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一つの指輪オンラインセッション『毀たれざる誓い』(1)
新発売された「一つの指輪 指輪物語TRPG」のオンラインセッションを始めました。
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ブリー村の仲間たち
北方の野伏フィンディミアは、影の手先との戦いで斃れた父の遺志を継いで、ブリー郷まわりの脅威を討つ勇士。そんな彼は、ある春の朝、東街道で毒矢を受け、馬で逃げてきた旅人の女性を助けます。
ブリー村で女性がかつぎこまれたのは、南門の近くで営業する旅籠「樫太家」。ここの五男のビルは旅人たちから話を聞くのが好きな純朴な青年。そして、彼が姉貴分として慕うホビットの未亡人ベル・コトンは、主人が旅路で亡くなった後、広い世界に旅することを志す女性です。
リンドンからやってきたエルフのリナイスは、かつて愛した人間族の子孫(樫太家の一族)が住むブリー郷を守る使命を自らに課しています。そんなリナイスに街角で声をかけたのは、誰あろう、灰色の放浪者ガンダルフ。こうして、ブリー村に集う人びとは、樫太家の旅籠で冒険に出会うことになりました。
ゴンドールからの旅人
毒矢を受けた女性(名はエラーラ)は瀕死だったものの、ブリーの薬師とガンダルフの助けで一命を取り留めます。彼女が意識を取り戻してまもなく、ブリーの仲間たちはガンダルフとともに、その話を聞くことになります。
私は南のかたゴンドールの都、ミナス・ティリスで生まれ育ちました。我が家は代々、都の守人として仕えてきましたが、私自身は学匠の道を選んだのです。
父は五年前に亡くなりました。死の床で父は私に一つの小箱を手渡しました。そこには古い地図が一枚入っていました。父は、それこそが父祖の守った北方の城の位置を示すものだと言いました。父祖。ぼんやりとは聞いていました。我が家、トゥアレグ家は千年の昔、往古の北方王国に仕える騎士の一族であったと。悪しき輩から国境を守り続けた英傑の一党であったと。かの国が滅び去った時、生き残った者はゴンドールへと逃れ去ったのだと。
父は、一人娘であり、我が家最後の裔である私に、父祖の記憶を伝えたかったのでしょう。私は、学匠として学んだ技を用いて、都で調べをつけました。地図の示す城の位置は、はるかな北、風見丘陵と呼ばれる荒れ野の果てにあるのだと。
ミナス・ティリスを発ったのは去年の秋でした。馬の司の国ローハンの都エドラスで、センゲル王のご厚意をうけて冬を越しました。雪解けが来て再出発。霧降り山脈の西側を北に進みました。道中は、商隊の人びとと同道しましたし、ソロンギルという名のローハンの戦士も途中まで護衛してくれたので、いたって順調でした。
災いが襲ったのは、このブリー郷の東境、風見が丘といういにしえの廃墟の見える街道沿いで野営をした夜でした。眠っていた私は突然の大声に起こされ、わけもわからず馬に乗せられました。商隊の人びとの叫び声の中、誰かに鞭を入れられた馬は、私を乗せたまま、真夜中の道をいっさんに駆けだしたのです。そのとき、肩口に鋭い痛みが走りました。背後からおそろしい笑い声と悲鳴が聞こえる中、私はまもなく気を失ったのだと思います。
次に気がついたのは、もうこのベッドの上でした。宿のご主人の話では、あのかしこい馬はブリー村の門まで私を連れていってくれたのです。ですから、こうして皆さんとお話ができるのも、そこのガンダルフ様と村の方々のおかげなんです。
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ガンダルフに促され、ブリーの仲間たちはエラーラの探索行を彼女にかわって遂行することにしました。向かう先は北の荒れ野の果て、風見丘陵。そこはかつて、ドゥネダインの北方王国と魔国アングマールとの最前線があった場所です。
荒れ野の旅
旅の支度を調えたブリーの仲間たちは、相談の結果、ブリー村から北に向かう古い街道、今では草木の生い茂る緑道と呼ばれるルートを通って、チェト森の北から荒れ野に分け入ることにします。そこからは一直線に風見丘陵へ。
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しかし、緑道と呼ばれるのは故なきことではありませんでした。ほとんど道なき道を行くことになった仲間たち。旅慣れた野伏フィンディミアの技でなんとか進んでいきます。
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緑道から東に離れて荒れ野へ。そこはすでに人跡の絶えた地域です。野営をとりながら進む仲間たちですが、途中、さまようオークの一団から身を隠してやり過ごす危機一髪もありました。
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ブリー村を出てから十一日目。仲間たちは、古地図が示す風見丘陵の奥地へと分け入りました。狩猟中、野生の熊に襲われるアクシデントもありましたが、大きなけがもなく到着です。とはいえ、やはり荒れ野の旅は着実に仲間たちの疲労を蓄積しています。
(つづく)