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⑲「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

第9章 反骨心

親の借金

 親子の絆は何があっても切れないものです。私がまだ学生だった頃のことです。こんな出来事がありました。父親が会社を定年退職したのを機に、今までの家を売って、奈良県に新しい家を建てることになりました。退職金を頭金にし、残りは銀行から借り入れ、まだ働ける父親が毎月、返済するという計画でした。当初は計画通りにいっていましたが、ある時、父親が通勤途中に駅の階段から転げ落ちて骨折し、働けなくなってしまったのです。

 父親の仕事は月払い契約のアルバイト契約でしたので、働かないと収入がありません。家のローンも返済しなければなりません。そこで、大学生だった私は、アルバイトをしていましたが、家計を助けるため、時間を増やしました。大阪でのアルバイトが終わって、奈良まで帰るのが最終電車になることも度々ありました。その収入で何とか家のローンの返済ができるようになったのです。

 父親の怪我が治って働けるようになるまで、そんな生活が続きました。友人たちは授業が終わると遊びに行ったりデートしたりしているのを羨ましく思ったものです。私は家のローン返済のために働いているのですから。そんな友人たちを横目で見ながら、いつかはのし上がってやるという気持ちを強く持ちました。

 しかし、午後から夕方までだったアルバイト時間を夜まで延長してもらうことによって、新しい人との出会いもありました。その出会いが会社を立ち上げる時に役立ったのです。その時は、そんなふうに考えていませんでしたから、人との縁は不思議なものです。


姉夫婦の借金

 私の会社が順調だった頃、義兄が経営していた会社が倒産、自己破産をしました。当時、姉夫婦は大きな家に住んでいましたが、敷地の半分を売ることにしました。そのための工事費用を私の実家を担保にし、銀行から借り入れしてくれないかとの申し入れが親にありました。当初、もし返済できなければ親が住む家がなくなるので、私は反対しました。

 しかし、父親は姉や孫が可愛かったのでしょう。銀行から2600万円の借り入れをしました。最初は、姉夫婦は滞りなく返済をしていたのですが、徐々に返済が遅れるようになりました。すると父親から「実家の名義をおまえにするから代わって返済をしてくれないか」と私に言ってきたのです。断ったら両親の住む家が無くなるので、仕方なく承諾しました。毎月144000円の返済です。前妻には反対されましたが、断ることもできず、仕方なく返済をしていました。

 ところが私の会社が持ち逃げ詐欺に遭い、返済できなくなってしまったことで、親の家は、競売になってしまいました。その時、競売になって家を取られるのは、私が返済できなくなったからだと責められました。それは悔しかったですよ。姉夫婦の借金なのに肩代わりして返済してあげていたのですからね。

 両親のお気に入りの家でした。いつも庭で楽しそうに水撒きをしている両親が今でも目に浮かびます。私の事業が順調良くいってさえいれば、こんなことにならなかったのでしょう。それだけに持ち逃げした人物をより憎むようにもなりました。いつの日か、両親に新しい家を建ててあげたいと思ったものですが、もうこの世にはいませんので、無念に思います。

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