ニュージーランドで2回目の妊娠・中期・出生前診断結果と羊水検査に向けて
妊娠12週に受けたFirst trimester screening(MSS1, エコーによるNT計測と血液検査からなるコンバインド検査)の結果を13週に入ってから受け取った私たち夫婦。
その結果はとても、とても悪いものだった。
※ 自分なりに調べたり、もらった資料から翻訳した医療的な情報を含みますが、私は専門家ではないのでそのまま鵜呑みにせず、医療関係者と相談するときの参考情報程度にしてください。
※ 現在、18トリソミーやその他の生後予後の良くないと言われている病気を持つお子さんを育てていらっしゃる方・妊娠中の検査で病気が判明したけれど産むと決めた方を傷つけるようなことは言いたくないので、この記事では私たちの身に起こった事実と、どう感じたかなどをなるべく感情的にならないように書いています(少し感情的な表現はありますがご容赦ください)。
血液検査の結果(13週)
Ultrasound(エコー)では異常なし、と言われていたので、かなり楽観的に考えていたところに来た悪い知らせ。
レポートの一部はこんな感じ。
18トリソミーとTriploidy(三倍体)に1/5の確率で陽性。
最初に電話で結果を聞いたので、その時は18トリソミーも三倍体も知識がなかったし、確率についても普通はどれくらいなのかも知らなかったので、染色体異常の可能性がある、という事実にショックを受けつつもまだ現実感がなかった。
赤ちゃんの染色体異常を確定するには絨毛検査か羊水検査をするしかないとミッドワイフに言われたので、専門の病院へ紹介状を書いてもらうことになった。
このコンバインド検査は、母体の血液から二つのホルモン(PAPP-AとFree β-hCG)の値を計測し、平均と比べて低いか高いによって染色体異常の可能性を予測するというもの。
単位はMoM(Multiple of the median)。平均値からどれくらい離れているかを表していて、1 MoMであれば平均値。0.5MoMだと平均より低く、1.5MoMであれば平均より高い。このMoMの組み合わせでダウン症(21トリソミー)、エドワード症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)などの可能性を測る。
アメリカの国立医学図書館(National Library of Medicine)のホームページに、NTと2つのホルモンのMoMと検出率を表示したテーブルがあったので、日本語に直したものがこちら。
さて、私のリポート結果に戻ってみると、以下の通り。
NT / 1.14 MoM
Free HDG / 0.06 MoM
PAPP-A / 0.07 MoM
表の18トリソミーの検出パターンと類似していることがわかる。Free β-hCGやPAPP-Aに至ってはかなり低いので、三倍体についても可能性が指摘された。
このMoMの値を元に確率が計算されるらしく、18トリソミーも三倍体もカットオフ(リスクが高いと判断されるボーダーライン)が1/300なところ、私の場合は1/5という高い確率が出てきてしまった。
18トリソミーと三倍体
ミッドワイフとの電話を終えてからインターネット上でいろんな情報を探し始めて、現在の状況の深刻さを思い知ることとなった。
ネットで調べていても、まず、こんなに高い確率が出た人を見かけない。そもそも羊水検査を受けた人の体験談が少ないからだとは思うけど、1/40や1/100くらいで、羊水検査を受けようか悩む、というようなものは見かける程度だった。そして、その後その人たちの羊水検査を受けたのか、結果がどうなったかなどの情報は本当に少なかった。
そもそも三倍体って何?18トリソミーってどんな病気?と知らないことだらけだった。
でも、それぞれの情報を日本語・英語どちらで調べてみても、本当に目の前が真っ暗になるような情報しか入ってこなかった。
三倍体
まず三倍体はほぼ生まれる例がない。
通常、人間の染色体は母方から23本、父方から23本を受け継いで46本で構成される。三倍体は父方、もしくは母方の染色体が23本×2、合わせて69本になってしまう異常だ。そのため、体は通常には発達せず、ほとんどが流産となる。
18トリソミー
