ヘスタールとコーラートの神話:なぜ煙は空に昇るのか
*これはルーンクエストの背景世界グローランサを題材に、ぴろきが創作したお話です。公式設定にはありませんのでご注意ください。
はるか昔、太陽がまだ空を巡っていなかった頃、風と火の精霊たちはしばしば争いを繰り返していました。その中でも、風の精霊ヘスタールは特に荒々しく自由奔放で、束縛を何よりも嫌う若者でした。
ある日、ヘスタールは炉に住む火の女神マホーメイに出会いました。マホーメイは小さく控えめな精霊で、炉の中で穏やかに燃えていました。
ヘスタールはマホーメイを嘲り、「お前は弱いな」と言いました。「地面に縛られて縮こまったままか。俺はオーランスのように自由に空を駆け巡れるというのに。」
しかし、マホーメイは謙虚ながらも自分の役割に誇りを持っていました。「私は人々に仕えています。暖かさと光、そして命を家々に与えているのですから」と彼女は言い返しました。
ヘスタールはその言葉を聞いてさらに興味を持ちました。「お前の限界を試してやろう」と言って、彼は風で炉をかき回し、マホーメイの炎を激しく踊らせました。最初、人々は強い熱と光を喜びましたが、ヘスタールは調子に乗り、やがて彼はマホーメイの火を大きく煽って、家や人々を焼きそうなくらいに強くしてしまったのです。
人々の嘆きを聞きつけたのは、祈祷師コーラートでした。コーラートは、ヘスタールのいたずらを一目で理解しました。そして、この荒々しい風を叱責しました。「お前はオーランスの子でありながら、人々を苦しめている。お前の言う自由とは何だ?」
ヘスタールは鼻で笑いました。「俺は大地やら義務やらに縛られるつもりはないぞ。俺は俺のやりたいようにやる、なぜなら俺は自由だからだ!」
コーラートはしばし考えた後、ヘスタールに取引を持ちかけました。「もし本当に自由に動き回りたいのなら、誰も経験したことのない道をお前に与えよう。しかしそれには、お前が人々を再び傷つけないと誓わなければならない。」
ヘスタールは興味をそそられ、コーラートの提案を受け入れました。するとコーラートは疲れ果てていたマホーメイに向き直り、古の調和の秘密を耳打ちしました。
すると、マホーメイが燃えている場所ではどこでも、ヘスタールの風が彼女の力を空へと持ち上げるようになったのです。
煙は天へ昇り、ヘスタールは永遠に自由に舞うことができるようになりました。そして、彼が炉を荒らすことは二度となくなりました。
人々はコーラートの知恵を称えました。それ以来、オーランス人は火から立ち上る煙をヘスタールの永遠の踊りとみなし、彼がコーラートと交わした約束を果たしている証だと考えました。
こうして、煙が昇る姿は、自由と義務の釣り合いを示す、生きる教訓として語り継がれるようになりました。
(了)