桜が散るのを待ちわびる
私は毎年、桜が散るのを楽しみにしている。
いつの間にか、満開の桜よりも散っている姿の桜の方が好きだった。
満開の桜は愛らしいが、散ってゆく桜は美しい。
満開の桜はそっぽを向いているが、散ってゆく桜はこちらを向いている。
桜が綻んだのを見て、すぐにその終わりに期待をしてしまう。
あたたかくて沢山の花が咲き、良い香りで溢れる春。
春が優しいのは、冬を弔っているからだと思う。
花が咲く前に訪れた冬の死への、餞のような愛。
紅色に染まる花の奥、淡いピンクの絨毯、頬を撫でるぬるい風。
死の間際、その鮮明な色や香り。
落ちてくる桜吹雪の中、息が止まるほどの微睡みに酔う。
私はその瞬間に人生を終わりいと思うくらい、桜が散る姿を見るのが好き。
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