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ヴァンパイア:ザ・マスカレード『ニューオリンズ・クロニクル』(3)暴力と魅惑

 ケイティフを公子の一派に引き渡した血盟。魔薬の出所について調べを進めていく。

シーン1:街路にて

 飢えが高まっているアイザックが帰宅した後、ロジェとムスタファは麻薬「ミッドナイト」にかかわっていると目される叛徒たちの調査を進めるべく、そのリーダー、ブルハー氏族のダッチにわたりをつける。従僕の青年を通してダッチから指定されたのは、彼の縄張りであるセントラル・シティ地区のジャズクラブ「マホガニー・ホール」であった。

 気がかりなことに、ニューオリンズ市警のパターソン刑事の捜査はまだ続いており、とうとうロジェの料理店までやってきたという。マスレカレードを破らないように、より一層注意しなければならないだろう。

シーン2:堕落せし貴族

 一方、教団拠点で飢えを満たしたアイザックは、兄分にあたり、マルセル前公子の継嗣で唯一生き残っているクリストファーの居宅に向かう。クリストファーは叛徒に与していることもあり、「ミッドナイト」の情報が得られるのではないかと期待してのことだった。

 しかし、用心棒を魅了して居宅に入ったアイザックを待っていたのは、女たちをはべらせて、血の饗宴にふける自堕落なクリストファーの姿だった。ケイティフが起こした騒動もあまり気をとめることない兄分の姿に驚くアイザック。反面、クリストファーはアイザックが求める公子の死の復讐には、ひどくおびえた表情を見せ、もうギルボー屋敷には行ったのかと不思議にも問うのであった。

シーン3:追う刑事

 「マホガニー・ホール」に車で向かうロジェとムスタファ。途中、尾行する車にムスタファが感づく。果たしてそれはパターソン刑事であった。ぴったりとついてくる刑事に業を煮やしたムスタファは車を降りて刑事を誘導。そのすきにロジェは店へ。そして路地裏での追跡劇は《隠惑》の力に長けたヴァンパイア・ムスタファに軍配が上がった。

 一方、クリストファー宅から戻り、ギルボー屋敷について調べを入れようとするアイザックのもとに、情報源であるノスフェラトゥ・マロピスから不可解な情報がもたらされる。曰く、30年前にニューオリンズに「ネルガルの牙」と呼ばれる神秘的な秘宝が持ちこまれた形跡があるというのだ……

シーン4:マホガニー・ホール

 治安の悪い地区にあるが、雰囲気のよいジャズクラブ「マホガニー・ホール」では、叛徒のリーダー格でありロジェの旧友であるダッチが待っていた。カマリリャ側である血盟に彼が会う気になったのは、「ミッドナイト」の流通とそれがもたらす暴力を、ダッチが深く憂えているからだった。

 ダッチは、敵味方の垣根を越えて情報を伝える。叛徒の盟友であるはずのミニストリー氏族のマノンが、何を思ったのか新興のカルト「イエロー・キング」を通じて、出所が不明で暴力的な効果のある「ミッドナイト」をダウンタウンにまき散らしはじめたのだ。結果、ケイレブによる殺人事件と街路での騒動が起きてしまった。カマリリャ打倒を目指しているが、マスカレードを破る気はないダッチにとって、これはゆゆしき事態である。

ダッチ

 ダッチはこの「身内の恥」を血盟に明かすことで、「ミッドナイト」流通の阻止とマノンの真意の探索を求めるのだった。

シーン5:襲撃

 「マホガニー・ホール」を出て一路、車でフレンチ・クォーターに戻るムスタファとロジェ。そこに二台のバイクが迫ってきて停車を強制しようとする。ムスタファはとっさに《瞬速》を発動して運転をかわり、バイクたちをかわしたが、うち一台は驚くべきことにショットガンをためらいなく射撃。まともにくらったロジェのセダンはパンクして路肩に激突、大破してしまう。

 ここで“獣相の失敗”を得たムスタファは破壊衝動に呑み込まれ、人間が往来する街路だというのにかまわず、ただちに拳銃で反撃。精確な射撃でショットガンのバイカーを撃ち落とす。ぴくりとも動かなくなった仲間を守るつもりか、もうひとりのバイカーが飛びこみ、ムスタファとの間で激しい銃撃戦となった。

 銃撃戦はムスタファの勝利となり、肩を撃ち抜かれたバイカー。しかしその傷は急速に治っていく。割れたヘルメットの中からのぞく若い女の顔には、明らかに牙がはえていた。血族だとわかったムスタファは飛びかかり、組み伏せようとするが、次の瞬間、相手は怒りと痛みのせいか狂乱状態に陥った。

 暴走したヴァンパイアを相手にするのは得策ではないと判断したロジェとムスタファは、セダンをガソリンで爆破するとただちに逃走。あとには咆えたけるヴァンパイアと燃え盛る車が騒然とする街路に残された。

シーン6:売人と教団

 翌晩、ロジェとムスタファはそれぞれに狩りに出かけた。前夜の大立ち回りで血潮の消耗が激しかったからである。

 一方、アイザックは教団信徒の息子で「ミッドナイト」を買っている青年の部屋に、屈強な信徒たちとともに押し入っていた。

 おびえきった青年に指示して売人と接触させたアイザック。すぐさま売人を殴って確保すると、バンで教団拠点まで連行して尋問を開始した。

 麻薬の売人の男は、黄色いジャケットを着ており、「イエロー・キング」の一味である。しかし、彼は末端の売人であり、ポンチャートレイン湖の岸にある廃倉庫に定期的に行って、報酬と麻薬の在庫を受け取ってくることしか知らなかった。アイザックはヴァンパイアの本性を垣間見せる〔睨視〕のパワーを使って売人を死ぬほど怖がらせてから解放したのであった。

(つづく)




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