒後ろでコースイン。
ニュータイヤのアドバンテージでその差を詰められるかはわからないが、やれることをやるだけだ。
この時、実はペレスのブロックが大きな影響を与えていた。VSCが入った時点でハミルトンとマックスの差は約7秒。
ハミルトンはマックスに対し「タイヤ交換しても順位が変わらない」というセーフティーゾーンにいなかったのだ。
ペレスのブロックで失った6.262秒があれば13秒262秒差。微妙なラインではあるが完全に抜かれるとも言えないのでもしかするとピットインの選択肢があったかもしれない。
しかし現実には7秒しか差はない。ハミルトンがピットインした場合、マックスはステイアウトし順位が逆転。
もちろん抜けばいいのだが最悪2台が接触し全てが終わる可能性もある。
その状況ではハミルトンに残される選択肢はステイアウトのみ。
作戦の選択肢をなくすために目に見えない所だが、ペレスのガードが効いていた。
そしてVSC解除。その時点でハミルトンとマックスのタイム差は17.6秒。残り周回21周。最後のバトルを考えると1周当たり1秒詰めないとトップに立てない計算。
猛然と飛ばすマックス。そしてその差を可能な限り縮められないようにするハミルトン。
39周目 16.386秒
40周目 15.753秒
41周目 15.217秒
42周目 14.152秒
思ったより詰まらない。ここはハミルトンも勝負所とみて渾身のアタックをしているので仕方ないと言えば仕方ないが、このままではハミルトンがタイトルを獲る事になる。
47周目 13.568秒
48周目 12.701秒
49周目 11.308秒
ハミルトンはラップ遅れに引っかかっているのにタイム差よりも圧倒的に速く減っていく残り周回数。
「このままでは追いつけない・・・」スタート直後、ペレスブロックで接近した後に引き離された時に続くこの日3度目のネガティブな感情。
それから俺はひたすら祈った。マックスが追いつき、追い越すための何かが起こる事を。
「レースを大きく動かすアクシデントかハミルトンのマシンにトラブルが起こるように」と。
1980年代とは違い技術の進歩によりマシントラブルによるリタイヤは極端に減っている。
嫌なヤツだと思われようが構わない。マックスが、レッドブルが、そしてわれらのホンダが勝つために何かが起こる事を。
全世界でハミルトンを応援している人は「このままいけばハミルトンがチャンピオンだ!」程度の気持ちで、強く「このままいってくれ!!!頼む!!!!」と思っていた人はかなり少数だと思う。
だがマックス、レッドブル、ホンダを応援している人たちはおそらく世界各地で強く強く願っていた。
「奇跡よ・・・起こってくれ」
俺だけでなく世界中の応援する人たちの願いに応えるかのように、ついに神や勝利の女神が行動を起こす。
残り6周でラティフィがクラッシュ。コースを防ぐ車を排除するにはSCが入る。
SCラン中は追い越し禁止だがタイヤ交換は可能。
そのままであればチャンピオン決定となっていたハミルトンは首を振りながらスロー走行。
マックスは当然のごとくピットイン。ソフトタイヤを履く。
ここでもペレスの歴史に残るレジェンドブロックの効果が炸裂する。
SCが入ったタイミングのマックスとハミルトンのタイム差は11.972秒。もしペレスのブロックがなければ18.214秒のアドバンテージ。「タイヤ交換にピットインする」という選択肢が存在した。
だが現実は違った。先ほどと同じくハミルトンには「タイヤ交換する」という選択肢は存在しなかった。
ここで話は少しズレるが様々なルールをおさらい。(数年後に見返したらルールが違う場合もあるだろうし)
・SCラン中はSCに続きスロー走行し前走車を追い越す事は禁止。ピットインは基本的に自由。(ピットで順位が変わるのは追い越しではない)
・SCランでコース上の不具合の解消に時間がかかったり、何らかの事由がある場合は赤旗で全車ピットへ。(その際タイヤ交換やウイング交換可能)
・コース上の不具合が解消された時点で、SCを先頭に順位通りに整列。周回遅れの車はレースディレクター指示によりSCの追い越しを行い同一周回で整列。
・赤旗が出た場合、レース周回の80%以上を消化していた場合はその時点でレース終了。
そして、決まりではないが各チームの申し合わせ事項として「SC先導のチェッカーフラッグは望まない」という内容があった。
レースが再開されるには正直残りラップ数が少なすぎる。厳しいでも再開されればソフトのマックスが圧倒的に有利。
果たしてどうなるのか。
レースディレクターのマイケル・マシから最初に出された情報。
「LAPPED CARS WILL NOT BE ALLOWED TO OVERTAKE」正直天を仰いだ。
周回遅れの車はオーバーテイクしてはいけない。ハミルトンとマックスの間には数台の周回遅れがいた。
その車がオーバーテイクしないという事は「今の隊列のままレース再開する」という事だ。
この時点で「SC先導のチェッカーフラッグにはしたくない」というマイケル・マシの意思が伝わってきた。
レースが再開されてもハミルトンのすぐ後ろに行くための時間が必要。残り周回を考えると非常に厳しい。
