フレッシュテアラー戦団(1)概略
「おまえは不和をあおり、それを糧としているのだ、セス!」
“躯を引き裂くもの”は微笑んだ。
「誤りを認めよう。つまるところおまえは我らの性分を理解しているのだな。その言葉、わが肺腑をえぐったぞ」
――サングィニウスの貴顕会議にて、ガブリエル・セス戦団長とブラッドエンジェル戦団長ダンテとの争論
出典:https://warhammer40k.fandom.com/wiki/Flesh_Tearers
フレッシュテアラーはブラッドエンジェル後継戦団の中で最も規模が小さく、〈バールの荒廃〉以前には〈戦闘者〉の数がわずか四個中隊にまで払底していた。
彼らは人類の皇帝に忠誠を誓っているが、総主長サングィニウスの遺伝的欠陥による重篤な症にかかっており、その結果引き起こされる凶暴性は、異端審問庁による捜査と異端嫌疑による告発につながったことがある。現在ではその容疑は晴れている。
出身兵団同様、フレッシュテアラーは戦闘中での獰猛さと短気で名高く、遺伝種子がもたらす〈赤き餓え〉と〈黒き怒り〉といった〈傷〉により恐れられている。
その戦い方は狂った屠殺人のようであり、血の呼び起こす憤怒をなんとか鎮めようとして、敵をばらばらに引き裂くのである。戦闘中、彼らのチェイン武器の轟々たる作動音は、獣めいた憎悪のうなりと、ずたずたになった魂の本性である〈赤き餓え〉と〈黒き怒り〉の苦痛によってかき消されてしまう。
フレッシュテアラーの血塗られた激怒は〈帝国〉全域で悪名高い。そしてその戦闘同胞によって行われた蛮行もまたよく知られている。フレッシュテアラーは、ほかの人類からあまりにもかけ離れた蛮性を持つために、たいていの帝国軍司令官たちはよほどの状況でないかぎり、この戦団の助けを呼ぼうとはしない。
この警戒はゆえなきことではない。敵の死骸ではフレッシュテアラーの血の渇きを癒やせないことは一度や二度ではなく、帝国軍司令官の多くは、自分たちを助けに来たはずの戦の天使たちが呪いに屈する姿を、遠くから茫然とながめるだけで済んだことに胸をなでおろすのである。
虐殺の興奮に我を忘れたフレッシュテアラーはしばしば、戦闘が終わったことにすら気がつかず、その武器を味方や守ろうとしたはずの人間たちに向ける。そして、血に濡れた大地と焼け焦げた死骸、そして自分の二つの心臓の鼓動がおさまっていく音だけが残るまで、殺して殺して殺しまくるのである。
これが彼らの真実、彼らの本性である。〈帝国〉の群衆が思い描くような半神ではなく、苦痛と虐殺の夢におのれを失った死の天使たちの真っ赤な正体なのだ。
フレッシュテアラーと他のブラッドエンジェル後継戦団との関係は、よく言って緊張関係である。クレタキアの申し子たちは、彼らを生み出した華麗なる天使たちから堕落してしまっており、サングィニウスの息子たち全員がやがて成り果てる姿をうつした仄暗い鏡像なのだ。
この鏡像を見るとき、他のサングィニウスの貴顕たちは恐怖のともなう恥辱を感じずにはいられない。さらに悪いことに、フレッシュテアラーは〈帝国〉のより広範囲から疑惑をまねいている。フレッシュテアラーと異端審問庁の人びととの間に絶えざる敵意があることは、サングィニウスの末裔とその血に秘められた遺伝的欠陥が断罪される危険をはらんでいるのだ。
事実、〈洋紅の法廷〉にダンテをはじめブラッドエンジェル後継戦団の長らが集まり、フレッシュテアラー戦団長ガブリエル・セスを審問したとき、ブラッドエンジェル至高教戒官のアストラスが介入しなければ、戦団の解体は避けられなかっただろう。
アストラスが未来に何を予見したのか、セスと虐殺者の軍勢にどんな計画を持っているのか、それはダンテ司令官にすら謎である。
〈揺るがざる征戦〉と〈バールの荒廃〉が999.M41に起こった後、衰微していたフレッシュテアラーは、サングィニウスの血脈を継ぐプライマリス・スペースマリーンが大量に投入されたことで完全戦力に回復した。
この新しい〈戦闘者〉たちは、サングィニウスの遺伝種子の〈傷〉により強い耐性を持つと考えられているが、それが本当だとしても、フレッシュテアラーとその制御不能な野蛮性にどのような変化をもたらすのかは、まだ定かではない。
フレッシュテアラーは一般に、ブラッドエンジェルがつちかってきた戦術体系を用いているが、射撃戦より接近戦を好み、ほとんどのフレッシュテアラー・スペースマリーンは、チェインソードやパワーソードといった白兵武器に熟達し、それらをたずさえて戦いにおもむく。
フレッシュテアラーは死地惑星クレタキアを本拠地としている。そこは荒々しい密林惑星で、支配的な生物は6500万年以上前の白亜紀の地球に存在した恐竜という巨大爬虫類によく似ている。
この巨獣を狩って、その戦利品を持ち帰ることが、志願者がフレッシュテアラー戦団に迎え入れられるための通過儀礼としてよく用いられている。
(つづく)
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