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Sexy Zone《THE FINEST》があまりにも最高だったためにK-POPの話をしようと立ち上げたnoteの一本目がセクゾの話になった件

タイトルが長い。

はじめまして、pireum(ぴるむ)です。
K-POPオタクが高じて韓国の音楽ならアイドルからヒップホップからバラードからなんでも聴くようになってしまった音楽オタクです。
特に大好物は「シティ・ポップ」と呼ばれる音楽たちです。


そんな韓国オタク、シティ・ポップやらKドルやらについて語りたくてnoteを作ったにも関わらず、まさかのジャニーズ事務所所属・Sexy Zoneの新曲MVが良すぎる話で初回noteの筆を取りました。

今回の《THE FINEST》、シティ・ポップのオタクとしては音楽・MVともにドンピシャ好みだったので、それぞれについて書きたいだけ書き連ねてみようと思います。

ところでnoteだとxyが赤字にできないらしくて泣いた。


①楽曲が最高 −これが「今」のシティ・ポップだ−

事務所の求めていたものはシティ・ポップだったんだろうな〜と想像がつく一曲。
ちなみにシティ・ポップの代表的な曲と言われるのが、竹内まりや《プラスティック・ラブ》や松原みき《真夜中のドア〜stay with me》です。


さて、シティ・ポップっぽい音楽の特徴を私なりに挙げてみると、
・ディスコやファンクの要素をベースに、ソフト・ロック(AOR)、ニュー・ウェイヴ、プログレッシヴ・ハウスと呼ばれるジャンルの要素を取り入れている
・BPMが90後半〜120程度(平均100台)
・歯切れの良いカッティングのギターやベース
・いかにもシンセサイザーらしい音
・キラキラした音(ウィンドウチャイムなど)
・コーラス部(サビ)に入る金管楽器の音
・ドラムの音にかけられたゲートリバーブという加工
あたりでしょうか。

このうち《THE FINEST》は最後の2つを除く全要素が含まれています。

ただし、そもそもシティ・ポップっていう「音楽ジャンル」があるかと言われると難しい問題です。その辺についてはまた別記事で追々書くつもりなので、気になる人はフォローしていただいて気長にお待ちくださいませ…。


もう少し詳しく見ていきましょう。

1.ファンク×ソフト・ロックをベースにしたアレンジ(たぶん)

私は正確な音楽ジャンルの判別が苦手なので雰囲気で話してますが、《THE FINEST》はファンクベースのソフト・ロックという印象です。

ファンク感がわかりやすいポイントは、
・イントロ〜1番Aメロでかなりハッキリ聴こえるベース(これは3つ目に書いた「歯切れの良いカッティングのギターやベース」って話でもありますね)
・「The finest daaaamn」「You got this moove」の「デァ〜〜〜ム」「ムゥ〜〜〜ヴ」と唸るような歌い方
・同じ箇所でかすかに聴こえるゴスペルっぽいコーラス など。

全体の自然な聴きやすさとオシャレさはソフト・ロックの成せる技といったところでしょうか。(ちなみにセクゾでよりファンク色が強い曲は《ROCK THA TOWN》や《LET'S MUSIC》です)

まあNulbarichが作ってるし、ライナーノーツでも「プリンスの系譜に連なる」って言ってるくらいだから、音楽の系統としてはファンク・ソフト・ロックとかで合ってるんでしょう。知らんけど。


2.BPMが100台

アナログに手打ちでBPMを測ったところ、おおよそ108くらいでした。
ちなみにBPMは「1分間に何拍あるか」を示す値です。BPM108なら「早くも遅くもないテンポの曲」と言えます。


3.シンセ・キラキラ音

0:02~の音やAメロで鳴っている和音、いかにもシンセ〜〜!!という音だと思うのですが、それのことです。
それから先ほども書いた「The finest daaaamn」のところで鳴ってるキラキラキラキラ~~~✨みたいな音も、シティ・ポップではよく使われます。

1~3の要素によって、《THE FINEST》はシティ・ポップらしさ、80'sらしさがしっかり感じられる一曲に仕上がっています。


一方、ここにニュー・ウェイヴっぽい音色やトランペットの音、ゲートリバーブ、ボーカルのリバーブ加工などをかけると、どちらかといえば野暮ったく古臭い印象になってしまうでしょう。

しかもリード曲である《Forever Gold》は、
・ニュー・ウェイヴ(これも音楽のジャンル名です)っぽさ全開なシンセ
・ゲートリバーブのかかったドラム(なんとなくドラムがジャリジャリした音になっている感じ、伝わりますか?あれがゲートリバーブという加工です)
・リバーブのかかったボーカル
という80's要素てんこ盛り、その分メロディーラインや曲の構成をジャニーズど真ん中に仕上げた一曲。


リード曲とのバランスを取りつつ、ここ数年のセクゾらしい都会的な音に仕上げるために、《THE FINEST》はあえてスッキリしたアレンジにしたのかもしれません。
結果として《THE FINEST》は、「今っぽくてオシャレなシティ・ポップ」になっていると言えそうです。



②MVが最高 −シティ・ポップ「だから」MVはアニメ仕様−

たぶん普通のアイドルだったらしないでしょう、MVを本人要素ほぼないアニメーションにするなんてこと。
TwitterやYouTubeのコメント欄を見てても、「なんでアニメ?」と思っている声が少なからず見られました。

ていうか本人映らないMVで怒らないセクラバさんの治安の良さよ…。ファンも最高じゃねえか。

でも、80'sをテーマにしたアルバムでシティ・ポップの曲を作るなら、MVはアニメにする以外ないんですよ!!!!!