残り周回が少なくなる中、着実にラティフィの車が片づけられ、レース再開できる準備が整い始める。
レッドブルチームのオーナークリスチャン・ホーナーがマイケル・マシに問いただす。
「なぜラップ遅れがそのままなのか?」マイケル・マシは「ちょっと待ってくれ、今インシデントの復旧中だから」と質問に答えない。
ホーナーは続ける「俺たちはレーシングラップが欲しいんだ」
残り周回はどんどんなくなる。ラスト2周、状況は一気に動く。マイケル・マシからの新たな情報「LAPPED CARS4(NORRIS)-14-31-16-5 TO OVERTAKE SAFETY CAR」
「!!!!!!!!!!!」
ハミルトンとマックスの間にいる車はセーフティーカーを抜いて良い。
先ほどの決定が覆る。ルールに照らし合わせるなら先ほどの決定も含め全てイレギュラー。
ハミルトンの所属するメルセデスチームのオーナートト・ヴォルフはマイケル・マシに呼びかける「マイケル・・・」
感情のこもった「君は何をやっているのか?」と呆れた時に呼びかけるような言葉。
さらに次の情報「SAFETY CAR IN THIS LAP」58周レースの57周目に出る情報だ。
セーフティーカーはこの周回でピットインする。つまり58周目は古いハードタイヤを履いたハミルトンと新しいソフトタイヤを履いたマックスの戦いとなる。
23戦戦ってきた両雄が求めたワールドチャンピオンの戦いは最後に全てが決まる究極の1周となった。
「マイケル、これは正しくないよ」怒りを押し殺すようなトト・ヴォルフの声。
客観的に正しい決定だとは思わない。だが、SCランでのチェッカーでも「それは正しいのか?」と思っただろう。ただ、マックス、レッドブル、ホンダを応援する人にとっては「それでいい」と思う決定だった。
そして歴史に残る最後の1周が始まった。
この1周は本当に映像を見て欲しいと思う。DAZNでは実況のサッシャが実況なのに絶叫。解説の中野信治はほぼ言葉を失う。俺の文章なんかじゃ伝えきれない究極の戦いがそこにあった。
圧倒的なスピード差の中マックスは本来のオーバーテイクポイントではないターン5でインをついた。
あっさりと交わす。ターン5立ち上がりからのストレート、トゥを使い抜き返そうとするハミルトンにマックスは進路を左右に振りトゥを使わせないようにする。
ターン6でインを守るマックスにハミルトンはアウトからワイドにラインを取り、ターン7からの立ち上がりスピードを稼ごうとする。
タイミングが前後していると思うがトトからは「ノーマイケル!ノー!!ノー!!!正しくない!!これは間違っている!!!」とマイケル・マシへの抗議。
そのような中、トラック上では最後の死闘が繰り広げられていた。古いグリップ力の低いタイヤは当然ながら立ち上がりのトラクションもかかりにくい。
だがターン7でしっかり立ち上がりを重視したハミルトンがスリップストリームからターン9でマックスに外から仕掛ける。
「チャンピオンは譲らない!!!」正直すごいと思った。圧倒的に不利なタイヤでハミルトンは王者として最後までコース上で戦っていた。
でも、負けられない。負けるわけにはいかないマックス。
インをがっちりキープして先頭でターン9を立ち上がる。そこからチェッカーフラッグまでがホンダのラストランだった。
58周を終え最初にチェッカーを受けたのはマックス・フェルスタッペン、レッドブル・ホンダだった。
これでワールドチャンピオンが決定。ホンダは30年ぶりのドライバーズタイトルを獲得、マックスは初めてのワールドチャンピオンになった。
その後見たシーンはもうよくわからない。ちゃんと理解できていない。喜ぶレッドブル・ホンダ関係者、俺も様々な感情に襲われ涙した。
勝者から感じたことは多くあるが、ホンダスピリット「諦めない」という事の大切さを改めて感じたし、
最後の結末は空からラストランを見守った本田宗一郎さんの想いが導いたようにしか俺には思えなかった。
そして最高に美しい敗者がそこにいた。父の胸で泣く昨年のワールドチャンピオンハミルトン、インタビューにしっかり答えるハミルトン。
好きか嫌いかと言われると嫌いなドライバーだが、嫌いな理由は明確だ。「彼が強くそして速いから」だ。
色々まだまだ書き足りないが、最高のレース、最高のシーズンを見せてくれたF1に感謝したい。
そして、ホンダからは色々な事を学んだし、本当にありがとうと言いたい。
マックス、レッドブル、ペレス含むチーム関係者、そしてホンダ。
おめでとう!そしてありがとう!!
ちなみに、俺はスマホでDAZNで観戦。リビングで普通に音声アリで見ていて隣には奥さんがいた。
残り周回が少なくなり強く祈り始めた辺りから俺は本当に周りが見えず画面に集中していた。
ボロボロ泣いてもいたので、奥さんからするとかなり異様な景色だったと思ったので月曜朝に「昨日最後って俺どうなってた?」って聞いてみた。奥さんの答えは「何かしらんけど、海外に行ってた」と言われた。
なるほど正しいww
「なんか見たらアカンかなと思って見ないようにしてた」って事らしいので、かなりヤバかったのだろう。それを許してくれる奥さんで良かった。