
漫画背景アシにTourBoxElitePlus導入した話①導入経緯編
みんな大好き左手デバイスの話〜
…みんな好きだよね?
私はこの度2024年11月にTourBoxElitePlusを導入し、これを左手デバイスとして漫画制作(商業の背景アシスタント業務を含む)に利用している。
TourBoxElitePlusの細かい設定や操作感については記事②(後編)で解説する予定であり、この記事では、そもそもなぜ作画ツールの補助として左手デバイスを使うことにしたのか、左手デバイスに何を求めているのか、また、様々なデバイスを試した結果なぜTourBoxElitePlusを選んだのかについて記載する。
私自身もかなり悩み、様々なデバイスを試した末に現在の状況に至ったため、イラストや漫画制作時に左手デバイスの導入を検討している人々の参考になれば幸いである。
1.導入のきっかけ
左手デバイスを導入した経緯は2つあり、1つ目は『原稿の作業効率を上げる』ため。これがメインの理由。
現在、背景アシスタントの報酬は「作画ページ数」によって支払われているため、同じクオリティの作業をより短い時間で完成させることができれば、実質的な賃上げにつながる。また、趣味の漫画制作についても、社会人として余暇時間に限りがある中で、より多くの原稿を制作するために原稿スピードを向上させたいと考えている。
地道な作画練習も重要ではあるが、それ以外のアプローチでも効率を上げられないかと考え、試してみることにした。
もう一つの理由は「複数の異なるデバイスで同じ操作環境を作りたい」というものである。これはあくまでサブ的な理由。
具体的には、以前は漫画制作に基本的にiPad Proを使用し、時々GAOMONの格安液タブを使用していた。しかし、GAOMONは指での操作に非対応であり、その結果、iPadで可能な指によるジェスチャー操作(ピンチインやピンチアウトなど)が利用できなかった。これにより、「iPadでは指で簡単に表示サイズや回転を変えられるのに、液タブでは拡大縮小バーをいちいち使わないと操作できない…!」という点が大きなストレスとなっていた。
そこで、「左手デバイスでキャンバス操作をすればiPadと液タブで操作が変わらず良いのではないか」と考えた。ただ、結局は後に液タブ自体を変更したため、この理由は根本から消滅した。
2.前提の使用環境(私の場合)
ソフト:CLIPSTUDIO EX
タブレット:iPad Pro(第3世代)もう7~8年くらい使ってる相棒機器
液タブ:GAOMON 24インチ→後にHUION 19インチ
上記の通り、私は普段iPadとPC(Windows)のそれぞれでクリスタを使用して原稿作業を行っている。この両方に対応したデバイスでないと導入できなかった。基本的にはキーボードタイプであればどちらも左手デバイスとして利用可能だが、iPadはMac系列、WindowsはWindowsという違いがあるため、微妙に設定が異なる場合がある。たとえば、CtrlとCmd、AltとOptなどの違いとか。
3.これまで使った左手デバイスと、私が左手デバイスに何を望んでいたか
①テンキー 2019〜21年頃
一番シンプルなキーボードタイプのデバイス。安価で購入できることもあり、だいぶ前に何度か試した。Bluetoothで接続し、各数字キーにクリスタのツールのショートカットを割り当てて使用する形式であった。
格安品で携帯用の薄型キーボードだったため、打鍵感がいまひとつだった。また、どの数字キーにどのツールを割り当てたかをすぐに忘れてしまい、100均のシールを貼って対応したものの、あまり使い勝手が良くなかった(当時は現在のように本格的に漫画制作を行っていなかったことも影響している)。
さらに、ダイヤルなどが付属していなかったため、拡大縮小といった操作が全くできない点も不便だった。そして、単純に数字キーにショートカットを割り当てるだけでは、割り振れるコマンド数が意外と少ないことに気づいた。これらの経験から、左手デバイスには修飾キー(ShiftやCtrlなど)が最も重要であると認識するに至った。
②TABMATE(1) 2024年1月
クリスタ公式の左手デバイスで、握るタイプ。後継機のTABMATE2が発売される際に割引セールが行われていたため、試しに購入した。
確か初代モデルはiPad非対応で、TABMATE2は対応していた。そのため、初代モデルが使いやすければTABMATE2を購入するつもりだった。しかし、初代モデルは反応速度が悪く、うまく使えなかったため、使用を断念した(※ただし、後述するが、この問題はデバイス側ではなくPC側の問題だった可能性が高い)。
さらに、握るタイプのデバイス自体が自分にはあまり合わず、キー数もおそらく十分ではなかったと記憶している。
③REV-O-MATE 2024年2月〜
ダイヤルがメインの左手デバイス。このデバイスは、大きなダイヤルが1つとボタンが10個という、非常に独特な形状をしていた。
メリットとしては、まず左手デバイスとして比較的安価であった点が挙げられる。また、小型で軽量なため持ち運びが非常に楽だった。さらに、日本メーカー製でサポートも充実しており、一度故障した際には購入から1年以内だったこともあり、無償で修理してもらえた。