18トリソミー、エドワーズ症候群は1/5000〜6000くらいの確率で生まれてくるらしいので、もう少し知名度のある病気だ。23本ある染色体のうち、18番目の染色体が3本になってしまうもので、多くが母親由来、そして母体の年齢が上がるにつれて確率も高くなっていく、とも言われている。
多くの身体的異常・内臓の機能障害(心臓に異常がある確率は90%だとか)・知的障害などを伴う病気で、流産・死産になることも多く、平均寿命8ヶ月、1歳までの生存率は10%前後と言われている。生まれて数時間の命も多いとのこと。
産むと決めたものの死産となった方の話、生まれてから1歳半くらいの間に何度も命の危機となるような容態の急変がありつつも育てていらっしゃる方の話など、本当に胸が苦しくなるような深刻な病気だった。
ちなみに、私自身、先天性の小耳症という耳の奇形とそれに伴う片耳の難聴を持って生まれてきているが、この病気の確率は1/7000〜8000と言われている。自分の病気よりも多く生まれる可能性がある病気が、こんなにも深刻なものだなんて、と思わずにはいられなかった。
病気について調べれば調べるほど、血液検査の結果がこんなにも悪いのはきっと何かの間違いなんじゃないか?と、強く願っていたし、血液検査が間違いでないにしても、きっとうちの子は大丈夫なはず、と信じるしかなかった。
その他のトリソミー
トリソミーで一番よく知られているのは21トリソミー、ダウン症だろう。21番目の染色体が3対となる染色体異常だ。生まれる確率は実は意外と高くて、1/600〜800だ。21トリソミーも、心臓に異常があることは多いものの、比較的生まれた後の予後は悪くなく、平均寿命が60歳前後ということだ。
18トリソミー21トリソミーと並んで、生まれてくる確率があるのは13トリソミー、パトウ症候群で1/12000〜16000の確率である。13番目の染色体が3対となる染色体異常で18トリソミー同様、流産・死産となることが多く、1歳までの生存率は10%程度だ。
その他のトリソミーについては、初期に流産となることがほとんどだという。
オークランドホスピタル専門医検診初回(13週)
医療のスピードが遅いと言われているニュージーランドで、検査の結果が出て(木曜日)から1営業日後(月曜日)の朝には専門医に会うことができたのは、結構びっくりだった。多分理由はこんな感じかな。
結果が深刻すぎる
赤ちゃんの成長に合わせてできる検査が時間にシビア(絨毛検査は11週から13週まで、羊水検査は15週以降)
妊娠継続をしないとなったときに法的な人工中絶が20週(日本は22週未満)まで
とにかく、血液検査の結果を受け取った翌週月曜日にはオークランドホスピタルのミッドワイフ(助産師)と胎児専門(Fetal medicine clinic)のドクターに会い、再度Ultrasound(経腹エコー)をしてもらった。
専門医によるかなり時間をかけた検診の結果、
心臓に穴が空いてる可能性(血液の逆流を発見)
鼻骨が未発達
などの18トリソミーによくある症状が確認できたけど、これだけでは18トリソミーであると確定はできないし、まだ胎児が小さいのでそれぞれの症状もはっきりとはわからない、とのことだった。
三倍体については、もっと身体の発達異常が顕著に出るはずなので違うだろう、と言われた。
18トリソミーによくある、首の後ろの浮腫みや手足の湾曲、頭蓋骨の変形、赤ちゃんの動きが活発的ではない、という点はうちの子には指摘されなかった。
勧められた次のステップは絨毛検査か羊水検査。
絨毛検査:胎盤に針を刺し、サンプルを取得(11週2日から13週6日まで、流産率は1/100)
羊水検査:羊水部分に針を刺し、サンプルを取得(15週以降、流産率は1/200〜300)
当日そのまま絨毛検査をすることができるとも言われたけど、流産の確率が羊水検査よりも高いということで、羊水検査を15週以降にしてもらうことになった。
多くの人が絨毛検査や羊水検査の流産率を考慮して受けるべきかどうか悩むらしいけれど、私たちの場合、スキャンからは確定はできないけど、血液検査の結果を踏まえると赤ちゃんが18トリソミーの可能性は高く、その場合何もしなくても流産となる可能性も高いので、受けても受けなくても流産する確率はあまり変わらない、というようなことを言われた。
