連立二元一次方程式
二元一次方程式の必要性と意味及びその解の意味
最初に方程式の定義から確認する。
方程式とは、わからない数(未知数)を含む等式のことである。ここで、未知数は具体的な数字を用いて表せないので、未知数を表すのに数字の代わりに文字を用いる。
文字を用いて作ることのできる式は様々なものがあるため、方程式も様々なものが考えられる。そこで方程式を次の二つの観点から分類する。
①未知数の個数
未知数を一つだけ含む方程式を一元方程式という未知数が二つある方程式を二元方程式という。
②未知数をかけた回数
整式だけで作られる方程式を考える。
整式を整理すると各項は数字または文字(未知数)の積で表される。
各項の因数(かける数及びかけられる数のこと)を考えたときに、文字因数の個数を次数という。
つまり、数字や文字のかけ算だけで作られた式について、文字をかけた回数を次数とする。
例えば、$${2x}$$の次数は$${1}$$であり、$${x^3}$$の次数は$${3}$$である。
多項式の次数については、多項式を整理したときの各項の次数のうち最大の次数を、多項式の次数とする。
例えば、$${3x^2-2x+1}$$の次数は$${2}$$である。なぜなら、項は順に$${3x^2,-2x,1}$$であり、次数はそれぞれ$${2,1,0}$$であるため、最大の次数は$${2}$$だからである。
方程式の次数についても同様である。方程式を整理したとき、方程式を構成する多項式(または単項式)の次数が$${1}$$である方程式を、一次方程式という。また、次数が$${2}$$である方程式を、二次方程式という。
二つの未知数が含まれる一次方程式を二元一次方程式という。
二元一次方程式を活用する場面として、次のようなものがある。
二枚入りを$${x}$$袋、一枚入りを$${y}$$袋とるとする。このとき、クッキーの個数について次の等式が成り立つ。
$$
2x+y=7
$$
ここで、$${x,y}$$は二つの未知数を表している。しかし、具体的な数字はわからないにしても、$${x,y}$$のとりうる値に関してまったく何もわからないというわけではない。$${x,y}$$は袋の数を表すから、$${x,y}$$は自然数であり、分数や負の数にならない、ということはわかっている。
自然数の範囲で$${x,y}$$にあてはまる値の組を考えると、
$$
(x,y)=(1,5),(2,3),(3,1)
$$
の三つとなる。
しかし、$${2x+y=7}$$という方程式そのものには、$${x,y}$$のとりうる値の条件は含まれていない。したがって、同じ方程式の形で$${x,y}$$が分数や負の数をとる場合を考えることもありえる。その場合、容易に確かめられることだが、解は無数に存在する。
文章題などで方程式を利用する際には、未知数のとる値の範囲に条件があることが多い。
連立方程式とその解の意味
ある状況に対して立てられる方程式が一つだけとは限らず、複数の方程式を立てられることもある。特に、共通の未知数に対して複数の方程式を立てられる場合を考える。
複数の方程式で未知数を共有することを「方程式を連立する」といい、未知数を共有した複数の方程式のことを連立方程式という。
連立方程式において、共通の未知数に同じ数をあてはめた複数の方程式が同時に成り立つとき、未知数にあてはまる数のことを連立方程式の解といい、連立方程式の解を求めることを「連立方程式を解く」という。
連立方程式を解くこと
連立方程式の未知数にあてはまる数は、適当な数をあてはめてみて探してもいいが、その方法だと決して能率がよいとはいえない。
既知の一元一次方程式の解き方にならって、能率のよい解き方を考えよう。
一元一次方程式の解き方とは、等式の性質を用いた式変形によって、解が自明な方程式に変形することであった。連立二元一次方程式もそれぞれの方程式は等式であるから、同様の解き方ができそうである。すなわち、等式の性質を用いた式変形が可能である。
ここで重要な等式の性質を紹介し、それに基づく新たな式変形を導入する。
$${a=b}$$のとき、任意の実数$${c}$$に対して、$${a+c=b+c}$$及び$${ca=cb}$$が成り立つ。
この等式の性質から、$${a=b}$$のとき、実数と文字$${a}$$に四則計算を用いて作られた式を考えると、その式と$${a}$$を$${b}$$に置き換えた式が等しくなることがわかる。よって、$${a}$$を含む等式があり、それが成り立つとき、$${a=b}$$ならば$${a}$$を$${b}$$に置き換えた等式もまた成り立つといえる。
$${a=b}$$のとき、文字$${a}$$を含む式の$${a}$$を$${b}$$に置き換えることを「$${a}$$に$${b}$$を代入する」または「$${b}$$を$${a}$$に代入する」という。
連立方程式を解くのに、代入を用いた変形が重要な役割を果たす。
代入を用いて文字をもう一方の文字で置き換えてしまえば、文字が一つだけの一元一次方程式に帰着できるからである。このように、代入などを用いて方程式から文字$${x}$$をなくすことを「文字$${x}$$を消去する」という。
具体例を見ながら解き方を紹介しよう。
$$
\begin{cases}x=3y+2\\2x-3y=7\end{cases}
$$
$${x=3y+2}$$であるから、$${x}$$に$${3y+2}$$を代入できて、
$$
\begin{aligned}2(3y+2)-3y&=7\\3y&=3\\y&=1\end{aligned}
$$
$${y=1}$$であるから、$${x=3y+2}$$に代入すると、
$$
x=3×1+2=5
$$
よって、
$$
x=5,y=1
$$
このように、代入によって解く方法を代入法という。
他には加減法という解き方もあるが割愛する。