『カンパニー・メン』(2010)

アメリカ社会の不況と格差拡大をテーマにした社会派作品。エンタメ要素は少ないから、ヒットは期待できない。よくこんな作品をハリウッドが制作したものだと思う。ベン・アフレック、トミー・リー・ジョーンズらのスターも意気に感じて出演したはずだ。格安ギャラで出ているのではないか。

暗く重い内容だが、たたみ掛ける話術に隙はなく、最後までグイグイ引っ張られる。中で特に興味を惹くのが、脇役のサリーだ。この中年女性は、経営不振に陥った会社の人員整理を担当している。感情にとらわれることなくテキパキ首切りを進め、社員の憎悪を一身に集める。

副社長のジーン(トミー・リー演)の愛人となって同棲しているが、そのジーンにもあっさりクビを言い渡す。そしてサリー自身も、首切りの対象にならない保証はない。そこにアメリカ社会の非情とプロフェッショナリズムの凄みが垣間見える。勝ち組はどこまでも勝ち、負け組は止めどなく負ける。

こんな社会では暮らしたくないなあとは思うが、一方でこの厳しさが無双の強者を生み、アメリカというGDP世界一の経済大国を創り出し維持する原動力になっているのであろう。

会社は終身雇用で安定の恩恵を与え、社員は恩返し感覚で滅私奉公するという、かつての情緒的日本型雇用形態が機能した牧歌的時代は、遠く去った。

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