かつて天才だった俺へ

 拝啓

 長かった学生生活も終わり、社会人という、新たなステージを迎えようとしています。学生生活を謳歌しているあなたは、将来の自分をどのくらいイメージできているでしょうか?
 「まだそんな先のことなんて…」「大人になった時とか知らないよ」きっとそう感じているでしょう。むしろ、そう感じる方が自然ですよね。
 学校は楽しいですか?友達や先生、家族とは上手くやれていますか?今を大切に頑張ってくださいね~                               大人になった自分より

 とまあ、こんな感じで、少年時代に向けて手紙を書いてみる。でも、本当にここでやりたいのは手紙を書くことじゃない。手紙を書くことを通して、もう一度、怖いもの知らずで身の程知らずだった、あの頃の考え方を掘り起こしたいのである。

気づいたら「つまらない大人」になってた

 今の私は、本当に子どもの頃「なりたかった」姿になれているか?多分違うだろう。子どもの頃、どんな大人になりたいかは具体的にイメージしていなかったと思うが、今の自分は、当時から見たら多分「つまらない大人」になってしまっている筈だ。別にそうなりたくて、なったわけじゃない。むしろ、「つまらない大人」なんて、みんな絶対なりたくないだろう。それでも、大人になっていく中で、様々な挫折や困難を経験し、「つまらない大人」になってしまった人は少なからずいるのではないか?

 私もその一人なので、決して偉そうなことは言えない。でも、知らず知らずのうちにそうなっていったんだよな…

将来有望だと思ってた思春期

 何が原因で、私は「つまらない大人」になったと感じるようになってしまったのか?
 私なりに考えてみた。おそらく、子どもから大人に変わる、思春期や青年期での経験にあるのではないか、と思う。
 かつて私は、自身を「将来有望な存在」だと勝手に考えていた。勉強はできる方だったので、それが自己肯定感を高める、いい格好だった。だから、このまま順調に高校、大学とそれなりに行って大人になるものだと考えていた。
 
勉強ができれば、家族は喜ぶし、友達からは良く思われる。それに、進路にも困らないから、勉強はしなければいけないもの」
 それが揺るぎなかった。部活で活躍できなくても、異性にモテなくても、勉強さえしてれば勝手に未来は開けると思っていた。だから、「青春を謳歌したい」という考えは一切なく、リア充している奴らは眼中になかった。

「勉強さえしていればよい」の盲点

 青春している奴らに目もくれず、「将来有望だ」という勘違いのもと突っ走っていた10代の頃。確かにあの頃は、楽しかった。将来への不安なんぞ微塵も感じなかったし、それなりに明るい未来があるものだと思っていた。
 じゃあ、今はどうか?将来有望だとも思えなくなったし、不安で塗り固められてしまっている。一体何のせいで、そうなったのか?自分の能力の限界をどこかで知ってしまったのか?それとも、妥協せざるを得ない出来事があったのか?それとも、誰かの心ない一言で自信を失ってしまったのか?
 「これが主な原因」というものはわからないが、きっと知らず知らずのうちに、妥協を覚えたり、自信を折られたりするようなことを経験してきたのだろう。そのために、自己肯定感が自ずと下がり、勘違いさえできなくなってしまったのだろう。
 とにかく、私には、良くも悪くも勉強しか取り柄がなかったのだ。「テストや受験でいい点を取り、自分も周りも幸せにしたい」という目的があったからこそ、頑張れた。そして、それができるから、自己肯定感を保つこともできた。しかし、大学に進むと、勉強以外にも求められることがたくさんあった。友達とのつきあい方、時間の使い方、お金の使い方、趣味、自分を高めること…

 大学に入ると、社会で生き抜くためのスキルや自分らしく生きるためのスキルが求められることが多かったのである。
 だから、それまで勉強しかせず、勉強が生き甲斐だった私は、全くそういうスキルを持ち合わせておらず、戸惑った。だから、できなくて苦しいことはたくさんあったし、周りから蔑まれることもあった。こうやって、「将来有望だ」という勘違いが「自分はダメだ」という自己否定に変わっていったのである。

自分らしく生きること

 かつては、自分を「将来有望だ」と思い込み、がむしゃらだった少年は、青年期に挫折や困難を経験し、すっかりネガティブ思考の「つまらない大人」になってしまった。 少年時代には戻れないが、もう一度あの頃のような勘違いをしてみたい。身の程知らずに突っ走ってみたい。そして、今の私と同じように苦しんでいる人がいるなら、かつての明るさを取り戻してほしいとも思う。
 

つまらない大人になんて、誰だってなりたくないよ。
でも、もしあなたがそうなってしまっているなら、時には立ち止まってもいいよ。きっと辛いことや悲しいことがあったのかもしれないね。でも、それを乗り越えて、あなたはここまで頑張ってきた。だから、これからは笑って生きていきましょう。笑っていれば、あなたはもっとあなたらしくなれるから。

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