言語と踊り
いわゆるタンゴは、リオプラテンセ(ラプラタ川流域の)文化のタンゴとして、ユネスコの無形文化遺産として2009年に登録されている。
(ラブラタ川はアルゼンチンとウルグアイの間を流れている)
私が初めてアルゼンチンを訪問して、現地のタンゴの踊りを目の当たりにしたときには、これは"血"がまったく異なると感じたものでした。
自分が学んだタンゴダンスとはあまりにも根源的に異なっていたので、それこそ輸血でもしなければ身につかないと感じたものです。
当時はまだインターネットも普及しておらず、Youtubeもない時代。彼らの文化としてのタンゴという枠組みでの理解すらできていなかったのが理由でした。
ネットが普及し、動画等でタンゴダンスが共有されるようになった今、タンゴとはどういうことなのか?と考えられるようになってきました。
2000年前後より、多くの外国人がBsAsでタンゴダンスを学ぶようになり、昔からタンゴを踊っているタンゲーロや、ミロンゲーロ(ミロンガの踊り名人)などが発言していた言葉として、”Castellanoがわからない人にタンゴは踊れない”。(Castellano=アルゼンチンのスペイン語)
ある部分そうかもと思いつつ、その言葉を聞いた当時は、踊りは映像でもわかるし、音楽は耳で聴くことができるから、それが全てではないのでは?と考えていました。
ここ数年、世界タンゴダンス選手権のEscenario(ステージ)部門では、踊りの導入などに、セリフを用いるようになってきた。
音楽なしでセリフだけで踊る。
これは、スペイン語(特にアルゼンチン人の言葉)に、独特の抑揚や間合いがあり、それが音楽のように彼らには解釈して踊ることができるのではないかと思える。
今年のタンゴダンス世界選手権で、踊りの導入部分でスペイン語の言葉の抑揚に合わせておどるカップル。
つまり、ここからわかるのは、
タンゴ音楽は、彼らの言葉(気持ち)の発出として現れたものであること。つまりは、先述のミロンゲーロのようにCastellanoの理解がタンゴを踊るためには必須なのではないかと思うようになった。
その昔、私が"血"だと思っていたのは、"言葉"という"文化"の理解がタンゴダンスの理解につながるのではないかと思う。
だからこそ、タンゴを彼らのように踊りたいとすれば、現地で話すようなCastellano(アルゼンチンスペイン語)の習得が実は大事なのではないかと思う。
これからアルゼンチンにダンスを学びに行きたいと思うなら、スペイン語の準備は是非とも行って行って欲しい。学ぼうとする教師の伝えたい詳細やニュアンスを理解するためにも、スペイン語が理解できたほうが絶対に良いのは明白なのです。
語学が苦手だとしても、それでも踊りを良くするためには必須だと思って是非頑張って欲しいと思う。