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“これ”さえ意識すれば美術館が楽しくなる三つのコト
美術館に行っても、「なんかすげー」ことまではわかるけど、何がすごいのかを口で説明できないのは、もったいないですよね。
自分もそうでした。
今日は、第一回の記事になるので、美術鑑賞を深めるために意識すべき三つのコトをご紹介します。
① アウトプットを心がける
私が、美術館で50人にインタビューをしたときに、意外だったことは
美術館に一人で訪れている人がとても少ないことでした。
感覚的には、10人に1人くらいでした。
あとは、友達やカップルで2名で訪れているのが大半でしたが、これこそアートを楽しむためのヒントだと思いました。
なぜ2名ないし、複数の方がいいのか?
それは、受け取る相手がいるからです。すなわち、見た感想や意見をアウトプットできるから楽しいのです。そこに「正しさ」は不要です。
感想を言う前提で作品を見れば、おのずと細部まで絵画を見て、自分の感想を生み出そうとします。この姿勢が美術館で絵画を見る上で大事です。
ムンクの叫びを見て、
「人だけでなく景色まで歪んでいることによって、絶望的な感情がより一層際立っていた!」
というレベルのものでいいのです。
実際には、「ムンクの叫び」では叫んでいるのは周囲の環境すべてであり、中央の人物は叫んでおらず、叫びに耳を塞いでいる状態なのですが、そんなことはまずはどうでもいいです。
まずはアウトプットすることにより、
もう少し言えば、アウトプットする仕組みや環境を作ることにより、鑑賞のスタンスをシステマティックに変えてみましょう。
例えば、友達で行くのはもちろん、アートブログに書いてみるなど。
きっと変わると思います。
② 作者の人生を事前勉強していく
ある絵があるとします。
その絵を何もない情報で見てもおそらく、素通りすると思いますが、
実はこの絵が、とんねるずの木梨憲武さんが書いた作品ということを知ったら、受け取り方は変わりませんか?
「木梨さんらしい遊び心がある色使いだな」
とか、おぼろげに“つながり”を持ち始めますよね。
その“つながり”に正解があるかどうかは置いといて、何かしらの情報としての“コネクション”を感じれるようにするための準備は必要です。
その最初のステップが作者の勉強となります。
そこでおすすめなのが、こちらのArtpediaというサイトです。
https://www.artpedia.jp/gustav-klimt/
現代アートではなく、どちらかというと伝統的な画家をカバーしているのですが、作者の来歴などがきれいにまとまっています。
これを見ていくのと見ないで行くのでは大きな差があると思いますので、
彼女に強引に連れられて興味がない人も、ぜひご覧ください。
③ よく見ること
こちらはフェルメール作 「ディアナとニンフたち」という作品です。
こちらの作品を自分なりによく見たら、別ブラウザに移動するなりしてください。
では、ここで簡単な質問です。(先ほどの絵画は見ないでくださいね)
・女性は何人いましたか?
・それぞれの洋服は何色でしょうか?
きちんと答えられたら、素晴らしいです。
と同時に
「え!?そこまで見ても意味なくない?」
と思うかもしれません。
確かに今日の認知心理学に基づけば、人間の脳みそはうまくできていて、
無意識に、見るべきものと不要なものを区別して集中すべき対象へ集中させる機能があります。
よって、多くの人は、足を出している女性とその足を洗っている膝づいた女性に集中したと思います。一方でその横にいる犬や後ろに生えている木に集中できた人は少ないはずです。
パーティーなどで、知人と話し始めると周りの雑音が聞こえなくなるような現象と似ていますね。(※ちなみにこれを「カクテルパーティー効果」といいます。)
ではなぜ、ここまで細部まで、見ることが大事なのか?
それは、伝統的なアート作品の多くには、作品の細部に意味を持たせていることが多いためです。
例えば、この絵画で描かれている水盤と後ろにあるアザミという植物は、アトリビュートと呼ばれる、描かれた画中の人物が誰であるかを識別させるアイテムを意味しています。
そして
水盤=純潔
アザミ=キリストの受難の象徴
を意味しています。
つまり何が言いたいかというと、鑑賞中に、
「ん。この水盤って何だろう。気になるな。ググってみよ。」ってなったら、勝ちということです。
そこで、キリストが弟子の足を洗うエピソードを、その当時の女性たちに置き換えて書いた絵なんだ!
ってことを説明なしにたどり着けたらなんだか楽しくないですか?
だからこそ、細部の「違和感」や「気になる点」にアンテナが引っかかるくらい(最低3分は)見てほしいと思います。
さて今回は、美術館で作品を見る上で、意識した方がいいことを三つご紹介させていただきました。
今の時期なら、クリムト展 ウィーンと日本1900
ラファエル前派の軌跡展
など素晴らしい作品が見れます。その際に、すこしでもこの三つを意識して鑑賞してみてください。