5. 縁の切れる音
「裕太は意図的に無視している。」
そう気づいた次の瞬間、裕太のSNSがオフラインに変わった。
急いでTwitterを見ると、いつもなら1日に何回も呟いていたのに、北に行った日から一度も更新されていなかった。
嫌な予感に青ざめ、心臓がバクバクと鳴った。立ちくらみを起こし、今にも倒れそうになったが、なんとか壁につかまりながら外に出て、深呼吸をした。そして私はレンタカー屋に向かった。もしかしたら、何か事故や事件に巻き込まれたのかもしれない。
北に行こう。
急いで借りた車のハンドルを握るが、止まらない冷や汗とめまいで手が震えた。どうにかして気を落ち着かせようと、車を止めて「フー、フーッ」と、声に出して呼吸を整える。
その瞬間、胸のところで大きく「ブチッ」という音が聞こえた。バカげているかも知れないけど、確かに鳴ったのだ。外からは聞こえない、私だけに聞こえた音だ。
そして悟った。
ああ、これは、私と裕太、裕太の家族との縁が切れた音だ。これは、私がずっと望んでいたことだ、と。
だけどもちろん、可奈との縁が切れる事は全く望んでいなかった。その音が可奈とのものでは無いことを確認し、そんなことにはさせない!と祈るように車を北へ走らせた。
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