アイヌ文化等体験ツーリズム「平取町地域おこし協力隊インターン」体験日記

地域おこし協力隊インターンとは


住民票を都市圏に置いたまま、短い期間(2週間以上3か月未満)で本隊員と同様の活動を体験する制度

活動目的

今回訪れる北海道平取町の豊かな自然の中で、地域の伝統的な行事に参加したり、様々な体験を通じて地域住民と交流を深め平取町の魅力を発見し、SNSを活用して広く周知するとともに、地域の課題を見つけて解決するための方法を提案、報告すること

活動内容

2024(令和6)年8月17日から8月30日までの14日間、平取町について知るため、地域行事への参加、アイヌ文化に触れる体験などをしました!

行事(チプサンケ)に参加しました!

令和6年8月17日(土)、8月18日(日)に行われたチプサンケに参加しました!
チプサンケとは、アイヌ語で「舟おろし」を意味する言葉で古来より伝わる技法で作られた船を川へおろし、舟に新たな生命を与えるための入魂の儀式です。
平取町二風谷では、多くの人にアイヌ文化への理解を深めてもらおうと毎年8月に伝統行事として実施されています。前夜祭、本祭ともに町民の方や平取町以外の地域から参加された方で大盛況でした!
前夜祭には、ウトㇺヌカㇻ(結婚式)や盆踊りが行われ、本祭では、縁結び石祭りや古式舞踊、チプサンケなどが行われました。このお祭りを通して地域の方々と交流することができ、貴重な体験をすることができました!

縁結びの石祭りの様子
盆踊り
チプサンケに参列する人々

アイヌ文化学習Ⅰ

今回、地域おこし協力隊インターンの目的であるアイヌ文化について学ぶため、アイヌ文化について専門的な知識を持つ方々にお世話になりました。

まず、アイヌ文化を紐解くために必ず必要となる言語理解を得るため、平取町二風谷でアイヌ語講師もされている関根健司さん(以下 関根さん)に同行させていただきました。関根さんはアイヌ語についての知識があるだけではなく、実際にアイヌ語を話す実践的なアイヌ語話者でもあります。また、英語話者とも会話ができるほどの英語力があるため、日本のみならず海外など様々な場所で活躍されている方です!

はじめに関根さんと共に訪れたのは平取町中央公民館でした。ここでは、ハワイでの短期留学を控える平取高校の生徒たちへの三日間の事前学習が行われており、私も見学させていただきました。
留学では文化交流を目的としており、平取高校の生徒たちは英語講師の方から英語を学ぶとともに、関根さんを講師としてアイヌの歌(ウポポ)舞踊(チャピヤク)を一生懸命に練習していました。事前学習では、ほぼマンツーマンの指導が行われており、終始、生徒だけではなく先生方も共に悩み、考えを言い合える環境でした。大人数教育を受けてきた自分には新鮮な光景であり、少人数教育ならではの良さを再確認することができ、私も充実した時間を過ごすことができました。

チャピヤクを練習する生徒たち
研修場所について調べ学習を行う生徒たち

次に関根さんと訪れたのはイオル文化交流センターで行われた大地連携ワークショップの発表会でした。
平取町では、株式会社平取町アイヌ文化振興公社を主体に、夏と冬の時期に大地連携ワークショップという全国の大学生・大学院生を対象に、アイヌ文化を体験しアイヌ文化や地域振興策を考える取り組みが行われています。
発表会当日は、4つに振り分けられたグループがそれぞれアイヌ文化、地域活性化を図る策を発表していました。すべてのグループが共通して、時代や町の財政を考えた革新的なアイデアを出し合っていました!

最後に、関根さんを講師とした伝承者育成事業の授業を見学、そして参加させていただきました!
伝承者育成事業とは、公益財団法人アイヌ民族文化財団によって運営されているアイヌ文化における様々な技術や言語などを総合的又は分野的に身につけ、それらを伝承する人材の育成を図るプロジェクトです。
私が参加させていただいた授業では、アイヌ語によるラジオ体操からはじまり、伝承者の皆さんの最近起こった出来事をアイヌ語で作文するというものでした。作文では、関根さんが伝承者の皆さんのアイヌ語による表現への指摘、文法の指導など、活用的なアイヌ語学習が行われていました。
また、伝承者育成事業のアイヌ語の授業が行われたのち、平取高校へと足を運びました。
平取高校では2024年度より、独自科目である「アイヌ文化学習」が行われています。そこで、アイヌ文化学習の教員として関根さんが招かれています。「アイヌ文化学習」は、授業は週に1度、年間で35時間のいわゆる「1単位」で行われ、1年生では言語を学び、アイヌの考え方についての理解を深め、2年生では木工や刺繍などの工芸を体験し、3年生では近現代に至るまでのアイヌの歴史や精神世界などについて学習するようです。実際に授業では、アイヌ語学習用のテキストが使用されており、関根さんを主体に楽しくアイヌ語を学ぶ授業が行われていました!

