⑨「どん底ホームレス社長が見た闇と光」
ノンバンクからの督促に追われて
そんな心温かい銀行員のBさんがいると思えば、毎日、督促の電話をしてくるノンバンクもあります。私が保証人になっている以上仕方がないことですが、毎日の督促電話に疲れ果てた時期もありました。裁判所で債権放棄に応じなかったノンバンクは、5社ぐらいでしょうか。電話に出るのも嫌になります。
例えば、会話内容はこんな感じです。
「返済はいつになったらしていただけるでしょうか?」
「ホームレスですので、いつかは言えない状況です」
「そうしたら、いつ頃、ホームレスから脱して返済の目途はたつでしょうか?」
「そんなこと分かりません。目途がついたらこちらから電話します」
「ホームレスを証明するものはありますか?」
「ある訳ないでしょ」
「生活保護を受けられたらどうなのですか?」
「住所不定では生活保護は受けられません。それに生活保護から返済することは禁じられています。もっと勉強してから言ってください」
「どんな状況でも、借りたお金は返済する義務があるのですよ」。
「返済する気持ちはありますが、どうにもならない状況を分かって貰えないのですか?」
毎日、同じ遣り取りの繰り返しです。
すべてとは言いませんが、人の命よりも返済義務の最優先するノンバンクが多いです。私が保証人になっていたノンバンクはすべてがそうでしたから。貸す時は、「ありがとうございます」と低姿勢ですが、返済できなくなると身ぐるみを剥がすようなことをしても何とも思っていない感じでした。私は、心のどこかで「返済するものか!! 時効まで対決してやる!!」と思うようになったのです。
しばらく、ノンバンクからの電話が無くなったと思っていたら、今度は、債権回収会社からの督促電話が止まりません。債権回収会社の方がもっと酷いものです。まるで闇金か取り立て業者のような口ぶりです。脅しのように言ってくると、こちらとしても返済する気持ちがあったとしても、「よし、戦ってやる!!」と思うようになるものです。
本当は、借りたお金は返さなければいけませんが、Bさんが言ってくれたように「返済するお金があったらこれからの自分の人生のために使おう」と考え始めたのです。それで気持ちも前向きになれたように思います。
生命保険で命を狙われる
Bさんの励ましで、心にわだかまっていた一つの引っ掛かりが取れて、仕事のスタートラインに着くことができました。仕事をするにも、まずは名刺を作成しなければなりません。しかし、私はホームレスですので、住所不定です。悩んだ挙句、名刺の住所欄を空白にした名刺を作成したのです。当然、情けない気持ちはありますが、「一日も早くこの名刺に住所を入れてやる!!」との気持ちも湧いてきたのです。
名刺ができ上がってきた時は、本当に嬉しかったですね。今まで、お付き合いのあった人に、「ホームレスをやっています」とは言えませんから、知り合いに頼んで名刺をばら撒いてもらうことにしました。すぐに反応があるわけではありませんが、仕事をしている自分を認めたかったという気持ちもあったのでしょう。
1カ月ほどして、一人の零細企業のC社長を紹介してもらいました。人の良さそうなC社長でしたが、話を聞いてみると、資金繰りで困っているとのこと。何とか解決してあげたいという思いでしたが、私は他のコンサルタントと差別化するために成功報酬でお金をいただくように決めていましたので、この案件を解決しない限りお金は入ってきません。解決までに時間がかかりそうで躊躇もしました。しかし悩んだ挙句、この案件を受けることにしました。
C社長に詳しく話を聞いてみると、かなり厄介な案件でした。銀行から融資を止められた、闇金からお金を借り入れてしまい、脅されて命も狙われている・・・。こんな案件には他のコンサルタントは手を出したくないものです。
しかし、私自身、持ち逃げ犯Aから裏社会からの借入金の保証人にされていました。その裏社会の人物から生命保険を掛けられて命も狙われていましたので、この案件を聞いてもぜんぜん恐怖感はなかったです。まず私は、C社長が契約させられていた生命保険会社に電話をして、「御社は殺人の片棒を担ぐ保険会社なのか!!」と言って、解約させました。
生命保険の問題は解決しましたが、知らないところで魑魅魍魎がうごめいているものです。良からぬ者たちが次の手を打つ前に、C社長の会社に何とか銀行融資を復活させて、闇金へ一括返済することを急ぐ必要がありました。それには専門チームを組まないと解決しません。私は、元銀行員、弁護士、裏社会に詳しい人物に声を掛けてチームを立ち上げたのでした。
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