「虫垂炎」になった話
ある日のことだった
渋と回転寿司を食べていたのだが、
どうしても椅子の高さがツラい
食事中ずっとその事でいっぱいだった
なぜこの高さなのだろうか
居心地を悪くして回転率を上げようという戦略だろうかと疑ってしまうほどの椅子の高さであった
しかし何度かこの店に来たことはあるがこんなに椅子の高さに不満があった覚えは無い
好物のとろたく巻を頬張りながらおかしい何かがおかしいと首を傾げていた
お会計を済ませ店を出るとその違和感にようやく気づく
腰が、痛い
あまりにも腰が痛い
元々腰痛持ちで月に何度か鍼治療に行っていたのだが、
遂にやってしまったと
腰が爆発してしまったのだと、そう思った
そう思うと同時になんだか気分も悪くなってきた
この後美容院の予約を入れていたのだがそれもキャンセルした
家に帰って、横になった
しばらく寝ていても良くなる傾向がない
それどころか悪化する一方である
腰の痛みは右下腹部に移り、更に吐き気と頭痛そして悪寒
熱を測ると体温計は38度を叩き出していた
そこからは渋と共に、症状を検索しアレじゃない?これじゃない?と話しているとピッタリと当てはまる症状が見つかった
「虫垂炎」である
虫垂炎とはいわゆる「盲腸」であり1000人辺り1~1.5人ほどの確率で発生するらしい
まずそれは嘘だと思った
麻雀プロで何人も盲腸になったことがある人を見たことがあるし今までの人生でも何人かに出会ったことがある
私が人生で会ったことのある人間の数は精々2000人くらいだろう
もし仮にわたしが盲腸なのだとしたらその確率を軽く凌駕する事になってしまう
話し合いの結果私たち夫婦の素人判断では80%超の確率で虫垂炎だろうという判断に行き着いた
なぜ80%なのかと言うと、痛みがそれ程でもないからだ
右下腹部に圧が掛かるような動きがあると「イテテ」と思わず言ってしまうほどの痛みはある
生活行動の中で言うと寝返り、ベッドから起き上がる、階段の昇り降り、靴の脱ぎ履きが鋭く刺すような痛みを伴った
ただ安静にしてる分にはじんわり痛みがある程度で我慢出来るのだ
虫垂炎の痛みはそれはそれは凄いらしい
昔読んだ事のある本によると「お腹の中でリオのカーニバルが行われているかのようだ」とか
脂汗が出てうずくまって動けないレベルだ、とも言う
しかし中にはそんなに痛くなかったという人も居るので、
結局痛みの感じ方は人それぞれだから私が痛みに強い可能性を捨てきれない以上、その部分で判断することは難しいという結論に至った
個人的な痛みの程度で言うと、「生理痛に似た痛みだがより鋭い」感覚である
男性の方はわかりづらいと思うので、「うんこが出そうな腹痛があるがまだ便意は来ていない状態」を思い浮かべていただければまあまあ近しい感覚を共有できると思う
夜な夜な「痛いよぉ痛いよぉ」と言う私に対して渋が意を決して「救急車呼ぼう」と言ってきた
救急車をタクシー代わりにするな!という民衆の意見に賛同してきた私にとってその提案はどうしても受け入れがたかった
それなりに我慢出来る程度の痛みである
この程度で救急車を呼んだら本当に救急車が必要な人に間に合わなくなってしまう───
そんな事は当時は微塵も思わなかったのだが純粋にこの痛みで救急車に乗って、医師に大したことありませんねって言われて返されるのが普通に恥ずかしかったのだ
救急車を呼ぼうとする渋を必死に止めてその日は眠りについた
起床すると発熱も痛みも治まってました〜なんて都合のいい事は残念ながら起こらず、痛みのある右下腹部を庇いながらゆっくりと歩いて病院に向かう
渋はその日A1リーグの決定戦がかかっている大事な試合の日だったので1人で向かった
私のことは気にせず頑張って欲しい
私はせっかちなので普段から歩くスピードが早いのだが、
この日の歩みはまるで亀の如しと言ったところだ
歩くスピードが遅い人に対してもっと寛大になろうと思った瞬間だった
病院に着きまず医師に昨日から今日の様子を話し、最後に「あのぉ、多分盲腸だと思うんですけど…」と告げたところ、
さして疑うことも無く診察台に上がるよう言われた
私が医者ならまず患者の○○だと思うんですけど、は絶対に疑うだろう
医療従事者でもねえのにてめぇ適当なこと言いやがってとなる所だがあまりにも症状が盲腸のソレだったのだろう
我々の判断は正しかったと心の中でガッツポーズをした
その後大きな病院への紹介状を書いてもらい、そのままタクシーを呼び向かうことにした
大きな病院ではまずさっきの病院と同じく問診をして、そして血液検査、尿検査、更にCTを撮った
CTを撮る部屋の天井が青空で可愛いなぁなんて思う余裕も当時はあった
そして医師からは
「急性虫垂炎ですね。入院か手術は確定です。」
「子宮の辺りも腹水が溜まっているので盲腸が穿孔(穴が空いていること)している可能性もあります。」
「命に関わることなのでもっとよく調べるために造影剤を使って再度CTを撮らせてください。」
ばーっと喋ったあと待合席に戻された
命…?盲腸で…?死…?!?!
とぐるぐるしながらしたポストがこちら
いよいよただ事じゃなくなってきた感が強くなってきたところで造影剤を点滴で流してからのCT撮影
そして医師から衝撃の一言
「虫垂炎じゃなかったみたい」
──!?
どうやら単純CTで見たところ間違いなく虫垂炎だと思った部分が実は造影剤CTで見たところ腫れた卵巣だったらしく、婦人科へ回されることになった(気づいてよかったね?!)
そしてエコーの検査をした所「付属器膿瘍の疑い」という事で入院を余儀なくされたのだった
要は卵巣が何らかの影響で炎症を起こして、それで膿が溜まった状態になってしまったと
このまま悪化してしまうと最悪切除しないといけなくなるが基本的には抗生剤の投与で治療するという事を説明された
ここまで読んで頂いた皆様はもうお気づきかもしれないのだが、
そう、「タイトル詐欺」である
何が虫垂炎になった話だ!付属器膿瘍になった話やんけ!!と思った方、ごもっともでございます
言い返す言葉もございません
でもさ、ポストしちゃったし撤回するのも今更感あるし、婦人科系の疾患ってなんかちょっと言いづらいし、基本は抗生剤、悪くなったら手術ってもうそれ場所違うだけでほぼ同じじゃん、ってなったので…
えーいもうこのままいっちゃえ!と
別に嘘ついてるわけじゃないのでそれだけ知ってもらえれば、と思いましてただいま筆を取っております
それでは病院食のカレーが待ってるのでまた!
続きは入院編でお会いしましょう
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