思い出すのは

 フランス旅から戻ってそろそろ1ヶ月が経とうとしている。仕事と家のこと、雑事などに追われる日々だ。それでも毎日、何かしら、旅の断片みたいなものを頭の中に再現したりしている。飴玉をなめるみたいに、風景や会話や音、匂いなどを味わう。これも旅することの楽しみのひとつと思う。

 さっきから思い出しているのは、プロヴァンスで毎日のように飲んだロゼワイン。プロヴァンスといえば、ロゼ。初夏のバカンスにあれほど似合うワインはない。滞在していたシャンブルドットから、歩いてわずか2分くらいのところに、番地を店の名前にしたワインバーがあった。1人で入りやすくて、軽く食べられる場所を宿の人にすすめてもらったのだが、気に入った。2晩つづけて通ってしまった。

 ここで飲んだロゼは、初めて見る形のワイングラスに注がれていた。グラス部分の底、というのだろうか、普通は脚を真ん中に曲線を描いている。それがまっすぐなのだ。
あのグラスと、淡いピンク色の液体が忘れられない。




いいなと思ったら応援しよう!