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お助け屋と初恋王子 第六章 後編②

   【9】
 
 
 襲撃に適した時間帯は深夜が基本パターンであるが、真っ昼間にそれをやってのけるのは大胆を通り越して無謀極まりない。ましてや人通りの多い街中ともなると、これは迷惑行為としか言いようがないだろう。
 
 ソーマはミレアナ王国総領事館の玄関口に立つと、手にしていたバズーカを何の躊躇いもなくぶっ放した。
 
 ドゴーーーーンッ!
 
 爆音が鳴り響き、煙が辺りに拡散していくのを眺めながら、ソーマはニヤリと笑った。
 
「ちょいとごめんよ~。迷子のカンフー娘を引き取りに参りましたぁ」
 
ソーマはバズーカを放り出し、拳銃を手に領事館の中へ突入していった。
 
「あーあ、派手な兄ちゃんやのう」
 
「つうか、こんなアホな作戦考えたん、麟やろがっ」
 
「大丈夫ですか、コレーッ! 人が集まって来てますよっ。つうか、いきなりバズーカで入り口ぶっ壊しますか、普通っ!」
 
星也、月也、そして慎也がその後に続いた。星也と月也は愛用の拳銃を、慎也は木刀をそれぞれ手にしている。
 
「つうか、星也さん、月也さん。あなた達仕事はどうしたんですか?」
 
走りながら慎也はふと疑問を口にした。
 
「んなもん、水遊びなんざ午前中で終わるがな」
 
「僕は当番の先生に業務を引き継いできたし」
 
「はあっ?」
 
慎也は唖然として二人の背中を交互に見た。
 
「それに、こんな楽しいこと参加せえへんて勿体ないやん」
 
星也は振り返りざまにそう言うと、吹き抜けとなっている二階の廊下に向かって銃を構えた。
 
「さて、まずはひとーりっ」
 
楽しげな声をあげながら引き金を引く。慎也は思わずその場にしゃがみ込んだ。銃声が響き渡り、呻き声の直後、慎也の背後でドサリと何かが落ちる音がした。
 
 慎也が恐る恐る振り返ると、お約束のようにダークスーツの男が気を失って転がっていた。
 
「ほい、ふたーりっ」
 
星也は銃を素早く左手に持ち替えて反対側を撃つ。その間にもう一丁の拳銃をヒップホルスターから抜きだし、また別の方向を撃った。
 
(は、速いっ)
 
慎也は呆然をしながら星也の鮮やかな銃捌きを見つめた。
 
「慎也君っ、今のうちにソーマ君を追ってっ」
 
「は、はいっ」
 
月也の声が耳を打ち、我に返ると、慎也は目の前の螺旋階段を駆け上がった。ちらりと視線だけ振り返ると、星也と月也は背中合わせになり、互いを援護しながら先に進むソーマと慎也をフォローしていた。さすがプロというべきか。慎也は前を向くと、ソーマの後を追った。
 

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