第10話  【メタルハート 10話 老人】

 メタルハート 10


 著者:pirafu doria
 作画:pirafu doria


 第10話
 【メタルハート 10話 老人】


 地下の奥にいたのは老人。その老人の名は……。

「私がダードゥだ」

 雲鼠(グリーズ・ニュアーズ)のボス。ダードゥ。

 闇世界の売買人であり、あらゆる武器を販売している。

 武器を購入するのは、犯罪組織や反乱軍。それにより多くの犠牲が生まれる。

「堂々と出て来るなんて、自信があるのね」

 アイサがそうダードゥを挑発する。

「ああ、君たちも聞いているだろう。私の実力を……」

 ダードゥは過去7年間。指名手配されていながら、一度も捕まったことがなかった。

 ダードゥは何度も目撃され、このように基地を襲撃されたことも何度もあった。

 十聖の百の兵を連れて、ダードゥの基地を占拠したこともある。しかし、どの時もダードゥは捕らえることができなかった。

 それはダードゥの力。単純な戦闘能力。

 十聖にも匹敵する戦闘センスを持っており、魔法も剣の腕前も、何においても最強クラスと言われる人物である。

 有名な冒険者が何人もダードゥの討伐に挑むが、決してダードゥには勝てない。

 どんな騎士であっても、ダードゥを捕らえることはできなかった。

「二人か。ま、君たちの実力だと、下手な兵を集めた方が邪魔か」

 ダードゥはアイサとロウを見てそんなことを言う。

 ダードゥは木箱の上からジャンプして降りると、二人の前に立った。

「さ、私を捕まえてごらん」

 アイサとロウは短剣を手にダードゥに向かって走り出す。

 ダードゥは杖のフックの部分を腕にかけると、腕を動かして杖を回転させ始めた。

 二人の剣がダードゥに届こうとした時、二人の前からダードゥが消えた。

「私はね。つまらないのだよ……」

 気がつくと、二人の後ろにダードゥがいた。

 二人は再び剣を手にダードゥに斬りかかろうとするが、身体が動かない。

「私がなぜ武器を売り続けるか知っているか?」

 アイサとロウは不思議な感覚に陥る。それは床が自分に向かって迫って来るような感覚。

 世界が歪み、赤く染まる。

「孤独だった。私は寂しかったんだ」

 ダードゥは杖を地面に立てると、カンっという音が鳴る。

「強さとは孤独なのもだ」

 アイサとロウは地面に倒れていた。

「な、何が起きたの?」

 アイサは地面に突っ伏したまま、現状を知ろうとする。

 自分の倒れる床は赤く染まっていて、腹に痛みを感じる。

「まだ理解できないって顔だね。じゃあ見せてあげよう」

 そういうとダードゥは杖の少し上にあげる。すると、杖の手で持つ部分から、杖の部分が離れて、杖に刃物が見えた。

「仕込み刀。武器を持たない武器商人がどこにいる?」

 アイサは自分が斬られたという事実を知った。


いいなと思ったら応援しよう!