その理由を知るには、シティ・ポップというジャンルが日本国外でブームになった経緯を知る必要があります。


まず2010年~12年頃にかけて、欧米のネットの一部で「ヴェイパー・ウェイヴ」と呼ばれる音楽が流行しました。
サブカル全開なジャンルなので好きな人はとっくに知ってるだろうし、苦手な人はとことん苦手だろうジャンルの音楽です。
「ヴェイパー・ウェイブっぽいって何?」と言われたら私が真っ先に答える曲のリンクを貼っておきます(5:18~《BEAUTIFUL人命》)。

ヴェイパー・ウェイヴは、既存の曲を極端に遅いテンポで再生したり、気持ち悪いくらいにリバーブをかけたり、曲の一部を何度も繰り返したり…という方法で作品を作るのが特徴。わかりやすく言えば「音楽のコラージュ」みたいなものです。


ただヴェイパー・ウェイヴはあまりにもニッチなので、次第に「普通に音楽として楽しく聴ける」作品が増えてきます。これがフューチャー・ファンクというジャンルです。
フューチャー・ファンクの代表作の一つが、韓国のDJ・プロデューサーであるNight Tempoがアレンジした《プラスティック・ラブ》。原曲は竹内まりやが歌っています。
またMACROSS 82-99によるアルバム『SAILORWAVE』収録曲は、そのまま歌詞つけてセクゾに歌ってほしいものばかりです。

ちなみにNight Tempoは、みんな大好き《キスからはじまるミステリー》の山下達郎ver. をリミックスしてつべに上げています。このバージョンでカバーしてくれケンティーよ。


フューチャー・「ファンク」の名前の通り、踊れる楽しい曲が多いのが特徴。ファンクやディスコの名曲を勝手にリミックスしてネットに公開するジャンル…とも言えます。

フューチャー・ファンクで元ネタにされた曲の中には、2000年代中頃から海外のクラブDJに人気だった「1980年代の日本で作られたダンスミュージック」も多く含まれていました。
こうした「80'sの日本製ダンス曲」として、2010年代中頃から世界的な注目を集めたのが、シティ・ポップというジャンルの音楽だったのです。


ここでもう一度フューチャー・ファンクに話を戻すと、すでに書いた通り、フューチャー・ファンクはもともと「既存曲のリミックスを勝手にネット上にアップロードする」文化です。
アップロード先は音楽SNSであるbandcampというサービスが中心でしたが、そこからYouTubeに転載される作品も少なくありませんでした。

そんな転載時につける映像として注目されたのが、1980~90年代に放送された日本のアニメです。これらのアニメは、80's日本のダンスナンバー≒シティ・ポップの雰囲気を際立たせるのにうってつけでした。
こうして『セーラームーン』や『うる星やつら』の切り抜き映像がフューチャー・ファンクのMVとして使われるようになり、YouTube上で広がりを見せたのです。

2~3秒のアニメーションが延々繰り返されるのも、フューチャー・ファンクのMVが持つ一つの特徴。
これはフューチャー・ファンクの祖先であるヴェイパー・ウェイヴが「曲の一部を何度も繰り返す」手法を用いていたことが影響していると思われます。

そうこうしているうちに、フューチャー・ファンクの元ネタとして注目されたシティ・ポップと80's風のアニメも結びつけて考えられるようになっていきました。

ちなみになんでアニメだったのか?そもそもなんでそんなに80'sにみんな惹かれるのか?みたいなところは語ると普通に4万字とかになるので別記事にします。


このように見ていくと、なぜシティ・ポップの楽曲である《THE FINEST》のMVが実写ではなくアニメーションだったのかがわかってきます。
すなわち、シティ・ポップというジャンルのMVには80's風のアニメをつけるということが、インターネットの世界での「お約束」だからです。
《THE FINEST》ではしっかりその「お約束」を守っている上、2~3秒の映像の繰り返しという要素も見られます。

このシーンはわかりやすいですね

つまり、このMVを見るだけで、
・《THE FINEST》は80'sのシティ・ポップを意識しているということ
・インターネットの世界の「お約束」をわかっているスタッフがいること
・=インターネットに公開する前提で曲もMVも作られていること
・日本を代表するエンタメとして持つべきわかりやすさ・クオリティも同時に追求されていること
が感じられるのです。


何がニクイって、ディズニーと並んで肖像権と著作権にうるさいジャニーズ事務所に所属するSexy Zoneが、
著作権ガン無視カルチャーことヴェイパー・ウェイヴやフューチャー・ファンクに由来するスタイルを、
オリジナリティとして取り入れてしまっていること。

サラッとインターネットカルチャーを取り入れつつオシャレにまとめているあたり、
どんな変な歌でもカッコよく歌いこなしちゃうジャニーズ・セクゾにしかできないことをやっている感じがしてグッときます。


まとめ

そんなわけで、シティ・ポップ大好きマンから見ても、《THE FINEST》は名曲・名MVであるというお話でした。

ジャニーズってただカッコいいとか、ただオシャレだとかいうんじゃなくて、音楽として・文化としてよく考えられた作品が作られているということが伝わっていれば幸いです。


《THE FINEST》と『ザ・ハイライト』が、アイドルオタクを超えていろんな音楽オタクに届きますように!




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