ヴァンパイア:ザ・マスカレード『ニューオリンズ・クロニクル』(1)マルディ・グラの夜
「ヴァンパイア:ザ・マスカレード」第五版(V5)のキャンペーン(史劇)を開始しました。はじめてV5なので、ルールとデータを確認しつつの進行です。
舞台は現在の米国ルイジアナ州ニューオリンズ。第二審問と“招き”による大変動の中、この大都市はハリケーンの破壊を受け、血族社会に深刻なひびが入っています。そんな中、血盟(PCたち)は、ニューオリンズの闇にうごめく謀略と恐怖に立ち向かうことになります。
プレイヤー・キャラクター
ニューオリンズの夜に現れた出自も目的も異なる三人のヴァンパイアたち。夜の社会を生きぬくために血盟を組んでいる。
ムスタファ・バイーク(hayakawaさん):バヌ・ハキム氏族。スラム出身。古の者との戦乱渦巻くトルコを逃れ、ニューオリンズで警備員を装い生きる、狩る血族。
ロジェ・デュフォール(フレッド緑野さん):トレアドール氏族。ニューオリンズの繁華街フレンチ・クォーターでフランス料理店を営む。血族の「食文化」の確立を目指す。
アイザック(アンドルー・ギルボー)(ふぇるさん):ヴェントルー氏族。ハリケーン災害で滅んだ前公子マルセル・ギルボーの血を引く者(子の子)。身元を偽り、公子殺害犯を探す。
「史劇の信条」(Chronicle tenets)はこれ:
シーン1:祝祭の街路
復讐相手を求めフレンチ・クォーターを彷徨うアイザックは、ムスタファと合流して、血盟の仲間であるロジェの料理店に立ち寄る。叛徒に鞍替えしたマルセル公子の子クリストファーの居場所を探すアイザックに、ロジェは最近、旧友で今は叛徒の指導者ダッチと、スラムの一角で歓談したことを思い出す。今は互いに派閥を分かった二人だが、その友情はまだ絶えてはいない。
クリストファーが市内の別宅で過ごしているという話をしているところに、料理店の前の街路で騒ぎが起こる。ひとりのチンピラとおぼしき男が、ロジェの店の用心棒と悶着を起こしたのだ。彼はひどく酩酊しているらしく、「死者が街路にあふれている」とか「吸血鬼の王が戻ってくる」といったあられもない言葉をわめきちらすと、暴力を振るい始める。
それを止めようとした黒人警官は、ムスタファの「試金石」であり親交のある人物である。ロジェの鋭敏な感覚は暴れる男がヴァンパイアであることを察知していた。このままでは警官の命があぶないと見たムスタファとアイザックは割って入り、この見知らぬヴァンパイアを鎮めると、ひと目につかない路地裏に連れ込んだ。
シーン2:寄る辺なき雛
ヴァンパイアはどうやら右も左も分からないケイティフ(氏族なし)の様子。なだめすかして経緯を聞き出すと、なんと今晩、最近流通しはじめた新種の麻薬「ミッドナイト」をためしてラリっていたところ、気がついたら辺りは血の海、自分はヴァンパイアと化していたというのだ。このあからさまな掟違反に言葉を失う血盟。彼を“抱擁”したのが誰かもわからず、ヴァンパイアをも汚染する麻薬が流れているとはいったい?
彼をいったん保護して状況を聞き出そうとする血盟の背後の薄暗がりから、ノスフェラトゥで公子アントニオの密偵をつとめている女血族エイヴリーが現れる。公子のもとにすぐさま引き立てない彼らを詰問するためだ。血盟は、本来なら公子が任命する鎮守役がいてしかるべきだが、今の公子アントニオにはそれだけの力がないことを指摘して、自分たちがある程度調べた上で公子に報告する、という主張で、エイヴリーをしりぞける。
そして、とにもかくにも、ロジェが所有しているマンションの一室にケイティフを連行することになる。
シーン3:魔薬ミッドナイト
ケイティフの名前はケイレブ。ニューオリンズの貧しいチンピラのひとりにすぎない。だが、突然のヴァンパイア化と血の餓えに戸惑うばかりの哀れな雛である。血の父もわからず、ヴァンパイアのなんたるかもわからない彼は、カマリリャの掟に照らせば即時処刑しか待っていない罪人だ。
血盟は、ケイレブがわずかに残していた麻薬ミッドナイトの粉末を手に入れる。それは黒い粉末で、ロジェの鋭い嗅覚から、普通の化学合成ではとうてい作り出せない、なにか魔術的なものであることが判明した。これは叛徒に与する「蛇」(ミニストリー)のしわざではないか……? 疑念を抱いたアイザックは、以前、自分の教会に息子の麻薬中毒について相談に来たハンナという老婆のことを、目を掛けている信徒との電話の中で思い出す。それもこのケイレブが患ったような症状を呈していたのではなかったか。
アイザックは頼れる情報源であるノスフェラトゥのマロピス・アンブラスにミッドナイトの情報を送る(時差のせいですぐさまの回答は期待できない)。そして、ケイレブにはこの一室から絶対に出ないように言いふくめると、血盟は公子アントニオと話をつけることにした。
シーン4:かりそめの公子
ニューオリンズ・ダウンタウンの名所ジャクソン広場は、マルディ・グラの夜に人間たちが思い思いに楽しんでいる空間のひとつである。しかし、その中にある博物館「カビルド」は、閉館時間を過ぎているため、人影もない。公子とのアポをとってやってきた血盟は、公子の従僕で護衛である巨漢ラドゥに案内されて、博物館内の広間、公子アントニオが謁見に使う場所を訪れる。
そこで待っていたのは、トレメール氏族の公子アントニオ。マルセルの後を襲ったが、いまだその実力を証明しきれていない「かりそめの公子」である。そして、そのそばには側近であるエイヴリーの姿も。すでにケイティフとのやりとりを聞かれている以上、隠すのは得策ではないと判断した血盟は、公子にこれまでの経緯を打ち明ける。
ミッドナイトの粉末は、トレメールの祭儀所に送られることとなり、問題はケイティフ・ケイレブの処遇にうつる。血盟は、ミッドナイトの蔓延と掟違反の血族の真相を究明するための手がかりとして、ケイティフを泳がせることを主張。それを聞いた公子アントニオは我が意を得たりをばかりに、「魔薬」の流通元の解明とその壊滅を血盟に求めるのであった。
帰り際にロジェを呼び止めた公子は、「友人」の動向についてたずねる。はぐらかすロジェ。公子はどうやら叛徒が一枚噛んでいるとにらんでいるらしい。
アクト・エピローグ:ジャクソン広場
謁見を終えてジャクソン広場に出た血盟。まもなく夜が白んでくる時間。祝祭を楽しんだ人間たちも眠い目をこすりながら家路についていく。血族たちもまた、陽の光を避けるため、死の眠りの待つ寝処へと帰っていくのだった。
(つづく)
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