関根さんと行動を共にした数日間はアイヌ文化を学ぶにあたって非常に有意義なものでした。隙間時間にはアイヌ文化に関する書物を読ませていただいたり、平取本町に位置するびらとりふれあいセンターの図書館に連れていただきアイヌ文化に関する知識を教えていただきました。
また、様々な場面において関根さんは、「世間にアイヌ語の需要を生み出し、普及されるようにしたい」といった旨のことを述べられていました。アイヌ文化を尊重し、探求し続ける姿にとても感銘を受けました。

アイヌ文化学習Ⅱ

次に私がアイヌ文化を学ぶために訪れたのは、二風谷コタンの周辺に位置する平取町立二風谷アイヌ文化博物館です!
平取町立二風谷アイヌ文化博物館は、平取町二風谷在住の民族文化研究家である萱野茂氏(1926-2006)によって収集された民具や、ご自身で復元製作されたものが展示されている博物館です。
博物館館長である長田さんや職員の方々にお話を伺い、同行させていただきました。
ここでは、博物館周辺の施設や植物について解説していただいたり、貴重な展示物を生で見せていただきました!
また、活動中にアットゥシ織(樹皮の繊維を織った反物)の技術伝承者である藤谷るみ子さんの講話を聴かせていただいたり、ウポポ、チャピヤクの実演を観ることができました!
一日のみの体験学習でしたが、伝統的な着物や舞踊などを実際に目にすることができ、貴重な体験をさせていただくことができました!

平取町立二風谷アイヌ文化博物館
藤谷るみ子氏による二風谷

アイヌ文化学習Ⅲ

次に訪れたのは、イオル再生事業の現場でした!
イオルとはアイヌ語で「伝統的生活空間」のことを指します。平取地域イオル再生事業は活動型イオルとして、川筋に広がる森林をイオルの森に設定し、アイヌの人々が中心となって活動を実施されています。既存施設や他の事業とも連携してイオル再生事業に取り組み、アイヌの伝統的な文化の伝承と普及啓発をはかる拠点づくりを目指しています。
平取地域イオル再生事業の職員である方々とともに、実際にイオルの森に足を踏み入れたり、育てている植物や作物を見せていただきました。また、アイヌの人々の住居であるチセの屋根の萱の小束づくりなどを体験させていただきました!
実際に体験することで、一つひとつの作業の繊細さや苦労などを知ることができました。加えて、昔のアイヌの方々は生活をより良くするための知識が豊富であり、日々の生活の積み重ねを大事にしていたのだと感じました。

伝統的な食物 フレイモ
イナキビ
植木
苗木
チセのカヤ

アイヌ文化学習Ⅳ

最終日は、平取町アイヌ工芸伝承館ウレㇱパにて体験研修をしました!
アイヌ工芸伝承館ウレㇱパは、アイヌ工芸の伝承を進める場として開設されました。「匠の道」に立地しており、第一線で活躍する工芸家も創作活動に利用しているため、その技術を見ることができます。また、レーザー加工機といった最新の設備も導入され、アイヌ文様入りオリジナルタンブラーやマグボトルといった様々な体験プログラムを提供している施設です。
実際に私たちもアイヌ文様入りのオリジナルのマグボトルやアクリル素材のスマホスタンドを作らせていただきました!
現代の技術を活用しながら、伝統的なアイヌ文化を伝承していくことのできる、アイヌ文化を身近なものへと変換していく画期的な施設でした。また、一般のお客さんやお子さんでも体験することのプログラムが施されており、観光に訪れた方でも気軽に訪れることのできる場所でもありました。

課題・提案

今回の地域おこし協力隊インターンの活動を通じて、平取町、またアイヌ文化について知ることができました。そのうえで、私が課題点として挙げられるのは、次の3点です。
まず、交通面の不便さです。高校生と会話する機会があったので、その際通学時間について聞きました。交通手段はバスや自転車など異なっていましたが、どちらも共通して交通が不便であることを明かしてくれました。山や川に囲まれ、地形上致し方ない問題や在校生の人数的な問題もありますが、スクールバスを提供したり、バスの本数を増やすなど、もう少し工夫できるような点があると見受けられました。
次に、居住できる住宅が少ないということです。本町近辺は、ある程度住宅がありますが、二風谷には使用されていない住宅や、土地など多く存在しています。そのため、平取町における人口増加の為、社員寮や学生寮なども含めた住宅を増やすことを検討してみても良いのではないかと思いました。
最後に、人が寄り付く空間が少ないという点です。ここでいう人が寄り付く空間とはショッピングモールなどの商業施設を全般的に指します。二風谷から本町にかけて、国道に面しており交通量はとても多いように感じました。そのため、道路に沿った形で道の駅や商業施設の開設をすることで二風谷周辺においてもコタンだけではなく、商業施設に訪れる人も増えるのではないでしょうか。もちろん、景観を崩したくないといった地域の住民の方の意見もあると思います。しかし、工芸品などの収入や、特産品の収入を増加させるためにも、「名物」を求めて来る人だけではなく、この平取町自体に来客者を増やすため、利便性の高い施設、若い世代が訪れやすい環境をつくってみても良いのではないでしょうか。

活動を終えての感想

今回、私が体験を通して感じたのは平取町の人のつながりの強さと、あたたかさでした。平取町の方々は、見ず知らずの私たちに対しても親身になって様々な提案をしてくださったり、質問したことに対して丁寧に返答してくださいました。また、活動を行っていく中で町民の方が一体となってアイヌ文化を絶やさない、この町を活性化させたいという強い意志を抱いていることを身に染みて感じました。この平取町の一番の魅力はそこにあると思います。
ぜひ、皆さんもこのように魅力に満ちた平取町に足を運んでみてください!
最後に、この地域おこし協力隊インターンを行うにあたって尽力してくださった関係者の皆様、平取町の方々に心より感謝申し上げます。平取町のこれからの益々のご発展とご健勝をお祈り申し上げます。

活動外で見つけた平取町の魅力

平取町の自然


ボリューム満点のカツラーメン!
ドライブイン ゆーから

平取町中央公民館(外装・内装)

平取高校と町内中学生のための学習塾 平取町公営塾 義経塾     (平取高校・町内の中学生は授業料・教材費無料)

義経神社