第84話『海でまったり』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第84話
『海でまったり』
海に浮かぶ一隻のボート。その上に三匹の動物達が集まっていた。
「イタッチさん。どうですか、釣れました?」
釣り糸を垂らすイタチにアンが尋ねる。
「まだだな。焦っても釣れるものじゃない。ゆっくりやろう」
波の音を聞きながら釣りを続けるイタッチ。イタッチのいる甲板の反対側では、ダッチが暴れていた。
「こんなこと何時間もやってられるかァァァ!!!!」
釣り糸を釣り回し暴れ回るダッチ。最初の一時間は大人しく釣りをしていたダッチだったが、三時間を過ぎたあたりから暴れ始めた。
「静かにしてろよ。ダッチ……」
「ダッチさん。船が揺れてます……」
近づくと巻き込まれるため、離れたところから注意をする二人。
「なんでオレ達がこんなことやってないといけないんだよ!!」
暴れ回るダッチにイタッチは事情を振り返る。
「しょうがないだろ。アパートの近くで工事してるんだ。こういうところの方が次の計画を立てやすいだろ」
「だからってなんで釣りなんだよ」
「何かしてた方が落ち着くだろ〜」
イタッチの竿が引っ張られて、「来たな」と引っ張り返すと三十センチ以上の魚が釣れた。
「あ、私の方も来ました!!」
アンも魚を釣り上げる。
ダッチの方は何も釣れることはなく、ずっと釣竿を垂らしたままだ。
ダッチがこうして不機嫌なのも、このようにダッチだけが一度も釣れていないからだ。
「イタッチさん、場所を変えてみたらどうですか?」
ダッチの様子を心配してアンはこっそりイタッチに相談する。
「ここが一番良い場所なんだけどな」
イタッチはバレないようにダッチの方をチラ見する。やはりまだ釣れる気配はない。
「しょうがない。移動するぞ」
イタッチは竿を上げると船の操縦席へと向かった。
「移動するのか?」
集中力を切らして足でステップを踏んでいたダッチは、イタッチの動きに気づく。
「ああ、移動すれば釣れるかもしれないしな」
イタッチは船を操縦する。波に揺られて青い世界を進んで適当な場所で船を止めた。
「ここも俺オススメの場所だ。ここなら今度こそはな」
「俺が悪かったんじゃねー。あの場所が悪かったんだ。今度こそは釣れるはずだ!!」
静かな場所で作戦会議をしようという当初の目的を忘れて、ダッチは魚を釣り上げることだけを考える。
イタッチ達も気を遣い、ダッチが釣れるように願うのだが……。
「……あぁぁぁっ!!」
結局、新しく移動した場所でも釣れることはなかった。
「イタッチさん、もう一度場所を……」
「変えても意味ないと思うぞ……」