この時の検診で、もし18トリソミーではない場合にも、現在手元にある情報から今後起こりうることについて話してくれた。
心臓内部に穴が空いてるかもしれないから、生後すぐに手術が必要になるかもしれないということ。心臓の状況については、もう少し大きくならないとどれだけの深刻さかはわからないということ。
妊娠関係のホルモン量(Free β-hCG・PAPP-A)が少な過ぎるので、胎盤が大きくならないかもしれない、ということ。つまり赤ちゃんに十分な栄養が行き渡らず、成長が途中で止まってしまう可能性があること。
胎盤の成長については、Aspirinを少量継続して飲むことでサポートできるけど、それでも赤ちゃんのサイズを1〜2週間ごとにモニタリングして成長が止まった時点で出産、ということになるだろうと言われた。
18トリソミーだった場合、流産・死産になることも多いし、子がこれからどのような症状を併発していくかにもよるけど、一般的には生まれてから長くは生きられない、というネットで事前に調べていたことと同じようなことをドクターにも言われた。
諦めるという選択肢もあるし、産むと決めたら病院やソーシャルワーカーからのサポートを受けながら出産となる、とのことだった。
18トリソミーと確定した場合にどうするか、夫婦でしっかり話し合っておいてほしいとも言われた。
この時点でも、子の成長におけるポジティブな面を信じて、染色体異常はきっとなくて、心臓の病気を抱えることにはなるかもしれないし、早産になってしまうかもしれないけど、きっと大丈夫、と信じていた。
夫婦の意思
病院からの帰宅後、私たちは18トリソミーだった場合の話をした。
夫も私も、どこかまだ深刻には捉えておらず、きっと大丈夫だろうと思っていた。陽性の確率が1/5と言われても、4/5は陰性な訳だから。
特に夫は私みたいにネットで色々調べたり、もらった資料を隅々まで読んだりしない性格(この夫婦の温度差は少し悲しく、そして腹立たしくもあった)なので、もっと楽観的だったはずだ。
それでも、万が一18トリソミーが確定した場合の今後のことを考えたときに、妊娠を継続したとしても遅かれ早かれ別れが来てしまうこと、それは妊娠中に起こるかもしれないし出産数時間後、数ヶ月後かもしれないけどそう遠くない未来であること、私はわが子と一緒に生きて行きたいし、常に死が見えるような生活はきっと耐えられないと私は思っていたし、夫はもっと現実的に経済面やライフスタイル全般についてどんな影響が起こりうるかなどを考えていたように思う。
夫婦二人で話し合った結果は、もし陽性なら妊娠は継続しないということ。
ミッドワイフ健診3(13週)
病院の翌日、ミッドワイフとの3回目の健診。
ミッドワイフはすでに病院からのリポートを受け取っていたので、基本的にはリポートに沿った内容の話をした。
18トリソミーについては、もし陽性なら赤ちゃんの身体が胎内で大きくなるにつれていろんな症状が現れる(検知できるようになる)可能性が高いということ。
心臓に穴が空いている可能性については、もう少し大きくならないとわからないけれど、外科手術をして元気に育っている子どももたくさんいるとのことだった。
胎盤の成長については、病院のドクターが言っていた通りAspirinを摂取しながら1〜2週間ごとにモニタリングして、24週をまず目指す、と言われて動揺した。24週ってまだものすごく小さいはず。そんなに小さくして産まなければならない可能性もある、ということに胸が痛んだ。
改めて、この妊娠がどんな結果が来ても難しい妊娠になることを思い知った。
夫と二人で話しあった結果、18トリソミーであった場合には妊娠の継続はしないということになったので、それをミッドワイフにも伝えた。
最後に、また心音の確認。ミッドワイフが心音計で赤ちゃんを探し始めたとき、ぼこぼこっと音がなっていて、赤ちゃんが中で動いてるんだよー、活発な子だねって笑って言ってくれて、泣いてしまった。心臓は元気に、前回よりも力強く動いていた。
どうか、染色体異常が陰性でありますように。毎日のように祈っていた。
NIPTを受けなかった理由
