¿Queres bailar?
¿Queres bailar? = 踊りませんか?と訳しておく。
元来は¿Quieres bailar?だが、アルゼンチン訛りは本来の単語から"i"が落ちて"キエレス"→"ケレス"となることが多い。
ケレス・バイラール?
アルゼンチンのミロンガで度々となりで聞いていた、男性が女性に話かけていた言葉だ。
アルゼンチンタンゴを踊るダンスパーティのことをミロンガと言うが、お相手を誘う時にカベセオ(Cabeseo)という動作で、お誘いをする。多くはリーダー男性から。(決して手を差し出してお誘いしてはならないと言うことの理由はここでは割愛します)
頭の部分のことをCabesaと言うので、頭の部分の動きで相手を誘うのです。
もちろん、頭をふるだけでなく表情や目配せなど頭部でできること全てでお誘いします。
しかし、このカベセオは、ミロンガ文化が発展中の日本ではまだまだ難しい。
知らない人から急に目配せされても???と思うのが普通だ。
だからこそ、カベセオ(お誘い)しやすい、されやすいように、いつものミロンガに行ったら主催者や知り合いに挨拶してまわり、初めての人には声をかけて会話をしておき、自分の存在を知らせると同時に相手の心のハードルを下げておく下準備が必要なのです。
アウェイの(普段行かない)ミロンガに行くのは、タンゴコミュニティでの超有名人でない限り、そういった下準備期間がないので、カベセオするのは難しくなるのが普通なのです。
しかし、ミロンガを含めタンゴの世界で知り合いになってある程度たつと、カベセオのマナーが面倒臭くなるのか、直接目の前で踊りに誘うリーダー男性も出てきます。しかも最悪の言葉で。
目の前のお相手に対して発したのは
『踊ってあげようか?』
明らかに言葉にマウントが含まれている。
相手の人格を尊重し、対等な立場であるという態度ならそんな言葉は出ない。
こういう言葉が出る土壌が日本のタンゴコミュニティにあるのも問題だ。
日本のタンゴダンスの世界では男性が少なく、そこそこ踊れるようになるまでにかなりの時間と努力が必要となるので、踊れる男性の絶対数が少ないのです。
だから、踊りたいフォロワー女性は"待ち"になることが多く、その状態を理解した、踊ったことのある知り合いフォロワー女性が増えてきている&そこそこ踊れるようになったリーダー男性の一部は、チヤホヤされるあまり、あるときから横柄な言葉を発すようになる。
『踊ってあげようか?』
『ここには僕にふさわしい女性はいない』
『踊って欲しければ、綺麗で上手でないと』
こんな言葉を発する失礼な男性リーダーが増えてきたと、女性たちからお話をいただくことが本当に多くなった。
『そんな失礼なリーダーを断らないから増長する』
と言う人も多いでしょう。しかし、それ以前に”相手を尊重する”という基本概念が抜け落ちている男性リーダーが1番の問題なのだと思います。
自分の気恥ずしさの価値、あるいは自尊心 > 相手を尊重する価値
そこが、そもそも間違っている。
そのうえで、そうなってしまった彼らには期待することはできない。
フォロワー女性は、そんな彼らからのCabeseoを受けない。あるいは口頭で断って欲しい。
失礼な男性リーダーは、どんどん断ってください。そうすることであなたのミロンガ時間の環境がよくなると思います。
最終的にミロンガというのは、踊り場ではあるのですが、タンゴの人たちと会話や音楽、その雰囲気を楽しむ場所となるべきなのです。そんな日本のタンゴ(ミロンガ)コミュニティになってゆくことを願っています。
またそのためには、タンゴダンス教師は
これから(今も)タンゴを学んでゆく人に、相手に対する敬意の示し方を着々と教えてゆくことが、大変重要な責務になってきている時代に突入していると自覚すべきなのです。
最終的にはそのコミュニティがどんなタンゴダンスの世界で居たいかと言う考え方にもつながるのです。
追記:
ケレス・バイラール?というのは「踊りませんか?」と訳しましたが、直訳だと「あなたは踊りたいですか?」という意味です。
これはちょっとずるい聞き方で、「僕と」の部分が省略されており、二つの効果をねらっていると思っています。
①「僕があなたと踊りたいです」を隠しており、相手を尊重しているふりができる。(そもそも聞いている時点でそのリーダーは踊りたいに決まっている:笑)
②質問は”踊りたいかどうか”を聞いているだけで、"僕と"とは言っていないことで、彼女に踊りたくないといわれても自分の自尊心が保たれる。("君と"踊りたくないと彼女に言わせないことで、選り好みしない女性であると周りに示せる)
何年経ってもリーダー男性のガラスのハートは常に壊れないように防御が必要なのです。