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【社説】未利用魚・低利用魚の活用を促すには? さまざまな地域の魚食文化を知り、文化の継承と地産地消につなげる

 近年、少しずつ光が当たり始めた未利用魚・低利用魚。実は北海道でも、この問題は他人事ではありません。水産資源を有効活用するための方策を考えてみました。

 そもそも未利用魚・低利用魚とはどのようなものなのでしょうか。魚食普及センターによると、はっきりとした定義がないものの、利用があまりされない魚介類を「低利用魚」や「未利用魚」と呼ぶ傾向が強いようです。

 さらに、未利用魚・低利用魚となってしまう理由は多種多様。魚食普及センターが挙げる理由は以下の通りです。


 これらの理由の一つが地理的な要因。日本は四方が海に囲まれているため、漁業が盛んです。そのため日本近海では3700種の魚介類が捕れて市場には600種ほどが並びます。しかし一般的な消費者が認知している種類は多くて数十種類ほど。漁獲された多くの魚介類はそもそも認知されておらず、利用が進んでいないという現状があります。

 「流通の変化」も見逃せないです。我々が魚介類を買う方法は時代を経て変化。以前は街の鮮魚店や市場で一般の人が魚介類を購入する機会があったため、マイナーな魚介類の食べ方について鮮魚店の店主や市場の関係者から直接教わることができました。しかし近年はスーパーマーケットが台頭。店頭に認知度の高い魚介類のみが大量に並ぶようになってしまい、マイナーな魚介類に触れる機会がなくなってしまいました。

未利用魚・低利用魚を減らす工夫 北海道でよく捕れるブリの利活用とは?

 未利用魚や低利用魚を減らすための方策とは、どのようなものなのでしょうか。代表的な方策は①流通の発達②漁獲時の工夫③ブランディング④食文化を育む――などが挙げられます。

 特に「③ブランディング」は、道内でも取り組む動きがあります。北海道の水揚げ量は全国有数。白糠町の「極寒ブリ」、羅臼町の「世界自然遺産知床らうす産船上活 〆鰤」など、ブランド化される事例もあります。

 さらに「④食文化を育む」という視点も大切です。北海道の漁業の問題として近年、話題によく上がるのが「ブリ」。最近だと年間1万トンほど漁獲されていて、国内有数の水揚げ量を誇ります。

 しかし、道内での利用が進んでいないのが現実。以下に総務省の2021~2023年の家計調査のデータをまとめてみました。すると2人以上の世帯について、年間ブリ購入量は札幌市が557グラム、年間ブリ購入金額は1076円という結果が判明。道民はあまりブリを食べないようです。

 

 とはいえ、近年だと北海道でも寒ブリ並みに脂ののった個体が、水揚げされています。そして食味の良さから北海道以南の地域では刺身や焼き物、煮付けなど多種多様な食べ方をされており、非常に愛されています。なじみが少ない道民にもぜひ味わってほしいです。

ブリ以外の北海道の「未利用魚」「低利用魚」は? 魚食文化を学ぶことで解決につながる

 北海道にはブリ以外にも未利用魚・低利用魚問題があります。カスべ(エイ)やハッカク(トクビレ)は道内だと比較的メジャーですが、全国的には認知度が低いので「低利用魚」と呼ぶことができるかもしれません。また、北海道立総合研究機構(道総研)がウロコメガレイや大型イカナゴ、カジカ類の利用促進を目指した研究を行った事例もあります。

 未利用魚や低利用魚であっても、おいしく食べる方法はたくさんあります。道内ではカスべは煮付けやエイヒレにしたり、ハッカクは焼き物や生食、煮物などにしたりします。


ハッカク変わった見た目をしている

 さらに地域の伝統的な食文化からおいしい食べ方を学ぶこともできます。アイヌの食文化ではサケは「カムイチェプ=神の魚」と呼ばれ、生活に欠かせない魚です。捕獲されたサケは身以外の内臓も捨てることなく、オハウ(煮込み汁)やチタタプ(魚や肉を刻んだ料理)などにします。

 自分が住んでいる地域の食文化や他の地域の食文化に目を向けることで、地産地消や食文化の継承につながります。

※チタタプのプは小さい文字


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