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いざ手術

不妊治療センター初診から数ヶ月後、夫が入院した。目的はもちろん精索静脈瘤の手術。

朝、手術室の前で夫の上着を預かり、入室する夫を見送った。ここから全身麻酔で手術をするので、導入したり起こしたりも含めたら終わるのは昼ごろになる。心配はしていたが、専門外でよくわからないのにそわそわしても仕方ないので、ひとまず気持ちを切り替えて午前の業務をこなしていた。

昼、売店で買ってきた焼うどんを食べようとしたところで院内PHSが鳴った。手術が終わりこれから退室するというので、手術室に向かう。白衣姿で家族用待合に座るのは気が引けたので、職員用控室から前室の様子をちらちら見ていたら、夫がベッドに寝かされて出てきた。寝ぼけ眼の夫に声をかけ、術者の先生と麻酔科の先生にお礼を伝え、そのまま病室まで付き添った。看護学生さんがわたしを見て戸惑っていたのがちょっと申し訳なかった。

全麻後で絶飲食の夫の前で食事するのはかわいそうかなと思ったが、夫がいいというので、すっかり冷めた焼うどんを病室で食べた。ちなみに夫は隣で痛み止めの座薬を入れてもらっていた。

その後も仕事の合間に様子を見に行き、術後回診にも立ち会った。恥骨部に数センチの手術創。陰嚢を切るのだとばかり思っていたが違ったようだ。本来なら創部の確認のため1週間後に一度受診するらしいが、自分たちで見れば大丈夫だろうとのことで、次の受診は1ヶ月後でいいということになった。

当時勤めていたこの病院は、自分が働く場所としては好きではなかったが、この時ばかりは「この病院でよかった」と本気で思った。年休を使わずに夫に付き添えるし、万一の時はすぐに駆けつけられる。あと院内に夫がいるとなんとなく安心する。

夫は予定通り手術翌日に退院した。ひとつめの大イベントが無事に終わった。

これを書いている2020年11月22日、当本丸では髭切が修行から帰ってきた。なんだか王子様みたいで眩しくて、「主の刀」として帰ってきてくれたのも嬉しかった。

こうして治療に結びついたのも、兄者があの日嗜めてくれたおかげ。いつもありがとう。鶴岡八幡宮にお参りしないとね




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ぴのこ
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