【23日目】ザ・マスター
こんばんは。あの時助けていただいた鶴です。次回もよろしくお願いいたします。
さて、ジョーカーからの流れでホアキン・フェニックス主演のザ・マスターを観ました。
ストーリー
第二次世界大戦末期、アルコール依存を断ち切れずにいる帰還兵のフレディは、密航した船で「ザ・コーズ」という新興宗教の教祖ドッドと出会う。悩める人々の心をあるメソッドで開放するドッドに心酔したフレディは、ドッドの右腕にまでのぼりつめていくが…。
こんな感じのあらすじです。50年代あたりの衣装、車、調度品がべらぼうにカッコよかった。
本作は世界大戦における精神的な病を持った男=フレディのロードムービーとしてみることもできますし、実践的な洗脳の手法を学べる映画でもあります。ロードムービーにしてはあまりに現実は酷薄だということがじんわりと伝わってくる感じが良かった。洗脳の手法としては、まず隔離、続いて人格の否定、無意味で終わりの見えない単純作業(理性の破壊)なんかがよく描かれていますね。画面を観ながら、家庭や友人との切り離し、叱責、新人にやらせる単純作業など、新入社員への「教育」と同じようなことをやっているなあと感慨深くなりました。コロナ禍では、隔離が容易になったので、より洗脳しやすいですよね。みなさま、お気をつけ遊ばせ。
本作の宗教団体は<サイエントロジー>にインスピレーションを受けたものだそうで。私はこの団体についてあまり知らないので、今回は趣旨を少し変え、この<サイエントロジー>について学んでいきましょう。
ここからは公式HPを見つつ、話を進めていきましょう。
まず、サイエントロジーとはなんぞや? という疑問を片づけていきたいと思います。
L. ロン ハバードが開発したサイエントロジーとは、人がその真の精神的本質を、また自分自身、家族、グループ、人類、すべての生命体、物質宇宙、精神宇宙、そして至高の存在または無限との関係を、完全かつ確実に理解している状態へと至る、正確な道筋を提供する宗教です。
なるほど。やはり宗教なんですね。幸福の科学や創価学会などもそうですけど、新興宗教ってなんで「学」が好きなんでしょうかね。生涯学習の一環ですかね? HPにはサイエントロジーの真理の中で特に重要なことは次のことだと述べています。真理って。
人間は不滅の精神的存在である。
人間の経験は、ひとつの生涯を遥かに超えた範囲に及んでいる。
人間の能力は、たとえ現時点では実現されていないとしても、無限である。
なるほど。上は人間の生物学的な衰えや死への救済、中は精神の永続性への憧憬、下は信仰による将来性の遅延を言っている。多くの宗教と同じ構造ですね。さて、じゃあ具体的にどうやってこれらを達成するかという点も教えてもらいましょう。
L. ロン ハバードの研究によって初めて、心の働きを向上させ、精神の潜在能力を回復させる、効果が実証された技術が生まれました。それがオーディティングです。
オーディティングの目標は、個人の存在性と能力の回復です。この目標は(1)その人の持つ精神的障害を取り除く手助けをすること、(2)個人の能力を向上させることによって達成されます。個人が自らの精神的な潜在能力をフルに発揮できるようになるためには、このふたつのことが必要になります。
オーディティングってなんぞや? さらに見ていきましょう。
オーディティングでは「プロセス」を用います。プロセスとは、オーディターが尋ねたり与えたりする、厳密に定められた一連の質問や指示のことです。この質問や指示は、その人が精神的な悩みを抱えている領域を突き止め、自分自身について何かを発見し、自身の状態を向上させるのを手助けするものです。
これは映画で言えば人格否定のところですね。トラウマを喚起し、自己の無力さと社会の残酷さを刷り込む過程として描かれていました。HPではこのように書かれています。
オーディティングに参加している人(サイエントロジーでは「プリ・クリアー」と呼ばれる)は、オーディティングの質問に対する答えを見付け、過去の出来事を記録している心の映像に含まれる有害なエネルギーを消し去り、精神的苦痛を軽減します。そのためには、反応心の最も深い奥底に注意を向け、前世を含む閉塞された過去の出来事に直面しなければなりません。
実際にあるんかい! さらにこのページを見てほしい。
いや、激ヤバ道具があるんかい!! ここまでは流石に映画で出てきませんでしたね。割と最近できたのかしら。これはどうやら嘘発見機と同じシステムで、
Eメーターが作動している時に人がメーターの電極を握ると、ごく少量の電気エネルギー(約1.5ボルト。乾電池1本分よりも少ない)がEメーターから出て、その人の身体の中を流れ、メーターに戻ります。
心に映し出される映像は、エネルギーと質量を含んでいます。人が辛い経験や感情的に動揺するような経験をすると、それについての心の映像が持つエネルギーや力は、その人に有害な影響を及ぼす可能性があります。こうした有害なエネルギーや力はチャージと呼ばれます。
Eメーターの電極を手に握っている人がある考えを思い浮かべたり、映像を見たり、過去の出来事を再体験したり、または反応心の一部に変化があったりすると、その人の心の中では実際に心的質量とエネルギーが動き、変化します。こうした心の変化は、Eメーターからの微量の電気エネルギーの流れに影響を与え、文字盤の針を動かすことになります。オーディターは、その針の反応からどこにチャージがあるかを判断し、その部分をオーディティングで取り上げるのです。
要するに動揺するような記憶に関わる質問をすると、発汗等により計器が反応。質問者はそこをゴリゴリに責め立てることができる夢の機械です。わかりやすく言えば、傷口に塩を塗り込みまくって、その傷口部分が化膿して腐り落ちれば、痛くはないよね、という方法ですね。ずいぶん生きやすくなりそう。こうしたビフォーアフターも計測できるそうで、
通常行われるテストのひとつは、オックスフォード能力分析(OCA)と呼ばれるもので、性格の特徴を10項目に分類して正確に測定するものです。(中略)オーディティングの直接的な結果として、プリ・クリアーは以前よりも落ち着き、より安定し、より精力的でかつ外交的になったと報告しています。
いいじゃん。私は少し調べて見たのですが、OCAはオックスフォード大学とは無関係のようでした。HPから無料で受けられるみたいなので、200問を受けてみました。その結果がこちら。
縦軸は00を中心にプラスが望ましい状態、マイナスが望ましくない状態を表します。薄い黒が許容範囲内の精神状態、黒が望ましい状態、とのこと。A〜C、I、Jがとんでもない数値になってますが、ご愛嬌。むしろ、人間の長所は異様に優れているか、異様に劣っている部分のことだと思っているので、私にも長所があって安心しました。欠け方は人生の賭け方なんですよ、テヘヘ。
質問の中には映画内でも用いられたものもあって、なんだかドキドキしましたね。ザ・マスターを観たならこれをやるのがおすすめです。
最期にサイエントロジーの目的を引用しておきましょう。
現代社会で生きていると、ありとあらゆる問題の組み合わせに際限なく遭遇させられるように思えます。しかし、サイエントロジーでは、そうした問題の解決方法は基本的に単純であり、どんな人でもその能力の範囲内で対処できるとしています。コミュニケーションや対人関係の困難、常につきまとう不安、自信喪失、絶望…こういった問題やその他のさまざまな心配事から自らを解放する能力は、あらゆる人に生来備わっているのです。
不安をなくしましょうや、ってことですね。無職なのに映画ばかり観て、こんな診断テストをやっている場合ではない、そのようなことを言われたような気分がします。いやあ、サイエントロジー様、ありがとう!
今作は特に印象的なセリフもなかったので、このへんで失礼。求人サイト見てきま〜〜す!