短編映画のアイデア

また、にんにくラーメンを食べているのかよ。

稲垣吾郎は恋人の森山愛子に声をかけた。

これからコンサートがあるのよ。当たり前じゃないの。

コンサートといっても日本武道館や横浜スタジアムでやっているコンサートとはわけが違う。

ここは東北の昔、製鉄所でおおいに栄えた場所だったが、

その製鉄所も閉鎖となり、巨大な施設だけが残された。

その中の一つ、自衛隊の宿舎を何十倍にしたかのようなかまぼこ型の建物で

森山愛子はコンサートをおこなう、客は地元の住民である。

森山愛子の歌のうまさは抜群だった。

汗をふきながら、ステージから降りてくると、恋人の稲垣吾郎が待っていた。

デートの約束を二人はしていた。

そこへ、稲垣吾郎の同僚らしい男がやってきた。

吾郎くん、ちょっと、試験槽にきてくれないか。

また、森山愛子は口をへの字にまげた。

また、チョウザメ。

チョウザメはここの地域の夢なんだぜ。

私だって夢はあるわよ。

この地域の主な産業である、溶鉱炉の火が消えてから、この地方の活性化のために

製鉄所の施設を再利用して、チョウザメの養殖という計画がたてられた。

そのため、県の水産試験場から稲垣吾郎が派遣された。

そこで森山愛子と稲垣吾郎は出会った。最初の出会いはスキーの出来ない稲垣吾郎が

スキーのインストラクターでもある森山愛子の生徒になったことからだった。

蒲鉾型の公民館の外にでると、雪が降っていた。

私だって夢はあるわよ。そうだ吾郎がちゃんと働いているか、見に行こう。

森山愛子はジムニーに乗り込むと、チョウザメの試験場に向かった。

大変だぁ、大変だぁ、

稲垣吾郎をはじめ、水産試験場の職員たちはあわてふためいていた。

森山愛子が水槽の中を覗き込むと、チョウザメが苦しそうに息をしている。

稲垣吾郎は頭をかかえこんでいる。

このままでは、チョウザメがみんな死んでしまう。

吾郎、落ち着いてよ。何か方法はないの。

この水槽に湧き水をひいている取水口の第一ポンプをしめて、第二ポンプの取水口を開ければいいんだけど

この雪の深さじゃだめだぁぁぁぁ。

吾郎、何を言っているのよ。私がスキーの指導員だってことをわすれたの。あなたが梟の森まで車で連れてってくれればスキーで私がその作業をやってあげるわよ。

愛子、頼んだぞ。

これね、森山愛子はバールでその作業をやると、そのまま、水産試験場まで滑り降りた。

チョウザメの水槽の前では稲垣吾郎をはじめとする職員たちが喜びいさんでいた。チョウザメも元気に泳いでいる。

愛子、君はチョウザメだけではなく、この地域の恩人だよ。

そのとき、郵便配達員が来て、森山愛子に一枚の葉書を届けた。

あなたの歌う 君こそわが命 に感動しました。東京に出てきて、歌の勉強をしませんか。

                                 水森英夫

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