ミッドワイフとの検診後、姉と検査結果について話をしていたら、NIPTを受けた方がいいのでは?というアドバイスをもらった。姉が3人目の子どもを妊娠中に、何かの染色体異常でカットオフ以下のものがあったらしく、NIPTを受けることを勧められたらしい。NIPTの精度はかなり高いものなので、これで陰性が出た場合、他にもいろんな病気の可能性はあるけれど、少し安心だ。姉の場合もこのテストにより陰性が出たので羊水検査をすることなく、元気な赤ちゃんがのちに生まれた。
ちなみに姉の確率は1/125くらいだったはず(私よりも全然確率低い、と思った覚えしかなく正確な数字はうろ覚え)。
通常、リスクが高いと判断されると、勧められるNIPT。これはコンバインド検査と違い、実際の母体内にある赤ちゃん由来のDNAを調べる方法でかなり精度が高いものと言われている。母体の血液検査だけでできるので、身体に負担なくできるものだ。費用は少し高く、日本だと20万円前後、ニュージーランドだと$600(日本円5万円程度)前後だ。
私の場合、コンバインド検査で確率がかなり高く出ているので、このNIPTをうけるメリットはあまりないと判断された。なぜならNIPTで陽性が出た場合(出る可能性が高いと判断されたんだと思う)にも、診断を確定をするためには絨毛検査や羊水検査が必要になるからだ。
カットオフよりも少し値が下回る、というような状況の場合には絨毛検査や羊水検査よりもとにかく安全なので、費用はかかるけれど受けてみるといいのかもしれない。NIPTはニュージーランドでは結果が出るまでに2週間位かかるとのことだったので、もし陽性が出て羊水検査を受ける場合、そして羊水検査で陽性が確定したら妊娠継続を諦める方向で考えている場合、NIPTの検査を手にする時点ですでに15〜16週になっているはずなので、すぐにでも羊水検査の手配をしてもらった方がいいと思う。
妊娠14週、15週
体の状態
元々食べづわりで体重が増えたためお腹周りに脂肪が蓄積されていたけど、この頃からぽっこりお腹が結構出てきて、妊婦だとわかる体型になってきた。
15週の後半くらいから、お腹の中でモゾモゾと動きが感じられ、胎動なのかなぁという感じで嬉しかった。スキャンでも心音確認でも、いつも元気に動いていたので、少し早い方だけど多分胎動だったんだと思う。
まだ聴こえるかわからないけど歌を歌ったり、軽くポンポン、とお腹とつついたりして過ごしていた。それに合わせて動きが感じられる程ではまだなかったけど。
つわりは12週を過ぎても完全にはなくならず、相変わらず毎日少量ではあるけど吐いていたし、水は相変わらず飲めなかった。
胸はかなり張って大きくなって、腕に触れるたびに結構痛かった。
会社へ報告
上司に現在の状況を伝え、染色体異常の可能性があること、もし染色体異常が確定したら妊娠の継続はしない予定であること、染色体異常でなくても心臓や赤ちゃんの成長に懸念があるので出産時期が読めないことなどを説明した。
前回の流産のことも知っているので、上司も言葉にならない様子だったし、会社としてどんな選択をしても全面的にサポートするから、と言ってくれた。
すでに妊娠を伝えていた何人かの同僚にも、状況を説明した。みんなすごく優しく励ましてくれたり、気にかけてくれて、心強かった。
夫婦喧嘩
15週の週末、夫が友人の誕生日パーティに参加し、そのまま外泊したことで口論になった。
この頃の私のメンタルは、うちの子はきっと大丈夫と染色体異常ではないことを信じつつも、今日が最後の日かもしれないと毎日毎日思いながら過ごしていて、「今日にでも流産して出血が始まるかもしれないと思って不安なのに外泊とかありえない」と泣きながら夫に対して怒り爆発。
夫はきっと深刻に考えすぎないようにしてたんだと思うけど、この言葉を聞いて泣き出してしまった。
彼はずっと毎日のように泣いている私を支えてくれていたし、感情的にならずに論理的でいてくれたからこそ、私も落ち込みすぎずに済んでいたわけで、彼だって気持ちの表し方は違うけど、悲しくないはずがないのだ。1月の流産に続いて、子どもをまた失うかもしれない恐怖。彼だってこの子が生まれるのを楽しみにしてるのだ。
妊娠中に飲酒して外泊はしてほしくないけど、彼にも気持ちを穏やかにするための自分の時間が必要だと思ったし、自分の気持ちが辛い辛い、となるばかりだけでなく、夫のことも大事にしないとと思った出来事だった。
羊水検査・結果編へ続きます。