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最近の母を見て思うこと


猫を飼うことになった。
と言っても、母の話。
母は田舎の一軒家に、一人で住んでいる。
花好きの、なかなか元気な人。
かねてからの犬好き猫好き。
近所の猫ちゃん、ワンちゃんを見かけては、話しかけている。
「いつかは自分で飼いたいんだけどね」
と昔から言っていた。


父が他界して10年。
自由になり、その気になれば、ペットはいつでも飼える状況。
それでも「無理だからね」が口癖だった。


父は「ザ・昭和」というような人だった。
父は仕事だけで、家事をせずに命令ばかりする。
そして母の言う事、やることに
常に文句をつけていた。

自分が一番えらく、気に入らないと怒る。
母が自由になにかをする事なんて無理だった。
母はどうせ文句を言われるので、
自分の希望をいつも抑えていた。

晩年は反抗して好きな事をやり始めたが、父の小言が、いつもついて回った。

そんな父が癌で他界してから10年。
母はやっと自由になったけれども、
長年の癖はなかなか抜けず
「どうせ無理だろう」
「きっとできない」
「何か言われそう」(誰に?って話だけども・・)
そんな思いが、いつも強いようだった。


先月、帰省した際、犬猫のテレビの録画を見ながら
「かわいいよね~~。いるといいよね~」と母。
「飼えば?誰も文句言わないよ?」
「そうなんだけどね・・・」

さすがに犬は毎日の散歩が無理そうなので、
猫を飼えばいじゃんという話になった。

地方なので、ペットショップがない。
向かいのお宅の猫ちゃんは、どうやってこの地域に来たのかを母に聞くと
「息子さんが連れてきてくれた」らしい。
そうか、その手があったのか。
なら、私がこちらで猫ちゃんを決めて、実家に連れて帰ればいいんだね。

「私、買うなら "ぶちゃねこ" か "短足猫" 
って決めてるの」

ん?
早速、ググる。
「エキゾチックショートヘア」か「マンチカン」って事らしい。
検索ってすごい。
「ぶちゃねこ→ブサカワ猫→エキゾチックショートヘア」で出てきた。


興味もあったので、
「明日、近くのペットショップ見に行ってくる」と母に告げた。

そこで見つけたのは、ペルシャとマンチカンの交配猫「ミヌエット」だった。
ミヌエットはすべてが短足種ではなく、
長足もいるらしい。
ここにいたのは長足のミヌエットだった。
「長足だってさ。でも写真撮ってきたわ」
「短足いないのか~~残念。でも、この子かわいいね」
その日の会話は、ここで終わった。


翌日、電話で
母「昨日の夜中も写真を眺めたんだけど、長足でもいいかなって・・」
私「ん?この子気に入った??」
母「ん~~でも飼えないよね~~。飼うのの大変だよね~~」
この日の会話もここまで。
かわいいね どまり。


次の日に電話をすると、
またもや夜中に目を覚ますたびに、スマホの写真を見ていたらしい。どれだけ好きなのか…。
そんなにかわいいのか?なら飼っちゃう?

「うーーん」
「んじゃ、とりあえず不安を打ち消すためにいろいろ聞いてくるよ。飼い方とか、毎月の費用とか」
と、私は再度ペットショップへ。

ペットを飼ったことがない私は、あれこれと質問してきた。
毎月の餌代、餌のあげ方。ケージ飼いか否か。
必要なものは?どのぐらい手間がかかるのか?

聞いてきた情報を母に伝える。

母「飼えるかな・・・・?」
私「どういう意味で?世話ができるかって事?」
母「いや、世話はできると思うけど・・・」

よくよく話を聞くと、母は自分に何かあった時、
動けなくなったり施設に入らなくてはいけない時の事が心配なようだった。
この猫はどうなるの?って。

その点ならは大丈夫。
私が引き受けるきマンマンでいるんだから。

「それなら・・」
とりあえず一晩考える事にした。
落ち着いて、考えようって。

翌日、
「うん、飼う!」
って元気な返事が返ってきた。

すぐにペットショップで契約を済ませた。
その後、必要な道具を実家に送るように、ネットで購入。その荷物が到着後に、私が猫ちゃんを連れて帰るという段取りに。
それまではお店で預かってもらえるらしい。
準備するのに時間がかかるから、とてもありがたい。

もうすぐ、長年の母の夢が、叶いそうで嬉しい。



もう一つ。冬の間の出来事。
母はテレビでスクラッチアートをやっているのを見て興味を持ったらしい。
でも、やりたいけれども、買いに行けない。
田舎なので最低限の食材などは揃うが、車がないとやはり不便。ホームセンターも百均にも行けない。

だからいつも
「できない」
「買いに行けないから、無理」
その思考ループにいた。

この話を聞いた時に、
「いやいや、そんなことで諦めないで。
私、百均すぐそこだよ。買って送るよ。」
そう伝えた。

そんなことで諦めてほしくない。
もっとやりたい事をやってほしい。
望みを叶えてほしい。

母のほしいもの、やりたい事を聞いて、
私が買って送る。
そりゃ、自分で買うよりは高くつくけど、
やりたいことができるじゃん。

スクラッチアートにハマりまくり、
大人の塗り絵にまで発展。
春までは、ずっと毎日やっていたらしい。
「たのしい~~」
そう言っていた。
趣味が増えたと喜んでいた。
やることがない、なんて言ってたのがウソみたい。




母を見ていて思うのは、
「どうせ無理」
「きっと無理」と、
己で自分の世界の限界を決めてしまいがち、
という事。

だからその世界の限界を、
自分でかけた鍵を解き放ってほしかった。

「そんなもの、自分で自分にかけた呪いだ」
「もっと自由でいいんだ」って。

そう思って、残りの人生、この世界をたくさん楽しんでほしい。


このような母が私の世界にいるってことは、
きっと私にも、この部分があるって事。
私も、制限を自分でかけている、
本当は自由なのに、自分で閉ざしてる。
ひとつずつ制限を外していけるといいなと思った。


この世界は
「望みを放てば叶う仕組みになっている」
と聞いたことがある。
でも実際に叶わないのは、
本当に心から、心の深い部分から
「望みは叶うもんだ」って思っていないから。

「どうせ叶わないかも」っていう気持ちが、
叶わない現実を引き寄せているって。


最近の母を見ていると、
「望みって叶うんだな」って思えてきた。
意外と簡単なんだなって。
一言、気持ちを伝えるだけで、周りは動き出すんだなって。



すべての望みが簡単にいく訳ではないけれど、
「叶うのが当たり前、当然のこと」
って感覚になれるといいな。

「蛇口をひねると水が出るのが当たり前」
のように、
「望めば叶うのが当たり前」

そんな風に、心のずっと深い部分で感じられたら、いいなって思う。

今週末は、猫ちゃんを連れて帰ろうっと。
「望みって案外簡単に叶うじゃん」って感情が、
また一つ上書きできるといいなと思う。


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ぴりか369
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