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裕太が取り下げを望んだ理由にはこんなものがあった。

「毎月届く書面がかなりのストレス。それに、調停から審判に移行するときに追加で弁護士費用がかかるから、その前に取り下げて欲しい。そのお金は可奈のために使ったほうがよっぽどいい。」

取り下げ~和解の際に公正証書を起こすのを嫌がったのも同じ理由からだった。弁護士に依頼して書面を起こすと、また費用がかかる。

「信頼関係があればそんなものはいらない。」と裕太は言ったけど、ここまで争っておいて信頼関係もなにもないよなぁ、と私は思った。裕太は、書面を残す気は全くないのだ。
だけど、書面を起こさない事は面会に規定が作られないという事なので、考えようによっては私にとってもプラスなのかもしれない。

それに、弁護士費用より可奈の今後の教育などにお金を残したほうがいいという意見には同感だ。

裁判で離婚を決定させたら、養育費を支払う限り、つまり可奈が成人するまで、そのうちの何割かを弁護士に払い続けることになるのだ。

どちらからともなく、夫婦カウンセリングに通う話が進んだ。
これは得策だったと思う。何かワンクッション入れないと係争から普通に会話できる関係に戻るのは難しい。

夫婦の争いに子どもを巻き込むのは絶対に間違っているし、裕太のした事は一生許せないけど、それは言ってもしょうがない。過ぎてしまったことだ。

もちろん、怒りはあるけれど、子どもを人質に取られている私が相手を責めても、関係が拗れるだけだ。特に裕太はプライドが高いので、怒らせたら終わりだ。

最優先すべきなのは1日も早く可奈に会うことで、余計なプライドは全て捨てたと言っても過言ではない。

裕太は、カウンセリングが終わって医師の許可が出たら可奈に会わせると言った。そのために審判を取り下げろと。私は彼を信じるしかなかった。

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