皺が未来をつくる。
朝の通勤時間。亡くなったおじいちゃんから譲り受けたスーパーカブでいつもと同じ道を進んでいく。
一速から二速へペダル式のギアチェンジを踏み替えていく。まず家の自分から社会人となる一歩を踏むのである。スムーズにいくわけがない。しかし仕事に着く前の一つ一つの習慣が、社会人の自分へと変容させるのである。
その時に感じたある一コマ。
珍しく車の交通量が多く、一つの列になってゆっくりと進んでいった。周りの車の排気ガスも下降傾向であった。ふと前の車のリアガラスをみる。リアガラスに写る自分の姿をみて「老けたなあ」とつぶやいた。
たしかに目尻の皺は増え、顎下の肉は増えた。ただ不思議と嫌いな顔じゃなかった。目尻の皺は笑い皺で、意外とよく笑っていたことを知った。顎下の肉のおかげで角張ったエラは目立たなくなった。また整えなくなった眉毛にもありのままが映し出されていた。案外悪くない。今までの顔の表情がそのまま表現されている。だから人の顔は歳を重ねるたびに、心惹かれるものがある。
このままでいこう。怒らず過ごしていこう。化粧品や整形じゃ作れないシワシワな顔をつくっていこう。
皺が時間を作ってくれるのだ。
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