一方で、ボタンが小さく、シールを貼ることも難しいため、キー割り当てを覚えるのが大変だった。また、レイヤー機能があるとはいえ、ダイヤルが1つしかないため、キャンバスの回転と拡大縮小を同時に行うことが難しく、痒いところに手が届かない部分が多かった。
④CreaterPad 2024年5月〜
キーボードタイプの左手デバイス。キーにイラストツール又は動画編集ツールの刻印があるものと、無刻印のものがあり。ダイヤル1つとノブ4つもあり。
値段が少し高めではあったが、予想以上に良かった。
刻印付きのキーでツールの切り替えが思った以上に快適だった。テンキーの時は覚えるのが難しかったが、これは左手に合わせたキー配置なので、「人差し指付近がメインの筆キー」など、感覚的に覚えやすく、刻印もあるため、最初に覚える段階が非常に楽に感じた。また、キーのリマッピング機能があり、CtrlやShiftも使える点が良かった。
この辺で、個人的に「左手デバイスには、よく使うツールをすぐに切り替えるキーと、連続的な操作ができるダイヤルの両方が複数個必要だな」と感じ、左手デバイスに求める要素が増えた。ある程度最初に慣れやすい形が必要であることは理解しているが、それでもかなりの機能を求めるようになった。
このデバイスの懸念点やデメリットは、良い点の裏返しに近かった。要するに、ただのダイヤル・ノブ付きのキーボードであるため、iPadとWindowsでの切り替え(それぞれの設定)が必要だった(=ただのキーボードなので多くのデバイスで使用できる)。
また、有線接続のみで少し面倒だが、逆に電池の心配をせず、接続の確実性が高いという利点もあった。
さらに、持ち運びにはかなり重いため、安定性が高いという点がある。
ちなみに、改造すれば少し軽くすることも可能だが、自己責任である。
(この辺で液タブをGAOMON→HUIONに変更)
↑これ。
⑤自作キーボード 2024年夏〜秋
CreatorPadは上記のとおりかなり左手デバイスとして機能には満足していたのだけれど、「重い」「デカい」のが気になっており、同じくらいの機能で軽量化できないかと思い、某自作キーボードを購入した。
自作キーボードとは、部品を自分で選んで組み立てることで、カスタマイズ性や個性を重視したキーボードのことを指します。市販の完成品キーボードと違い、キーの配置、スイッチの種類、キーキャップ、PCB(プリント基板)、ケースなど、さまざまな要素を自由に選択・組み合わせることができます。
当時はハンダゴテ等を持っておらず、製作者さんのはんだ付けサービスを利用。
CreatorPadと同レベルの機能性と、それ以上の軽量性に最初はかなり満足していたが、当初から有線にもかかわらず接続が安定しなかった。製作者さんに問い合わせても理由が分からず、そのまま使い続けたが、その後すぐケーブルを接続する端子が基盤との接続が緩くなっていることに気づき、そしてすぐ壊れてしまった。
メーカー製品ではないので、壊れやすい上に壊れたら終わり(基本修理対応無し)ということで、自分でなんとかできないものは使うべきではなかったなということで、自作キーボードを左手デバイスに使うのはやめた。
このあと⑥が出るまでは④を再使用して間を繋ぎ…
⑥TourBox Elite Plus 2024年12月〜
こうした経緯を経てようやく今回のメイン機器に。
TourBoxは前々からシリーズが展開されていたが、今年ようやく満を持してiPad対応版が登場した。発表当初(夏)は自作キーボードに切り替えて満足していたタイミングだったので、「今更発表かよ〜遅ぇよ〜」とか言いたい放題だった。ごめんなさい。
しかしその後自作キーボードが破損したため、本当に満足する左手デバイスを求め、傷心を埋めるために思い切って購入。
(届くまでの繋ぎはCreatorPad使用)
購入時の設定では12月末に到着予定だったけれど、実際は11月下旬に到着してくれたのでそのまますぐ使用し、現在に至る。
当初はPCでの接続が不安定で、iPadは問題なしだった。そのため「これはPC側の問題だな…」と確信。実は私のPCは自作であるため、マザーボードに無線機能はついていたものの、とても弱かった。
そこで、bluetoothアンテナ↓をつけたら劇的に改善した。…TABMATEごめんね
TourBoxElitePlusは無線で2台登録できるので、勿論iPadとPCを登録。本体裏のボタンですぐ切り替え接続できるように。やったね。
また、TourBox自体は結構昔からあったのだけれど、年月を経て、今回のiPad対応にも合わせてアップデートされたであろう「TourBoxコンソールアプリ」がある。
これでデバイスの入力をどうするかユーザーが自由に設定できるのだが、これが本当に便利。特に、キーの組み合わせの幅がキーボードとは大きく異なる(ここが重要)ので、ツール割り当ての幅広さがとても広く、これが一番他のこれまで使ってきたデバイスと異なるところだと思う。
詳細は②の記事の初めの方で紹介。
テンキー除くと1年間で左手デバイス5個も買い替えててビビった…2〜3年間の話だと勝手に思ってたよ…1年って意外と長い?
次の記事(後編)ではTourBoxElitePlusの設定コンソールと、私がどんな設定で運用してるかをまとめます。